英語が読めるけど話せない|文法・単語は分かるのに会話では出てこない理由
英語の資料は読める。メールも辞書があれば書ける。学生時代、英語の成績は悪くなかったはずだ。それなのに、会議で英語を振られた瞬間、頭が真っ白になる。「読めるのに、なぜ話せないんだろう」——この落差に、心当たりはないでしょうか。
「英語 読める 話せない」と検索すると、「アウトプットが足りない」「スピーキングの練習をしよう」という記事が並ぶ。それは分かっている。あなたが知りたいのは、「なぜ読めるのに話せないのか」の仕組みと、「読める力を活かして話せるようになる順番」のはずです。
実際に、同じ落差に悩んだ人がいます。WEBマーケティング企業で人事を務める高尾さんは、こう語っています。
単語自体は知っていて文章は読めるのにいざ話そうとすると、とっさに言葉が出てこないといった状況がよくありました
単語も文法も知っています。読める。それでも、口からは出てこない——その課題を、正確に表現しています。
高尾さんは、英語コーチングスクール・ミライズの受講者です。公式サイトには200件以上の体験談が本人の言葉のまま公開されており、「読める」から「話せる」への転換を経験した人たちの記録が繰り返し登場します。法務職、エンジニア、投資家——読む英語を仕事にしてきた人たちが、なぜこの落差に悩み、どのようにして越えていったのか。
その体験を分析すると、「読む」と「話す」は全く別の能力であることが見えてきます。
単語や文法の知識では足りない。むしろ、読む力を使いながら、段階を追って話す力を新たに作ることが、この問題を解決する道です。この記事では、受講者たちの変化から見えてきた構造と、最初の一歩を示します。
「読めるのに話せない」は、読む英語を仕事にしてきた人ほど陥る
この章では、英語が読める人たちが、なぜ話す力を身につけられないのかを実例から見ていきます。仕事の中で「読む」「書く」をずっと使ってきた人たちが、どのような状況に直面しているのか、その背景を確認します。
英文契約は読める。それでも話せない
電機メーカーで法務職を務めていた法務職の方がいます。かつての仕事の内容について、このように語っています。
英語に関する仕事という意味では、契約審査業務が中心だった関係で、英文契約を読んだり、弁護士へのメールを英語で書いたり読んだり、海外との英語を使った電話会議や稀に交渉等に出席する機会はありました
法務職という立場では、英文の読み書きが仕事の中核です。契約書や法律書類の英語は複雑で、高い理解力を要求します。それでも、この受講者の現実はどうだったのか。その後に続く言葉が、この記事のテーマを象徴しています。
TOEICである程度のスコアを取ることができても、英語を話せない。
読む力と書く力を磨く環境では、話す力は成長しません。仕事の現場で英語を「読む」「書く」ことを繰り返していても、「話す」ことを実践する機会がないからです。
定年まで大手製造会社でエンジニアとして働いてきた大江さんも、同じ構造を経験しています。その方は自身の経歴について、このように述べています。
読み書きは(技術)専門用語等を覚えることに重点を置き、最終的には特に不自由しなかったです
技術職にとって、読み書きは専門知識を身につけることとセットです。仕様書や技術書を「読む」作業が日常の大半を占めるため、インプットの力は仕事を通じて自然と極限まで磨かれていきます。
ところが、同じエンジニアが「話す」ことになると、話は変わります。仕事の中では報告書を書く、メールで報告する、仕様書を読む、という作業が主流です。会議で英語で発言したり、ネイティブスピーカーと英語で意見を交わす機会は限られています。読む訓練は仕事の中で自動的に積まれますが、話す訓練はそうではないのです。
つまり、読むのに話せないのは、本人の適性や才能の問題ではありません。仕事の性質が、読む機会と話す機会を分断しているからです。読む仕事をしている限り、話す力はそのままでは成長しません。
読み書き中心の英語教育が作る「読める人」
この問題は、個別の職場環境にとどまりません。日本の英語教育システムそのものが、読む力と話す力に大きな差をつくってきたのです。
受験英語を中心に学んできた、イベント会社で司会業を営む佐藤さんは、英語習得の現状を、このように説明しています。
今まで受験英語の勉強しかしてこなかったので、『ある程度話せはするけれども自分の強みになるほどの英語力はない』と言う状態
受験英語は、読む問題、書く問題、リスニングで構成されていますが、スピーキングの問題はほぼありません。大学受験を突破するために必要な能力は、英文を読み解くこと、問題文を理解することです。だから、受験勉強を通じて、読む力は自動的に高まります。一方、話す力を測る試験がないので、話す練習をする動機も、その時間も確保されません。
学校教育が終わった後、英語塾で学ぶ場合はどうでしょう。日本の多くの英語塾の特徴を、MBA留学の方が対比させています。
日本の英語塾などは、読み書きにフォーカスをするのに対し、今回のフィリピン留学では『話す楽しさ』を重視したレッスンだったと思います
日本国内の英語塾も、読み書きを中心にカリキュラムを組むことが標準です。読み書きの能力を測ることは、テストで評価しやすいからです。一方、話す力を育てるには、マンツーマンでの会話実践や、口頭での実践練習が必要です。それは時間がかかり、評価も曖昧になりやすい。だから、組織として投資しにくいのです。
つまり、「読める人」は、受験英語の訓練を積んだ人です。日本の学校教育の中で、読む力を要求する試験ばかりに対応してきたから、読む力だけが高まりました。職場に出た後も、読み書きが中心の環境に置かれると、その傾向は強まります。話せないのは、本人の努力が足りないのではなく、読む訓練を積む環境と、話す訓練を積む環境が、そもそも分断されているからなのです。
読む訓練を積んだ年数が長い人ほど、この落差は大きく感じられるようになります。
では、読む力と話す力は何が違うのか。プロセスを並べて比べます。
読む英語には「時間・見直し・正解」があります。話す英語には全部ない
読める人が話せない理由は、一つの根本的なズレにあります。それは「情報の流れる方向が逆」ということです。このセクションでは、読むプロセスと話すプロセスの決定的な違いを見ていき、その違いが生み出すブレーキの仕組みを探ります。
3つの非対称——時間・見直し・正解
読むときと話すときでは、3つの条件が全く異なっています。
読むときの3つの自由
読む英語には、決定的な3つの自由がある。
第一は「時間」です。あなたが英文メールを受け取ったとき、返信まで何日もの猶予があります。複雑な文を見かけたら立ち止まって、辞書を引き、文構造を確認できます。分からない単語があれば何度でも調べ直せますし、複雑な表現は何度でも読み返せる、セカンドチャンスが無限に近い環境です。時間があるから焦る必要がなく、正確さを追求できます。
第二は「見直す権利」です。読み返すたびに理解が深まり、最初は見落とした細部にも気づけます。読み間違いに気づくたびに修正できます。ビジネス文書なら、受け取った側がじっくり読み込む時間があります。その間に、間違いを発見して補正するチャンスは何度もあります。英語学習者であっても、読む場面では「自分の理解が正しいか」を何度でも確認できるから、自信を持って進められます。
第三は「正解の存在」です。本文に書かれた英文は文法も正しくスペルも完璧な、絶対的な「答え」として目の前にあります。その正解と自分の理解を照らし合わせることで、合っているかどうか確認できます。迷うことがない環境です。「この表現で良いのか」と不安に思う必要がない。読む環境では、正解がいつも目の前にあるから、学習者は確実な知識を蓄積できます。
話すときには全部ない
これに対して、話す英語には、この3つが全部消えることになります。時間がないので、相手は答えてくれるのを待っています。その間にあなたが沈黙して考え直すことは、会話を止めることになり、その1秒が会話を冷え込ませます。見直しもできず、言った言葉は取り消すことができません。「あ、違った」と言い直すたびに、会話の流れは途絶え、話している最中に修正するたびに、会話が止まることになります。そして何より、正解がないのです。あなたが口から出す英文が、その場の唯一の答えになることになります。相手が「それは違う」と指摘する可能性は低いものです。なぜなら、会話では伝わることが最優先だからです。文法の完璧さより、意図が通じることの方がよほど重要だからです。
読める力が高いほど落差は大きくなる
読む力が高い人ほど「時間と見直しと正解がある環境」に最適化されています。その中で何年も英語に触れてきました。だからこそ、その3つが全部消える会話場面で、落差が劇的になります。TOEIC 800点を超える人が、簡単な会話で黙り込んでしまう理由は、ここにあります。
読める人ほど踏む「正しさのブレーキ」
このプロセスの非対称が、一つの心理的なブレーキを生み出しています。
8ヶ月の留学をしたシステムエンジニアの加茂さんは、留学を通じて自分の中にそのブレーキがあることに気づきました。加茂さんは、こう述べています。
私は英語を話すことに対して『ブレーキ』がかかってしまっていたと思っています。
加茂さんは留学中、意識的に自分の思考を整理しました。そして気づいたことがあります。
『時間がないから、効率的にやろう』という想いが先行し、『英語を伝える』ということ以上に『英語の正しさへのこだわり』が抜けなかったと思います。
加茂さんはさらに、正しさに縛られた状態の危険性を述べています。
長期滞在をしていなければ、自分のできないところだけが見えて、かえって留学前よりも自信をなくして帰っていた可能性があったと本人は振り返っています。
この言葉が示すとおり、正しさへのこだわりが強い人には、練習をしても「できないところ」ばかりが見えてしまうことがあります。改善の実感よりも欠落感ばかりが増え、自分の不完全さに目が向いてしまうのです。読める力が高い人は、正しい英文を知っているため、自分の口から出る不完全な文が許しにくくなります。
一方、テスト点数が低くても、別のルートから自然に英語を話す機会を得た人たちがいます。
書類を扱う仕事の傍ら、世界を旅する田口さんは、こう述べました。
世間的にもよくあると思うのですが、テストの点数は低くても上手に英語で話せる人っていますよね。
この方たちは、読む力が低いわけではありません。ただ、正しさへのこだわりが薄い傾向があります。だからこそ、不完全な文でも躊躇なく前に進むことができています。読める力と話せる力が別の軸である様子がここに表れています。
セルフ診断
「正しさのブレーキ」は、自分で気づきにくいものです。あなたの中にそれがあるかどうか、6つの質問で確認してみてください。
- 話す前に、頭の中で完全な英文を組み立てようとする
- 文法の誤りに気づくと、途中でも言い直したくなる
- 相手の英語の文法ミスには気づくのに、自分は話せない
- メール・チャットなら英語でやりとりできるが、電話・会議は避けたい
- 「うまく言えないなら黙っていた方がまし」と思うことがある
- 英語を話した後、「あの言い方は間違っていた」と反省会をしてしまう
Yesが多いほど、あなたの中に「正しさのブレーキ」があります。3つ以上Yesなら、その傾向は強いと言えます。
8ヶ月かけてブレーキを外すことができた加茂さんの時系列を見ていきましょう。
実録——エンジニアの加茂さんが、「聞けない、話せない」から会話を楽しむまでの8ヶ月
この章では、システムエンジニアの加茂さんが、英語読解の力を持ちながらも「聞く」「話す」時のブレーキを8ヶ月で外した原体験をご紹介します。すぐには変わらないと思われていたブレーキが、どのフェーズで外れたのか。その転換点にあったのは、意外にも「効率」ではなく「場数」だったようです。
Before——効率と正しさで走ろうとした
加茂さんが留学に至った背景は、多くの読める人と共通しています。働きながら英語を勉強していたが「このままでは中途半端になる」と思い、思い切って仕事を休職。セブ島での8ヶ月の留学を決めたのです。
しかし、到着直後は「当初、『英語を聞けない、英語を話せない』という状況でしたが」と振り返ります。さらに、効率を優先するあまり正しさへのこだわりが抜けず、それが話すことへのブレーキになっていたと本人は語っています。
この「効率」への執着は、読める人にとって落とし穴になりやすいものです。テスト勉強の習慣が残っているため、ついつい「正しい英語」を身につけようとしてしまいます。成功体験が「勉強」にあるため、留学でも同じやり方で何とかできると思ってしまいます。加茂さんも最初は、その罠に入っていました。
転機——プレゼン15回で「型」と場数を積む
転機は、思いもよらない場所から訪れました。加茂さんがプレゼンテーションのクラスに約15回チャレンジすることにしたのです。
加茂さんは実際に何に取り組んだのか。本人の言葉を引用すると『大きく2つ挙げられます。1つ目は、ミライズ留学のプレゼンテーションのクラスですね。私は滞在中、約15回プレゼンテーションにチャレンジしましたが、英語のアウトプットの練習にもなり、また、「英語でどのように構成していくのか」という型を学ぶことができました』と述べています。
ここに重要な気づきがあります。読める人に足りないのは、知識ではありませんでした。むしろ問題は逆で、知識があるからこそ「正しい表現を使わなければ」という圧を感じていたのです。加茂さんが何度も同じ場面に立つことで見つけたのは、「自分の言葉を組み立てて出す」という場数をふむことの価値だったのです。
そして、6ヶ月目を超えたあたり、加茂さんの内面に大きな変化が起こります。本人の言葉を引用します。
6ヶ月目を超えたあたりから自分の中の概念が大きく変わったんです。「べき論」ではなく、純粋に「会話を楽しむ」というフェーズに入ったのは最後の1ヶ月でしょうか。長期だからこそ、失敗を恐れる気持ちを乗り越え、たくさんのことにチャレンジすることができたのではないかと思っています
ここに、読める人のブレーキを外すカギがあります。正しさに縛られたマインドをリセットし、「会話を楽しむ」という喜びへと軸足を移しています。その転換は、中長期で挑戦し続けることで訪れるようです。
After——「べき論」ではなく「会話を楽しむ」
留学を終えた加茂さんの変化は、数字では測りきれません。本人はこう話しています。
1番の変化としては、英語を使った会話自体を楽しめるようになったことですね。当初、『英語を聞けない、英語を話せない』とういう状況でしたが、自分の思いも英語で伝えられるようになり、英語での会話をもっとしたいと思うようになりました
この「もっとしたい」という感覚は、ブレーキが外れた証拠です。最初は「聞けない」「話せない」という制限の中にいました。でも今は、その制限が解放され、会話そのものへの欲求が生まれています。
加茂さんが変化した背景には、もう一つの要因がありました。本人は『2つ目は、「生徒さんとの出会い」ですね。ミライズの生徒さんは、会社を経営している方も多く』と述べており、単に「正しい英語を学ぶ場」ではなく、自分と同じ水準の相手がいたことが大きく影響しています。
少数でもいいから、何人かの先生達を集めて英語を使ってプレゼンテーションをしたい、優秀なミライズの生徒たちと討論会をしたいなどの要望にも臨機応変に対応してくれ、それを実現させてくれます
この言葉から、環境の大切さが伝わります。
ただし、加茂さんはこうも述べていました。
長期滞在をしていなければ、自分のできないところだけが見えて、かえって留学前よりも自信をなくして帰っていた可能性があった
加茂さんの記録が示しているのは、期間の長さそのものではなく、「正解を教わる場」から「自分の言葉を出す場」への切り替えがブレーキを外した、です。
しかし、これは仕事をしながら8ヶ月はなかなか使えない、という方がほとんどのはずです。
読める力は資産——話す力に変える3つのやり方
読める力を持ったまま話せるようになった人たちは、何をしたのか。加茂さんの8ヶ月が示すのは、「正しさへのこだわり」というブレーキを外すプロセスです。では、そのブレーキを今日から外すために、あなたが明日から使える3つのやり方があります。実録から、なぜそれが効くのかを見て、あなたがこの1週間で試せるアクションをお示しします。
やり方1:読める英語を、声に出して繰り返す
海外エンジニアと働く大平さんは、こう語っています。
今は基本的にはドキュメントや開発する時も英語で読み、わからない部分だけ日本語に訳して理解しています
読める人は語彙も構文もすでに在庫があります。問題は、その在庫が「目で見て分かる」形でしか保存されていないことです。
読むときは目から情報が入り、話すときは口から出すという別の経路を通るため、在庫はあるのに出す形に変わっていません。その受講者が達成していることは、読む在庫を、口から出す形に変えたことです。
これは「新しい知識を増やす」ことではなく、「在庫を別の形式に変換する」作業です。声に出すことで、読んだときと同じ英文が別の神経ネットワークに登録されます。会話で使える形に変わるのです。あなたがこれまで積んだ在庫は消えておらず、別の出口から取り出すルートを作るだけなのです。
もしもあなたが取り組むなら
まず、仕事で読んだ英文から、明日使いそうな文を3つ選んで音読してください。その3文は、あなたが「分かる」文でいいのです。むしろ分かる文を選びましょう。音読するときは、文法的な完璧さを狙わず、意味が伝わるスピードで読みます。黙読した資料の要点を、和訳ではなくあなたが理解した意味のまま、英語で1分間口頭要約してみてください。読めた文を「言えた文」に変える意識で、読む時間の1割を声に出す時間にします。
1週間の実績を測るなら、これだけで十分です。読む訓練が8年かかった人が、声に出す訓練なら3週間で形が変わります。在庫を出す道が開くからです。
やり方2:日本語変換をやめる練習
留学した外資系製薬会社に勤めていた受講生は、この転換を記録に残しています。
日本語で考えてから英語で話す、というかたちから、英語で聞かれた質問を日本語に変換せずにそのまま英語で答えられるようになってきたように感じています
読むときの習慣は、「英語→日本語に訳して理解する」です。学校の授業がそうだったからです。授業では、日本語で意味を理解することが「分かった」の証拠だったからです。その習慣は、8年や10年かけて脳に刻まれています。
けれども話すときには、この習慣が「日本語で考えて英語に訳す」という二度手間として現れます。会話の速度でこの往復は間に合わず、その間に沈黙が伸びていきます。
日本語を挟まずに話す力は、練習した分だけ育ちます。何度も使うと、英語を英語のまま理解し、英語のまま返す神経が育つのです。それが海外エンジニアが到達している「わからない部分だけ日本語に訳す」という状態です。最初から訳さない人ではなく、訳す癖を意図的に減らした人——その差が結果を分けています。
日本語変換を止めるための強力な武器が、イベント会社で司会業を営む佐藤愛さんが実践した「言い換え(パラフレーズ)」です。トレーナーから「逆に知らない単語はどんどん増やさなくていいから、知っている単語での色んな言い回しをできる様にしたほうが良い」という助言を受け、彼女は難しい言葉をあえて使わず、手持ちのシンプルな英単語だけで意見を伝える工夫を始めました。これが、脳内での翻訳プロセスを劇的にショートカットさせる鍵になります。
もしもあなたが取り組むなら
簡単な質問(今日の予定は? 昨日は何を食べた? 好きな食べ物は?)に、日本語を経由せず英語で即答する練習を1日5問こなしてください。分かりやすく言うと、質問が耳に入った瞬間に、訳さずそのまま英語で返す練習です。読むときも「訳さず理解する」を意識します。英文を読んだときに、日本語に訳そうとしたら、そこで意識的に「和訳を止める」。詰まったら完全文を諦めて単語でも出します。これが大事です。
読む力が高い人ほど、「完璧な英文で理解しないと」という圧があります。その圧を一度捨ててみると、単語だけでも会話は進みます。相手は、あなたの意思を理解しようとします。あなたが「coffee」と言えば、相手はコーヒーを勧めてくれるはずです。完全文は不要なのです。
この変換をやめる練習は2週間ほどで効果を体感でき、その後は止めたくても止められない状態になるでしょう。英語が直接、意味として脳に入るようになるからです。
やり方3:「伝わったか」だけで採点する場数
田口さんは、次のように言っています。
テストの点数というよりも実際に英語を話す力がついたと思います
加茂さんが留学の終盤に記録した「『べき論』ではなく、純粋に『会話を楽しむ』というフェーズに入った」。その転換の鍵がここにあります。
正しさで採点する限り、読める人の自己採点は常に不合格になる傾向があります。理由は単純です。あなたは正しい英文を知っているからです。知っているからこそ、自分の口から出る不完全な文が許しにくいのです。文法の誤り、不自然な表現、足りない単語——すべてが見えます。その許しにくさが、ブレーキになっています。
でも、その不完全な文で相手は理解しています。採点基準を「文法が正しかったか」から「相手に伝わったか」に変えると、同じ発話が成功体験に変わります。加茂さんがプレゼンテーション15回を重ねた中で、ブレーキが外れたのはそのためです。伝わることを優先した繰り返しの中で、新しい評価軸が脳に根付くのです。
もしもあなたが取り組むなら
話す場を週1回確保してください。オンライン英会話でも、社内の英語話者との雑談でもいいのです。1回30分で十分です。終わった後の反省会は「伝わったこと」を先に3つ数えてください。「相手は私の質問を理解して答えてくれた」「料理の話で話が盛り上がった」「予定を伝えて、相手が了承してくれた」——成功を先に数えます。文法の振り返りは会話中ではなく、できれば翌日、熱が冷めた後にまとめてテキストを見直します。
会話の最中に「あの言い方は間違っていた」と反省をしたくなったら、それは止めてください。会話の最中に正しさで採点したり、その場で修正したりせず、相手に伝わるまで出し続けます。「〜のような意味」「〜という感じで」——補い方は何でもいいのです。その繰り返しが、読める人の中にある「伝わったかだけで判断する感覚」を育てます。
1ヶ月、週1回を続けたら、自分の中で何かが変わります。話すときに「正しさを作る」のではなく「伝わる形を探す」という思考に切り替わるのです。その切り替わりが、ブレーキを外すのに十分な転換になります。
最後に、読める力を持ったまま話せるようになった人たちの記録を並べます。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約する「読める人」たちのBefore→After——記録は進行形のまま
読む英語を仕事にしてきた人たちの変化を、完成宣言ではなく進行形の記録で見ます。読める力を持ったまま話す力を身につけた人たちは、今どこにいるのか。その答えは「完成」ではなく「次のステップへ進む途上」なのです。
読む仕事を続けながら、話す訓練を後から足した人たち
書類と向き合う仕事から、変化を決めたAIさんがいます。ドキュメント・書類を読んで検証する仕事の中で、英文と毎日向き合い、読む英語のスキルは確実に成長していました。ところが、その環境では話す機会が限られていました。迷いながらも、10年越しで留学の決断に踏み切ったのです。
その決断を支えたのは、何か。本人はこう振り返っています。
石橋を叩いて渡る性格なので、今この状態で留学して大丈夫なのか?もう少し貯金しないと?授業についてける?って色々と考えてしまい、石橋を叩きすぎて橋が割れて渡れなかった
迷い続けた10年。その間、読む仕事は積まれていったが、話す機会に恵まれなかった。しかし、いつまでも完璧な準備を待つ必要はないと気づいた時点で、AIさんは行動を起こしました。留学を経て、こう述べています。
もっと早く留学すればよかった
かつてセブ島留学を経験した受講生が記録している対比も、同じ構造を示しています。国内の英語塾は読み書きに比重を置くことが多い一方、留学では口から出す楽しさを中心に据えたレッスンだったと本人は振り返っています。
この対比の中に、読む訓練と話す訓練がいかに異なる環境で育つかが表れています。日本の教育はテストで評価できる読み書きの成果を測りやすい一方で、話す楽しさはテストでは測られません。だから、それを重視する環境に身を置く必要があるのです。
定年まで大手製造会社でエンジニアとして働いてきた大江さんも、ベトナムでの2年間を経験しました。その仕事の中では、パソコンやメール、図面。基本的にすべて英語でした。技術専門用語の読み書きで、最終的には特に不自由しなかったと述べています。
ところが、海外での仕事が終わった後、大江さんの中に新しい思いが生まれました。
また海外・ベトナムで働きたい、その時に活かしていきたいと思っています。しかし、ミライズで英語を学んでいる間に、仕事だけではなくもっと“異文化交流”等で幅広く英語を活かしていきたいという気持ちが強くなりました
読める力を基盤に、新しい目的を加えた人の記録です。仕事のための英語から、人間関係を広げるための英語へ。その視点の転換は、読める人が話す力を身につける過程で起こる自然な変化なのです。
「何をすべきか分かった」から始まる——読める人の次の一歩
法務職だった受講者の到達点を見ます。電気機械メーカーで法務職として契約や法令に関する相談を受けてきた人物です。英文契約を読むスキルは確かにあるものの、話す力とは別でした。セブ島留学後、その人物の結論は謙虚です。
英語を話せるようになるためには英語学習が必要なことを再認識し、また、具体的にどのような英語学習・練習をするべきかを知ることができたことはこのセブ島留学で得た大きな収穫でした
「ペラペラになった」という完成宣言ではなく、「何をすべきか分かった」という言葉が選ばれています。読める人の次の一歩は、ここから始まるのです。
加茂さんもまた、進行形で次のステップを見据えています。8ヶ月の留学を終え、復職を控えた現在の心情をこう述べています。
復職に際して、社内には英語を使って仕事をできる環境が多くあるため、そこでこの8ヶ月で学んだ英語を、最大限に発揮しつつ働ければいいなと考えています
全員が進行形です。完成ではなく、次の環境での実践へ向かう途上。それが読める人の変化の実際の姿なのです。
最後に、今日からの順番を整理します。
まとめ——「読めるのに話せない」は、資産がある証拠
「読めるのに話せない」その理由は、決して才能の問題ではありません。仕組みの問題です。読む英語には、時間がある・見直せる・正解の文が目の前にあります。一方、話す英語には、この3つが全部ありません。待ってもらえず、戻れず、正解がないのです。プロセスが違うだけなのに、読める力が高いほど「正しさのブレーキ」を踏みやすくなります。正解を知っているからこそ、自分の口から出る不完全な文が許しにくくなるのです。
そして、実際に変わった人たちがやっていたことは3つあります。読める英語を、声に出して繰り返すこと、日本語変換をやめる練習をすること、そして「正しさ」より「伝わったこと」を優先する場数を踏む。これだけです。
記事の冒頭、WEBマーケティング企業で人事を務める高尾さんは語っていました。単語も読めるのに、いざ話そうとするととっさに言葉が出てこない——その落差には仕組みがあり、8ヶ月の留学をしたシステムエンジニアの加茂さんの記録が示すとおり、ブレーキは場数で外れます。一晩では難しくても、失敗を恐れず出す経験を積めば変わっていきます。
では、今日から何をするか。次の3つです。
- セルフ診断6問で自分のブレーキの強さを測る — 話す前に完全な英文を作ろうとしていないか、文法の誤りが気になって言い直したくなっていないか。Yesが3つ以上なら、あなたの中に「正しさのブレーキ」があります
- 今日読んだ英文から3文、声に出す — 仕事で読んだ資料、ネットで見つけた英文。その中から明日使いそうな文を3つ選んで、黙読ではなく音読してみてください。読める資産が、口から出る形に変わります
- 「伝わったかで採点してくれる場」を週1回確保する — 自分の採点基準を「正しかったか」から「伝わったか」に変える。その経験を週1回、継続することです
