英語が覚えられないのではなく使えない?必要な練習の見分け方
単語帳を3周し、アプリの正答率も上がった。それなのに、会議では言いたい単語が出てこない。会議が終わってから「あの単語を使えばよかった」と思い出す——そんな経験はないでしょうか。
「英語 覚えられない」と検索すると、記憶術や反復回数を増やす方法が並びます。しかし、単語を見ても意味が分からない状態と、意味は分かるのに会話で使えない状態では、必要な練習が異なります。
イギリス駐在を控えていたN.Fさんは、知識のほうは足りていました。
英単語や文法はそこそこ知っているし、英語も全く話せない訳ではないのですが、発音は英語でコミュニケーションを取る上で全てに通じる要素です。
一方、事務職の井高さんは、量そのものが足りていない状態でした。
英語でいろいろ伝えたい気持ちはあるんですけど、知っている英単語量も多くないので英語で伝えたい事が伝えられずにもどかしいです。
同じ「覚えられない」という悩みでも、お二人が困っていた内容は異なります。N.Fさんは知識を実際の発話につなげること、井高さんは使える単語を増やすことが課題でした。
お二人はいずれもミライズの受講者です。公式サイトでは200件以上の体験談を公開しています。この記事では、「見ても分からない」「聞くと分からない」「会話で出てこない」の3段階に分け、自分に必要な学習を判断できるようにします。
覚えていない人より、出てこない人のほうが多い
まず、詰まっている場所の内訳を見ます。
株式会社アイキューブが、社会人になってから英語学習の経験がある20代〜50代の男女332名に行った「社会人の英語学習に関する実態調査」(2025年8月)に、その内訳があります。すでに勉強している人たちを対象にした調査で、英語力の課題を聞いた設問の回答は次の順でした。
| 英語力の課題 | 割合 |
|---|---|
| 瞬時に言葉が出てこない | 60.2% |
| 知っている語彙やフレーズが少ない | 44.3% |
| 発音や文法に自信がない | 44.3% |
最も多かったのは「瞬時に言葉が出てこない」で、「知っている語彙やフレーズが少ない」を上回りました。単語を知らないことだけでなく、知っている言葉を必要な場面で使えないことにも、多くの人が困っています。
シャベリッシュのメディアは、この状態を「カタカナ英語」と呼んで、こう定義しています。
「英単語のスペルと意味は合っているけれど、発音が日本語のカタカナのまま」
スペルと意味を覚えていても、自分が記憶している読み方と実際の発音が異なれば、聞き取れなかったり、相手に伝わりにくかったりします。これは、単語を知らない状態とは別の問題です。
同じことは若い世代でも起きています。僕と私と株式会社が、関東在住で母国語が英語以外の20〜27歳1,254名に行った「Z世代に聞いた!英語への苦手意識に関する調査」(2024年9月)では、53.2%がスピーキングに苦手意識を持っていました。その人たちに不安の中身を聞くと、1位が「単語が出てこない」で61.2%です。
対象者の異なる2つの調査で、いずれも「単語が出てこない」という悩みが上位に挙がっています。
Z世代を対象とした同じ調査では、学習方法の1位が英語学習アプリで48.2%でした。アプリでは意味や綴りを確認でき、正答率によって学習の進み具合も把握できます。
ただし、正答率が上がっても会話で単語が出てこないなら、同じ問題を解き続けるだけでは悩みが解消しない可能性があります。
単語帳やアプリを追加する前に、どの段階で止まっているかを確かめてみましょう。
覚えているのに使えないなら、音との結びつきを確かめる
単語を見れば意味が分かるのに、聞き取れない。あるいは、会話になると口から出てこない。この場合は、覚える量ではなく、単語と音の結びつきを確かめます。
原因の一つは、単語を文字と意味だけで覚えていることです。
会話では、相手の発音を聞き取り、自分も声に出します。文字と意味だけで覚えた単語は、目で見れば分かっても、実際の音と結びついていないことがあります。
この状態では、知っている単語を相手が使っても気づけません。自分で話すときも、発音を迷うことで、言葉がすぐに出てこない場合があります。
単語帳のテストで正解するには、文字を見て意味を思い出せれば足ります。一方、会話で使うには、音を聞いて理解し、自分の口で発音する練習も必要です。
冒頭のN.Fさんも、単語や文法の知識がないわけではありませんでした。そのうえで、英語でコミュニケーションを取るために発音を課題として挙げています。
単語を見れば意味が分かる人は、最初から覚え直すのではなく、音を聞き、自分でも発音する工程を加えます。
例えば同じメディアは、「ボランティア」は本来 /ˌvalənˈtir/ で「ヴァーランティーア」、「アルコール」は /ˈalkəˌho:l/ で「アルカホール」に近い音になると挙げています。
どちらも日本語でよく使われる言葉ですが、英語の発音はカタカナの読み方と異なります。カタカナの音だけを記憶していると、英語で聞いたときに同じ単語だと気づけないことがあります。
シャベリッシュでは、受講初日に発音診断テストを行います。71項目のチェックリストを使い、再現できていない音を確認する仕組みです。
課題を単語単位ではなく音単位で把握できれば、どの音を優先して練習するかを決められます。同じ音を含む複数の単語で練習できるため、単語ごとに読み方を覚えるより、共通する課題を捉えやすくなります。
日本語と英語では、使用する母音や子音の数が異なります。そのため、日本語のカタカナだけでは表し分けにくい英語の音があります。
例えば「hat(帽子)」と「hut(小屋)」は、カタカナではどちらも「ハット」と表されます。しかし、英語では /hæt/ と /hʌt/ で母音が異なります。意味だけを覚え直すのではなく、2つの音を聞き分け、発音し分ける練習が必要です。
音を足したら定着した人たち
文字中心の学習へ音読や発声を加えた受講者は、どのような変化を感じたのでしょうか。
会社を経営するH.Tさんは、それまで書くだけだった学習に、声を足しています。
今まで日記に書くだけで音読やシャドーイングなど、声に出して練習することはなかったのですがこの勉強法を始めてから更に単語や言い回しも頭に残りやすくなったと感じています。
書くだけだった学習に音読やシャドーイングを加えたことで、単語や言い回しが頭に残りやすくなったと感じています。
大学卒業から15年、英語に触れていなかった寺倉さんは、音の解像度が上がったことを具体例で説明しています。
簡単な例を出すと「banana」の発音って、日本だと「バナナ」、なんとなく英語だと「バナーナ」、でもネイティブだと2つ目のaは「æ」になるな、みたいなことが音を聞けばわかるようになるんですね。
bananaは、意味を知らなかった単語ではありません。カタカナで覚えていた読み方と実際の発音の違いに、音を聞いて気づけるようになった例です。
海外クルーとやり取りをする佐野さんは、知識としては持っていた側でした。
発音記号は知っているし、「Rの発音は舌を丸める」みたいな一般的なノウハウも心得てはいたつもりですが、実際に発声の反復練習を行うと非常に勉強になりました。
発音の知識を持っていることと、実際に再現できることは同じではありません。佐野さんは、反復して発声することで学びがあったと話しています。
イギリスに赴任しているTさんも、口のほうが変わったと言っています。
また、プログラムの中でしっかり音読やシャドーイングなどの自己学習も徹底したので、
英会話をしている際に英語が口から出やすくなりました
音読やシャドーイングを続けた結果、英会話で英語が口から出やすくなったと実感しています。
4人の体験談に共通しているのは、新しく覚えた語数ではなく、音を聞くことや声に出すことによる変化を語っている点です。H.Tさんは頭に残りやすくなり、Tさんは口から出やすくなったと感じています。寺倉さんは発音の違いを聞き取れるようになり、佐野さんは発声の反復練習に学びがあったと話しています。
すでに知っている単語が多い人は、新しい単語を増やす前に、手元の単語を聞き取れるか、文のなかで言えるかを確認する価値があります。
どの段階で止まっているかは、3つに分かれる
では、自分がどこで止まっているのかを次の3つに当てはめてください。
| 止まっている場所 | 入っているか | 原因 | 次にやること |
|---|---|---|---|
| ① 見て意味が分からない | × 入っていない | 単純に量が足りない | 単語帳を増やす |
| ② 見れば分かるが、聞くと分からない | △ 文字だけ入っている | 音で入れていない | 音とセットで入れ直す |
| ③ 見ても聞いても分かるが、口から出ない | ○ 入っている | 口が覚えていない | 声に出す練習を足す |
どの段階にいるかは、仕事でよく使う単語を選び、意味・聞き取り・発話の順に確かめます。
まず英単語を見て、意味が分かるかを確認します。意味が分かれば、次はその単語の音声を聞き、どの単語か判別できるかを確かめます。最後に、その単語を使った短い英文を自分で言ってみます。
文字を見ても意味が分からなければ①、文字では分かるのに音声では判別できなければ②です。意味も音も分かるのに、文のなかで使えなければ③に当たります。
体験談で語られた範囲では、井高さんは①に近く、N.Fさんは③に近い悩みを抱えていました。同じ「覚えられない」という言葉でも、必要な練習は異なります。
判定は単語ごとに変わります。全部が①ということも、全部が③ということもありません。仕事で使う語をいくつか選んで、1語ずつ当てはめてみてください。 ①が多いのか、②③が多いのかで、次にやることが決まります。
確認した単語は、「意味が分からない」「聞くと分からない」「文のなかで言えない」の3つに分けます。どこに多く集まるかを見れば、優先する練習が決まります。
この確認をせずに単語帳だけを増やすと、②や③の課題が残ることがあります。反対に、意味を知らない①の単語は、音読だけでは補えません。現在地に合う練習を選ぶことが大切です。
段階ごとに、やることが違う
①見ても意味が分からないなら、語彙を増やす
①では、まず単語と意味を結びつけます。単語帳やアプリを使った反復が必要な段階です。ただし、意味だけを覚えるのではなく、音声も一緒に確認しておくと、②の聞き取りへ進みやすくなります。
新しく覚えるときは、意味を確認したあとに音声を再生し、自分でも一度発音します。一度にすべて覚えようとせず、仕事で使う語から優先します。
②見れば分かるのに聞き取れないなら、音を加える
②では、すでに意味を知っている単語へ音を加えます。新しい単語を増やすより、仕事で使う既知語を聞き取れる状態にすることを優先します。
辞書アプリの音声を再生し、強く読む位置やカタカナとの違いを確認します。そのあと、自分でも声に出します。意味を調べ直す必要がないため、発音の確認に集中できます。
対象をすべての単語へ広げる必要はありません。会議や商談で使う語から進めます。
優先するのは、日本語として定着してしまっている単語です。シャベリッシュのメディアは、ビジネスの現場で間違えやすいカタカナ英語をこう挙げています。
| カタカナ | 英語 | 本来の音 |
|---|---|---|
| メッセージ | message | 「メ」を強く「メッセジ」 |
| デジタル | digital | 「ディジタル」 |
| キャリア | career | 「リー」を強く「カリーアー」 |
| エビデンス | evidence | b ではなく v、ストレスは「エ」 |
| スタッフ | staff | 語尾に母音はつかない |
いずれも仕事で使われることのある語です。例えば evidence は、日本語の「エビデンス」と英語の発音で、子音や強く読む位置が異なります。意味を知っていても、カタカナの読み方だけでは相手に伝わりにくい場合があります。
③聞けば分かるのに出てこないなら、文で発話する
③では、知っている単語を文のなかで使う練習を加えます。単語だけを発音できても、会話では前後の言葉と組み合わせる必要があるからです。
例えば evidence を使いたいなら、単語だけでなく、実際の会議で使う短い文を作って声に出します。自分が使う場面に近い文ほど、そのまま練習へ取り入れやすくなります。
寺倉さんは、覚え方そのものを変えたと話しています。
これ結構アドバンテージというか、ただボキャブラリーを覚えるのでなく、ネイティブと話すことを前提として学ぶ、となれているのでいいですね。
寺倉さんは、ネイティブと話すことを前提に学ぶようになったと話しています。使う場面を決めておけば、意味の確認だけで終わらず、文にして発音するところまで練習できます。
②と③は、どちらも音声を使って練習する点が共通しています。両方に当てはまる場合は、まず手本の音を聞き、単語の発音を確認してから、文のなかで声に出します。
明日から、1語をどう入れ直すか
まず、会議や商談で使いたいのに、いつも出てこない単語を1つ選びます。
手順は3つです。
- 意味を確認する。すでに知っている単語なら飛ばして構いません
- 音を再生して、真似る。辞書アプリの音声を再生し、同じように声に出します
- 短い文にして録音する。手本と聞き比べ、違いを確認します
単語だけで終えず、自分が使う文まで声に出すことがポイントです。
この練習は、一度だけではなく繰り返して定着させます。発音を学んだ中津さんも、復習時間の大切さを話しています。
しっかりと正しい発音を身に付けるには、レッスンを受けっぱなしにするのではなく、定着させる時間が大事になってくると思うので、すきま時間や一日のルーティンに復習の時間を設けられる人は向いていると思います。
最初から多くの単語を扱う必要はありません。仕事で使う語を少数選び、聞く・発音する・文で言う練習を繰り返します。
続けるには、練習する時間を決めておきます。中津さんは、もともと確保していた英会話の復習時間に、発音の復習も組み込んでいました。
私はハツオン受講前から英会話の復習をする時間を確保しており、ハツオン受講中はその時間帯に一緒に復習をしていたので時間確保には困りませんでした
新しい時間を確保するのが難しければ、通勤中や昼休みなど、すでに学習へ使っている時間に加えます。
音声認識は、発音を見直すきっかけとして使えます。意図した単語に変換されなければ、手本を聞き直して違いを確認します。ただし、認識結果は端末や周囲の音にも左右されるため、それだけで発音の正誤を断定せず、必要に応じて指導者からフィードバックを受けます。
まとめ|単語を増やす前に、止まっている段階を確かめる
「社会人の英語学習に関する実態調査」(n=332、2025年8月)では、英語力の課題で最も多かった回答が「瞬時に言葉が出てこない」の60.2%でした。「知っている語彙やフレーズが少ない」は44.3%です。「Z世代に聞いた!英語への苦手意識に関する調査」(n=1,254、2024年9月)でも、スピーキングに苦手意識がある人の不安として「単語が出てこない」が61.2%で最多でした。
語彙不足だけでなく、知っている単語を必要な場面で使えないことにも、多くの人が悩んでいます。
自分の課題は、3つの段階で確かめられます。見ても意味が分からないなら、単語と意味を覚える段階です。見れば分かるのに聞き取れないなら、手本の音を加えます。聞けば分かるのに会話で出てこないなら、実際に使う文で発話を練習します。
単語帳の周回数を増やす前に、仕事で使う単語を1つ選んでください。意味が分かるか、聞き取れるか、短い文で言えるかを順番に確認します。
止まっている段階が分かれば、単語を増やすべきか、音を確認すべきか、文で話すべきかを選べます。必要な練習へ時間を使うことが、会議で使える単語を増やす最初の一歩です。
