英語コンプレックスの正体|劣等感の原因は能力ではなく「話す練習の少なさ」だった
英語ができる同僚ばかりが発言する会議で、何も言えずに終わる。「英語、やってるの?」と聞かれると、うしろめたさを感じる。海外旅行の話題になると、自信を持って話せない。英語の話が出るたびにつらくなるなら、単なる苦手意識ではなく、英語にコンプレックスを抱えている状態です。
検索すると、「小さな成功体験を積みましょう」「完璧を求めないで」といった答えが出てきます。どちらも間違いではありません。しかし、長い時間をかけて強くなった劣等感は、考え方を変えるだけでは簡単には軽くなりません。分かっていても変えられないから、悩んでいるのではないでしょうか。
デジタルマーケティングを7年間担当していたIT業界の方は、「入社当時はほとんどの社員が英語を喋れていて、全社会議も英語でした」と振り返ります。周囲の多くが英語を話す一方で、自身は「英語が全然わからず、苦しかったです」と感じ、英語にコンプレックスを抱えていました。
まわりで英語が使われているほど、話せない自分を意識する機会が増え、コンプレックスも強くなっていきます。
この記事に登場するのは、いずれも英語コーチングスクール・ミライズの受講者です。公式サイトには200件以上の体験談が本人の言葉のまま公開されており、その中には、英語へのコンプレックスを自分の言葉で語り、そこから抜け出した人の記録が残っています。この記事では、コンプレックスが強くなる原因を3つに分け、実際に変わった人が何をしたのかを本人の言葉から整理します。読み終える頃には、英語への劣等感は変えられない性格や能力ではなく、原因に合った対策を取れる状態だと分かるはずです。
英語コンプレックスを持つのは、あなただけではない
英語にコンプレックスがあると、「こんなことで悩んでいるのは自分だけではないか」と感じることがあります。しかし、調査を見ると、英語学習で挫折した人は少なくありません。ビジネス英会話のビズメイツ社が2025年に公開した第28回「英語学習の挫折実態2025」調査では、英語学習で挫折を経験した人は84.4%にのぼりました。
10人中8人以上が、英語学習で一度は挫折しています。そこで「自分はダメだった」と感じるのは、あなただけではありません。英語に苦手意識を持つきっかけは、多くの社会人が経験しています。
数字だけでなく、実際の声もあります。美容関係の仕事をしていた中村さんは、思い切って飛び込んだ留学先ですら、「泣きながら、担当講師に『もう分からない』って。とにかく逃げ出したかったですね」という経験しています。挫折は、特別に弱い人だけに起きることではありません。
商社で働いたのち起業準備に入った宗野さんも、同じような経験がありました。これから英語を学ぶ人へのメッセージで、こう言い切っています。「英語へのコンプレックスは多くの日本人が持っていると思います」。宗野さん自身、「今までは英語は必要なものと頭では分かっていても、どのように英語学習すれば良いのかが全く分からず、英語から逃げていました」と語ります。
冒頭で紹介したIT業界の方は、その後「英語に対する抵抗感がなくなりました」と話しています。英語へのコンプレックスがあっても、その状態がずっと続くとは限りません。
では、なぜコンプレックスが強くなるのでしょうか。受講者の体験談から見えてきた3つの原因を確認していきます。
英語コンプレックスが強くなる3つの原因
英語へのコンプレックスは、生まれつきの性格や能力だけで決まるものではありません。受講者の体験談を整理すると、「周囲との比較」「正しさへのこだわり」「英語を避けてきた時間」という3つの原因が見えてきます。それぞれを実際の声とともに見ていきましょう。
原因1. 周囲と比べて、自信を失っている
1つ目の原因は、周りと比べて、自信を失っていることです。これは、英語に対する劣等感は、周囲の人や、過去に思い描いていた自分と比べたときに強くなります。また、比較する相手は、英語を話せる同僚だけではありません。学歴や職歴から考える「本来なら話せるはずの自分」と、現在の自分を比べて苦しくなることもあります。
海外との接点がある会社で働いていた陽子さんも、同僚との比較に悩んでいました。「同僚はみんな英語を喋れる中、私は高校以来の英語に触れる機会という状態だったので、同僚の英語レベルについていけず、その中で悔しいなという感情が芽生えました」。比較する相手が身近にいるため、自分との差を意識する機会が日常的にありました。
外資系の化学メーカーで働いていた上原さんは、社内の会話の半分が英語という環境で、「英語を使う機会が多いにも関わらず、自分の英語に自信がなかったんです」と振り返ります。環境に恵まれているはずなのに話せない——この「はずなのに」が、劣等感を強くします。
学歴との比較で苦しむ人もいます。英米文学科を卒業して営業職に就いた宮地さんは、「英米文学科の卒業生にもかかわらず英語が十分に話せないということがコンプレックスになっていたので、退職のタイミングでもう一度しっかり英語を学びたいなと思い、今回フィリピン留学を決意しました」と語っています。英語に近い経歴を持つ人ほど、「この経歴で話せないなんて」という比較が自分に向かうのです。
原因2. 間違いを気にして、英語を話せない
2つ目の原因は、正しい英語を話そうとするあまり、発言できなくなることです。
会社の全体会議が英語になり、「内容が分からないまま会議に出席したくない」という思いから学習を始めた加茂さんは、長い学習期間を終えたあと、自分を縛っていたものをこう言語化しています。「私は英語を話すことに対して『ブレーキ』がかかってしまっていたと思っています」。そしてそのブレーキの中身を、「『英語を伝える』ということ以上に『英語の正しさへのこだわり』が抜けなかったと思います」と続けます。
多くの人は、英語を学校のテスト科目として学び始めます。そのため、文法や発音を間違えてはいけないという意識が、会話の場でも働くことがあります。正しい文が完成するまで話せず、発言するタイミングを逃す。話す機会が減るため、会話にも慣れません。その結果、さらに自信を失うという悪循環が生まれます。
原因3. 英語が必要な場面を避けてきた
3つ目の原因は、英語が必要な場面を避けてきた時間です。
冒頭のIT業界の方は、手を挙げれば海外と関わる部署に移れる制度がありました。それでも、「私はあまり英語に自信がなかったこともあり、特に異動を希望することもなく、英語を使わない状態でずっと過ごしていました」。
動画制作の仕事をしている兒玉さんは、仕事に必要な海外の情報について「よっぽど慣れているサイトじゃないと閉じて逃げてしまっていたので、今後は立ち向かいたいです」と語っています。
英語を避ければ、その場で困ることはありません。しかし、避けるたびに「今回も英語を使えなかった」という経験が増えます。英語を使わない期間が長くなると、「いまさら始めても遅いのではないか」と感じやすくなり、さらに英語を避けるようになります。
いずれも、英語力そのものとは別の問題
ここで、英語を話す練習の経験に関する調査を見てみましょう。イーオンが2025年7月に実施した「英会話」に関する意識調査(全国16〜69歳の男女1,000名対象)では、「そもそも英語で話す練習をしてこなかった」と答えた人が61.6%、「最後に英語を話したのは挨拶レベル」という自己評価が60.8%でした。
調査では、6割を超える人が英語を話す練習をしてこなかったと回答しています。「英語が話せない」と感じている人の中には、能力が低いのではなく、話す練習をする機会が少なかった人もいると考えられます。
周囲との比較、正しさへのこだわり、英語を避けてきた時間は、英語の能力そのものとは別の問題です。原因が分かれば、それに合わせて取り組み方を変えられます。
セルフ診断——英語コンプレックスの原因を確認する
対策を考える前に、自分に当てはまる項目を確認してみましょう。Yesが最も多かった分類が、優先して対処したい原因です。
| No. | 原因 | 当てはまる項目 |
|---|---|---|
| Q1 | 比較 | 英語ができる同僚・友人の前だと、自分から英語の話題に入らない |
| Q2 | 比較 | 学歴・職種・留学経験のわりに話せない自分を、人に知られたくない |
| Q3 | 正しさ | 文法や発音が正しいか確信が持てないと、口に出せない |
| Q4 | 正しさ | 言いたいことを頭の中で英作文して、完成する前に会話が終わる |
| Q5 | 逃げ | 英語が必要になりそうな仕事や場面を、理由をつけて避けたことがある |
| Q6 | 逃げ | 「いつかやろう」と思い始めてから、3年以上経っている |
Yesの数は、英語力の高さを判定するものではありません。自分がどのような場面で英語を避けやすいのか、何が話す妨げになっているのかを知るための目安です。
これらの状態は、何もしなければそのまま続きやすいという共通点があります。
逃げるほど強くなるループ——抜け出した人は「腹をくくって」いた
この章では、コンプレックスが自分で自分を強化していくループの仕組みと、そこから抜け出した人が何をきっかけに動いたのかを、7年分の記録で見ていきます。英語が必要な場面を避けると、その場では安心できます。しかし、英語を使わなかった経験が増えるため、自信はつきません。自信がないまま次の場面を迎えると、また避けたくなります。この繰り返しは、気持ちだけで止めるのが難しいものです。
実録——7年逃げ続けた人が、動いた日
IT業界の方の7年間は、このループの記録そのものです。英語部署への異動を希望せず、英語を使わない状態で過ごし続けた。その間も全社会議は英語で、「私は英語が全然わからず、苦しかったです」という時間が流れ続けた。IT業界は最新の情報が英語で先に出るため、「取り残される危機感を感じて英語学習しようと思いました」という焦りも育っていた——それでも、ループは7年回り続けました。
止まったのは、退職という区切りが来たときです。
もうこれ以上英語から逃げていられないと思い、腹をくくったという感じです。
この言葉で見てほしいのは、「腹をくくった」の前段です。IT業界の方は、意志が強くなったから動いたのではありません。退職でまとまった時間ができ、逃げる口実がなくなった——逃げ場のない区切りに、学習を接続したのです。
抜け出した人の共通点は、意志ではなく「区切り」
他の記録にも、同じような構造が見つかります。加茂さんは「内容が分からないまま会議に出席したくない」という思いを起点に、復職前の期間をまるごと学習に充てました。宮地さんも「退職のタイミングでもう一度しっかり英語を学びたいなと思い」と、区切りと学習をセットにしています。証券会社・メーカー・航空会社とキャリアを重ねてきた林さんは、休暇を使った短期留学についてこう振り返ります。「日本で英語を勉強しようと思っても怠けてしまうと思うので、英語学習から逃げられない環境で自分を追い込めた点で、ものすごく充実した1週間でした」。
全員に共通するのは、モチベーションの高さではありません。逃げ道が塞がる区切りを、自分に用意したことです。ループは意志では止まらないが、環境では止まる——これが、抜け出した人たちの記録から読み取れる結論です。
誤解のないように書いておくと、これは「会社を辞めて留学しろ」という話ではありません。区切りは、もっと小さなサイズで作れます。次の章で、明日からできる形にします。
抜け出す3つのやり方——区切り・正しさを捨てる・比較の相手を変える
ここまで紹介した3つの原因に合わせて、取り組み方も3つに分けられます。いずれも、受講者の体験談で実際に語られていた行動をもとにしています。
やり方1. 区切りを作る|意志ではなく、逃げられない環境をつくる
実録: IT業界の方は退職を区切りに「腹をくくり」、林さんは休暇の短期留学で「逃げられない環境で自分を追い込めた」と語りました。
なぜ効くか: 学習を始める時期が決まっていなければ、先延ばしにしやすくなります。「今日は疲れたから」が毎日成立してしまうからです。区切りは、その選択肢自体を消します。意志力は当日の体調で変動しますが、先に約束された環境は変動しません。
あなたがやるなら: 退職や留学は要りません。
- 開始日を人に宣言する。 家族でも同僚でもかまいません。「来週月曜から英語をやる」と口に出した瞬間、やらないことにコストが生まれます
- お金を先に払う。 無料体験を転々とするのではなく、期間で申し込む。払った分だけ、退路が塞がります
- 英語を使う予定を先にカレンダーに入れる。 海外出張への立候補、外国人の同僚とのランチ。予定が先にあれば、学習は「いつかやる」から「それまでにやる」に変わります
やり方2. 正しさを捨てる|会話を「テスト」ではなく「伝える場」と考える
実録: ブレーキの正体を「正しさへのこだわり」と言い当てた加茂さんは、長い学習の末にこう語っています。「『べき論』ではなく、純粋に『会話を楽しむ』というフェーズに入ったのは最後の1ヶ月でしょうか」。そして、これから学ぶ人へのメッセージは「1人でも多くの日本人に『受験勉強の英語』ではなく、『英語の会話の楽しさ』を実感してもらいたいですね」でした。
なぜ効くか: 正しさへのこだわりは、会話を「正解を出す場」と考えることで強くなります。テストなら間違いは失点ですが、伝達なら「伝わったかどうか」だけが結果です。設定を変えれば、同じ間違いが失点ではなくなり、口を閉じる理由が消えます。加茂さんに半年以上かかったこの転換は、最初から「伝達」のつもりで始めれば、もっと早く起こせます。
あなたがやるなら:
- 「完成した文」ではなく「単語3つ」で話し始めることを、自分に許可する。 「予定・変更・明日」にあたる単語を3つ並べるだけで十分伝わる場面は、仕事の英語には山ほどあります
- 間違えた回数ではなく、伝わった回数を数える。 帰り道に思い出すものを「今日のミス」から「今日通じたこと」に変えるだけで、会話の設定が変わります
- 添削より先に、会話の場を確保する。 正しさは、通じる経験のあとから整えれば間に合います
やり方3. 比較の相手を変える|同僚ではなく、昨日の自分と比べる
実録: 林さんの体験談のタイトルは、本人の言葉でこうつけられています——「昨日の自分より今日の自分。英語学習を自らのライフワークに!!」。IT業界の方も、変わったことを聞かれて答えたのは「抵抗感」と「聞き取ろうとする意識」の変化でした(この言葉は次の章で全文を載せます)。2人とも、誰かに追いついたかではなく、以前の自分から何が変わったかで語っています。
なぜ効くか: 英語ができる人との比較だけを続けても、相手も学習や経験を重ねるため、差ばかりが気になります。話せる同僚も上達し続けるからです。過去の自分は動きません。だから比較の相手を過去の自分に変えると、練習した分だけ「前より進んだ」という結果が必ず出ます。同僚と比べて落ち込む毎日が、自分の変化を確かめる毎日に変わるのです。
あなたがやるなら:
- 現在地を一度測って、記録する。 自分の英語がどこまで相手に通じるか(発音を含む)、英語で何秒話し続けられるか、使えた表現はいくつか。測っていないものは、あとで比べられません
- 1ヶ月ごとに、同じ物差しで測り直す。 前より進んだことが見えた瞬間、比較の相手は自然と「先月の自分」に切り替わります
- 人と比べそうになったら、あの61.6%を思い出す。 ほとんどの人は、話す練習をしてこないまま大人になっています。あなたが練習を始めた時点で、もう同じ土俵にはいません
この3つのやり方で、実際にどこまで変わるのか。最後に、記録を並べます。
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IT業界の方。全社会議が英語の会社で「私は英語が全然わからず、苦しかったです」と7年を過ごした人の、学習後の言葉です。「まず、英語に対する抵抗感がなくなりました。聞き取れるかどうかは別として、英語を聞き取ろうとする意識が働くようになりました」「あとは、もっともっと英語を勉強し続けようというモチベーションが湧きました」。劣等感の対象だった英語が、続けたいものに変わっています。
加茂さん。「内容が分からないまま会議に出席したくない」から始めた人の、学習後の言葉です。「1番の変化としては、英語を使った会話自体を楽しめるようになったことですね」「自分の思いも英語で伝えられるようになり、英語での会話をもっとしたいと思うようになりました」。ブレーキの正体だった「正しさ」を手放したところから、会話が楽しみに変わりました。
宮地さん。かつては「深い話になると正確に思いを伝えられず、悔しい思いをしていました」という状態から、学習後は英語力が母語に近い韓国語と並ぶまでになり、英語に触れられる仕事への転身を考えるところまで来ています。コンプレックスの源だった「英語の学歴」が、また使いたい資産に戻りました。
小林さんは2回の留学を重ね、「英語に対する苦手意識がなくなり、間違いを恐れずに話す姿勢を身につけられたことがMeRISE留学での何よりの成果です」と語っています。苦手意識の解消そのものを、成果の筆頭に挙げています。
自信のなさは、行動の半径も縮めます。大学勤務の方は「自分の英語力に自信がなかったことです。セブ島留学前はアメリカやイギリスに行くことに躊躇がありました」と語っています。裏を返せば、コンプレックスが軽くなった分だけ、選べる行き先も仕事も増えるということです。
4人の記録に共通することが、ひとつあります。誰も、コンプレックスが消えるのを待ちませんでした。危機感、歯がゆさ、悔しさ——劣等感が生む感情を、そのまま始める理由にしています。なお、コンプレックスの入口でよく起きる「人前で英語を話すのが恥ずかしい」という感情には、別の構造があります。
最後に、セルフ診断の結果に合わせて、最初に取り組むことを整理します。
まとめ——コンプレックスは、消えるのを待たなくていい
10人中8人以上が英語で一度は折れています。あなたのコンプレックスは、欠陥の証明ではなく、多くの社会人が通る通過点です。体験談からは、周囲との比較、正しさへのこだわり、英語を避けてきた時間という3つの原因が見えてきました。いずれも、英語力そのものとは別の問題です。
診断の結果に合わせて、最初の一歩はこう選んでください。
- 比較タイプ(Q1・Q2にYes): 現在地を一度測って記録する。比較の相手を、同僚から「昨日の自分」に変えるところから
- 正しさタイプ(Q3・Q4にYes): 「単語3つで話し始めていい」と自分に許可を出す。会話はテストではなく伝達です
- 逃げタイプ(Q5・Q6にYes): 開始日を今日、人に宣言する。ループは意志では止まらず、区切りで止まります
宗野さんの言葉に、もう一度戻ります。「英語へのコンプレックスは多くの日本人が持っていると思います」。持っていること自体は、問題ではありません。分かれ道はそのあとです。逃げたままもっと重くしていくか、始める理由にするか——変わった人たちの記録は、全員が後者を選んだ記録でした。
周囲との比較、正しさへのこだわり、英語を避けてきた時間に対処する方法のひとつが、発音を整えることです。自分の英語が相手に通じると分かれば、話すことへの不安を減らしやすくなります。周囲と比べるだけでなく、以前より伝わるようになったという自分の変化も確認できます。
まずは、自分の発音が相手にどう聞こえるのか、いまの英語がどこまで通じるのかを確認することから始めてみましょう。
