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英語の会議が聞き取れない|「誰の英語を、どんな場面で聞き取れないか」で対策は変わる

ビジネス英語

1対1の会話なら何とか追えます。メールなら読めます。なのに会議になると、突然聞き取れなくなります。特に相手同士が話し始めた瞬間、議論が自分の頭の上を通過していく——そのような経験をされたことはないでしょうか。

「英語 会議 聞き取れない」と検索すると、原因を複数整理しシャドーイングやディクテーションを勧める記事が多く出てきます。その情報が間違っているわけではありません。ただ、本当に知りたいのは別のところではないでしょうか。教材の英語は分かるのに、なぜ会議では分からなくなるのか。その差はどこにあるのか、という疑問です。

実際に、その差の理由を突き止めた人がいます。自動車メーカーで開発をしていた加地さんは、ドイツの拠点と共同で仕事をし、日常的に英語を使う環境にいながら、部の中では「私は英語ができない方です」と語る状態から学び直しました。そして、自分の聞き取りを崩していた原因が、単語同士がつながって別の音になる「ワードコネクション」にあったと突き止めています。一方、イギリス駐在のTさんは「日本にいるとき、非ネイティブの外国人メンバーとの会議では、母国語のアクセントが強く、英語が聞き取りづらいことがありました」と語っています。2人が直面した落差は異なり、その原因も異なっていますが、いずれも具体的に特定できるものでした。

2人はいずれも、ミライズが提供する英語学習サービスの受講者です。英語コーチングスクール・ミライズのもとには200件以上の体験談が本人の言葉のまま集まっており、会議・電話会議の聞き取りに悩んだ人の声も残っています。この記事では、その声から「会議で聞き取れない」が起きる条件を分解し、実際に越えつつある人が何をしたのかを導き出します。

聞き取れないのは「相手と条件」で起きている——リスニング力一本の問題ではない

「英語が聞き取れない」という悩みは、一見シンプルに見えます。しかし実際には、その中身は複雑に分岐しています。

相手が誰なのか(訛りの強さ、話すスピード)、どんな場面か(1対1か、複数人か)によって、聞き取れない理由は全く異なるのです。これをまとめて「リスニング力の不足」と考えるから、対策の実感がないまま教材を積み重ねてしまいます。実は、相手と条件を特定することが、最初の一歩なのです。

この章では3人の話から、同じ「会議で聞き取れない」でも、崩れている場所が人によってまったく違うことを確認します。自分はどれに近いかを重ねながら読んでみてください。

非ネイティブの訛りで崩れる

聞き取り難さの最初の壁は、「訛り」です。

冒頭でご紹介したイギリス駐在のTさんが会議で直面したのは、まさにこの壁でした。非ネイティブの外国人メンバーとの会議で、母国語のアクセントの強い英語が聞き取りづらい——という経験です。会議に参加するのはネイティブだけではありません。国際的な職場では、さまざまな国の出身者が、それぞれの母語の影響を受けた英語を話します。

教材の英語は、整った発音で一定の速度で録音されています。しかし実際の会議では、話す人の数だけ違う音の癖が混ざります。その中から相手が何を言ったのかを拾うには、その訛りに何度も触れて、耳を慣らしていくしかありません。訛りへの慣れは、単語や文法の知識とは別に作る必要がある、ということです。しかも訛りは相手ごとに違うため、ある会議では聞けたのに、別の会議では崩れるという揺れも起きます。聞き取りが安定しないのは能力が上下しているのではなく、相手が入れ替わっているからです。安定しない自分を責める前に、まず相手の顔ぶれを思い出してみてください。

ネイティブの実速で崩れる

第二の壁は、「実速」です。

投資家の田口さんは、こう述べています。

以前2ヶ月ヨーロッパへ旅行したことがありましたが、英語を話すスピードが速くて会話をするのは難しかったですね

さらに、「まずアジア人の英語も聞き取れない状態だったので、それならまずアジア圏に行くべきだと思いました」と、現実的な判断に至ります。

教材の英語は、聞き手が追える速度を前提に作られています。しかし実際の会話は、その前提より速く進みます。しかも、速くなるほど単語同士がつながり、区切りが曖昧になって、教材で覚えた音とは別の音になって流れてきます。速さの壁は、単純なスピードの問題であると同時に、音が変わってしまう問題でもあるのです。加えて、教材の音声は何度でも聞き直せますが、会議は戻せません。1箇所聞き逃すと復帰までに間があき、その間も議論は先へ進みます。実速の壁が会議でとりわけ大きく見えるのは、この戻せなさのためです。

田口さんの判断で見ておきたいのは、相手を段階で捉えている点です。いきなり一番速い相手に挑むのではなく、いま聞き取れる相手の一段上から慣らしていく。この段階の発想は、後の章で見る訓練の設計にもつながります。

複数人が話し始めた瞬間に崩れる

第三の壁は、「複数話者」です。

会議という場に限らず、複数話者の壁を語った記録があります。薬剤師をしていた釋舎さんは、こう述べています。

シェアハウスに外国籍の方と一緒に住んでいて、みなさん日本語を話せるのですが、一緒にお酒などを飲んでいると英語をバーっと話し始める時があって、そういう時に英語の会話についていけなくてもどかしい気持ちがずっとあり、それがきっかけで英語を学びたいと思いました

1対1の会話では、相手の発話に注意を集中できます。相手の顔の動き、身振り、文脈から、聞き落とした単語を補完することも可能です。しかし、複数人が同時に、あるいは交互に発話する場面では、その余地が消えます。誰が何を言ったのか、誰の発言に対する応答なのか、そうした文脈の把握と、英語の聞き取りを同時に行わねばなりません。さらに、会議という場では、相手同士が「バーっと」話し始める瞬間があります。この状態を、1対1での「聞き取れる」という実感から予測することはできません。会議ではさらに、発言の途中で別の人が言葉を挟んだり、複数の同意や相づちが重なったりします。誰の発言を追うべきかを選びながら聞く、という作業が加わるのは、1対1にはない負荷です。

3人の崩れ方は、訛り・実速・複数話者と、それぞれ違います。だから「リスニング力を上げる」という漠然とした目標では、対策が定まりません。先にやるべきことは、自分がどの相手・どの条件で崩れているのかの特定です。次章では、会議という場が聞き取りをどう難しくしているのかを条件ごとに分解し、自分のタイプを診断できるようにします。

会議は聞き取りの最難関——崩れる4条件とセルフ診断

では、会議という場は何がそんなに特殊なのか。崩れる条件を分解して、自分のタイプを特定します。

英語の会議や商談に不安を感じる人は、仕事のために英語力を養いたいと考える回答者の中で6割を超えています。株式会社ECC「社会人の英語力に関する調査」(n=600、2026年2月20日〜3月2日)によると、調査対象は一般社員300名と管理職300名です。英語で会議や商談などの業務を行う際に不安や緊張を「強く感じる」「やや感じる」と答えた人は、一般社員62.0%、管理職66.0%でした。英語力不足で業務上困った経験がある人も、一般社員61.0%、管理職63.3%です。

この調査対象の範囲では、会議の英語に不安を抱える人は役職を問わず多数派でした。だからこそ、漠然と不安がるのではなく、自分がどの条件で崩れているのかを特定する価値があります。

会議が1対1より難しい4つの条件

1対1の会話になら追える相手でも、会議になると崩れるのは、複数の条件が同時に立ちはだかるためです。

条件1:実速と音のつながり

会議の英語は、教材やニュースの英語より速く流れます。それに加えて、単語の末尾と次の単語の頭がつながり、1語ずつ覚えた音とは別の音になって耳に届きます。教材の音声は単語の区切りが分かりやすい状態で録音されていますが、実際の会議では、このつながりが文のあちこちで起きています。

冒頭でご紹介した自動車メーカーで開発をしていた方が突き止めた原因も、まさにこの音のつながり(ワードコネクション)でした。単語そのものは知っているのに、実際の会話では音が消えて聞こえ、意味が組み立ちません。知識の問題ではなく、耳がそのルールをまだ知らないという状態です。

条件2:複数話者

1対1なら、相手は自分のペースに合わせて速度を調整してくれることがあります。「分かります?」と確認してくれたり、ゆっくり繰り返してくれたり。しかし会議では、誰も待ってくれません。話者が替わるたびに、声・癖・話すテンポが完全にリセットされます。声の低さ・高さ、滑舌の速さ、強調するポイントまで変わります。その度に「この人は何を言ってるのか」を一から処理し直すことになります。

前章の薬剤師をしていた方が語っていたのも、この構造です。1対1では成立していたやりとりが、相手同士が話し始めた瞬間に置いていかれます。会議では、これが議題が変わるたびに起きます。

条件3:訛りの多様性

会議に参加するのは、ネイティブだけではありません。インド英語、シンガポール英語、フィリピン英語、フランス人の英語、ドイツ人の英語——各国の非ネイティブが混ざり合う場です。同じ「英語」でも、その国で育った人の英語は、全く別の音に聞こえることがあります。

イギリス駐在のTさんが会議で聞き取りづらさを感じたのも、非ネイティブの訛りでした。これは相手の英語の問題ではなく、自分の耳がそのアクセントにまだ慣れていないという話です。教材の整った英語に慣れた耳にとって、多様なアクセントはいつまでも「初めて聞く音」のままになります。

条件4:音質

対面なら、相手の口の動き・表情・身振りが情報になります。口がどう動いているかを見ると、同じ音でも「あ、そういう音か」と理解が深まります。電話やカメラオフのオンライン会議では、頼れるのは主に音の情報です。カメラオンでも、画面越しでは口元の細かな動きや身振りを対面と同じようには捉えきれません。通信状況による音切れやノイズが重なることもあります。視覚情報が限られ、音質も不安定な環境では、対面より聞き取りづらくなります。

これら4つが、1対1ではほぼ起きない条件です。でも会議では、複数が同時に立ちはだかります。

3人の「聞き取れない」を見てみると、実は3つの異なる問題でした。Tさんは非ネイティブの訛りで崩れ、薬剤師は複数話者の切り替わりで崩れ、開発者はワードコネクション(実速の音のつながり)で崩れていた。つまり「リスニング力を上げる」という漠然とした目標は対策にならず、自分がどの条件で崩れるのかの特定が先になります。

セルフ診断. あなたはどの条件で崩れるか

以下の5問から、自分がどのタイプで崩れるのかを確認してください。複数当てはまる場合は、最も「あ、これだ」と感じた項目を選んでください。

Q1:1対1なら聞き取れるが、相手同士が話し始めると消える → あなたは「複数話者タイプ」です。1対1では成立するペース調整や、相手の繰り返しが、複数人になると機能しなくなるのが問題です。最初は追えていても、3人目の話者が出てきた時点で「もう無理」という感覚になりませんか。その瞬間が、複数話者タイプの崩れる瞬間です。

Q2:教材やニュースの英語は分かるが、会議の生の英語は分からない → あなたは「実速・音のつながりタイプ」です。スピードと音の変化が、あなたの耳を置き去りにしています。TOEICのリスニングなら取れるのに、会議では通用しません。その落差が、このタイプの特徴です。

Q3:特定の国・特定の人の英語だけ極端に聞き取れない → あなたは「訛りタイプ」です。その国やその人の音に、まだ耳が慣れていない状態です。「ネイティブなら聞こえるのに」と思いがちですが、そのアクセントに触れた時間が少ないだけ、という場合が多いのです。

Q4:対面なら追えるが、電話・オンラインになると崩れる → あなたは「音質タイプ」です。視覚情報が、あなたの理解を支えていたことに気づいています。オンライン会議で画面を見ながらなら何とかなるけれど、電話だと「何言ってるのか全く分からない」という感じではないでしょうか。

Q5:単語は聞こえているのに、文になると意味が組み立たない【該当外:意味処理タイプ】 音の聞き取りというより、聞こえた単語から意味を組み立てる処理の速さの問題です。この記事の4条件とは別の対策になるため、聞き取り一般の記事の診断で確認してください。

特定できれば、その場のしのぎ方も変わる

会議中に聞き取れなかった箇所をゼロにする魔法のような方法は、残念ながらありません。ただし、崩れる条件が特定できていれば、事前に打てる手と、その場で確認していい箇所の判断が大きく変わります。

  1. 訛りタイプの場合:会議の前に参加者がどの国の話者かを把握し、その国の英語の音源を数日間聞いておく。YouTubeでその国の人のインタビュー動画を探して、耳を慣らしておくだけでも効きます。
  2. 複数話者タイプの場合:議題と使われる語彙を事前に押さえておく。何について話すのか分かっていれば、新しい話者が出てきても「この話は〇〇の話題だから」と推測の幅が狭まります。
  3. 音質タイプの場合:音質の悪い定例会議では、社内ルールに沿って録画・AI文字起こしを利用するか、メモ役を置く。その場で分からなかった部分を、会議後に確認できる環境を作ります。
  4. 実速タイプの場合:会議前に議題の資料を読むだけでなく、関連する英語音声を実速で聞いておく。話題と語彙が頭に入っていれば、速さに置いていかれても復帰しやすくなります。

聞き取れなかった時に「何を聞き返していいか」の判断も、タイプによって変わります。複数話者で崩れているなら、その瞬間の議論の流れ(「今何について話してますか?」)を確認することが正当な確認になります。一方、訛りで崩れているなら、その人が何度か話す機会を待ってから個別に聞き返す方が効率的です。直後に聞き返すより、その人のアクセントに耳が慣れる方が、理解が深まることもあります。

会議全体の立て直しや、いつ発言に入るかというタイミングの話については、別の記事に譲ります。

タイプが見えたら、次は実例です。「英語ができない方」と言われていた開発者が、原因を特定して動いた記録を見ます。

実録——「英語を何とかしないと」と言われ続けた開発者が、苦手の理由を特定するまで

この章では、聞き取れない状態から抜け出した1人を時系列で辿ります。背景・制約・転機・行動・成果が、本人の言葉で残っています。

英語が日常の職場で「できない方」だった

自動車メーカーで開発をしていた方の職歴は、明確でした。「これまで約10年間、自動車メーカーでハイブリッドシステムに関する開発を行ってきました」。その仕事の中に、英語が避けられない環境がありました。「仕事の中に、ドイツにある拠点と共同で行う仕事があります。そのため日常的に英語は使っています」。

ところが、英語を使う環境にいながら、自分だけ聞き取れていませんでした。「ただ、所属している部の中で、私は英語ができない方です。上司からも常々、お前は英語を何とかしないとならないぞ、と言われています(笑)。」。

上司の言葉は指摘であり、同時に焦りでもありました。聞き取れない状態は、日々の仕事の中で目に見えていました。だからこそ、対策が必要だと誰もが知っていました。

ところが現実は、対策を後回しにさせるほど忙しかった。「正直言いますと、仕事が忙しくて語学学校を探す時間がありませんでした」。

英語が要ると分かっていながら、忙しさで対策が後回しになる——多くの読者と同じ状態から、この方は始めています。特別に時間の余裕があった人の話ではない、という点は先に押さえておきたいところです。

原因が分かった瞬間、対策が決まった

転機は、発音のレッスンにありました。ここが、重要な分岐点です。

あとは発音のレッスンが良かったです。普段リスニングに苦戦する発音、特に僕の場合はワードコネクションだったのですが、授業内でリクエストしたところ即対応してくださり、自分がこれまで苦手だった理由などがはっきりと分かりました。

「聞き取れない」という漠然とした悩みが、ワードコネクション——単語がつながって別の音になる現象——という具体的な原因に変わったのです。知らない単語だから聞こえない、のではなく、知っている単語が音で消えていたから聞こえなかった。理由が分かった瞬間に、やるべき対策も決まりました。

実速の英語に、計画的に触れ続けた

原因を特定したこの方は、次に実速の訓練へ進んでいます。

こう述べています。

次にマルチメディアリスニングのレッスンですが、ネイティブスピーカーの話すスピードに近い、普段苦手で敬遠しているものに、いい意味でトライさせられたのが良かったです

これは重要な設計の選択です。これまで敬遠していた実速の英語に、苦手だからこそ計画的に触れ続けることにしました。聞き取れないから避けるのではなく、聞き取れないからこそ触れます。その量と質を管理されながら。

成果は、実感だけではなく、測定された数字として現れました。

「すごく感じられました。入学前のテストと卒業時のテストを比較したときに、4技能すべてでしっかり点数が上がっていました」。

伸びの確認を「実感」ではなくテストの前後比較で行っている点も、ここから持ち帰れる部分です。聞き取りの訓練は、やっている本人ほど変化を感じにくい時期があります。始める前に自分の現在地を測っておき、一定期間後に同じ物差しで測り直す。数字で前後を比べられる状態にしておくと、実感が薄い時期にも訓練を止めずに済みます。

完全に聞き取れるようになった、という表現ではありません。でも、測定可能な伸び——4技能すべてで確実に上がっている——が、あります。

なぜ「原因の特定」が効くのか

ここから見えるのは、「聞き取れない」を放置すると漠然とした自己否定になるが、原因は特定できるということです。

原因が「音のつながり」なら知識で潰します。実速が課題なら計画的な曝露で潰します。訛りがネックなら、その国のスピーカーの音に慣れることで潰します。ここが決定的な違いです。原因が分からないと、シャドーイングもディクテーションも「闇雲な訓練」のままです。でも原因が分かった瞬間に、やることが決まります。時間と努力の使い方が全く変わるのです。

あなたがやるなら、3つの手順から始める

では、自分の会議で聞き取れなかった箇所がある場合、何から始めるか。

まず、聞き取れなかった箇所を音声とスクリプト(文字)で突き合わせます。知らない単語だったためか、知っている単語でも音がつながったり変化したりしたためかを仕分けます。この違いが、その後の対策を左右します。

もし消えているなら、音のつながりのルールを知ること、そして自分でもその音を発音してみることから始めます。発音できる音は聞き取りやすくなります。追いつかないなら、実速に触れる量を段階的に増やしていきます。いきなり生のネイティブ会議ではなく、段階を踏んで。

そして、自分では仕分けられない場合があります。「あの音が何を言ったのか、分からない」という時です。そういう時は、指摘してくれる相手——レッスンの講師でも、練習相手でも——に「苦手の理由を特定してほしい」とリクエストします。自分の耳では気づけないパターンもあるからです。

条件が分かったら、次は訓練の設計です。

条件別の耳作り——音のつながり・実速・訛り、そして会議形式で仕上げる

原因の特定から先の訓練は、条件ごとに違う。聞き取れない相手と条件が分かれば、その場所だけを潰しに行く訓練を計画できます。ここでは、実際に越えた人たちの実録から、3つの訓練パターンを見ていきます。

訓練1. 音のつながりを知る

聞き取れた単語を合わせても、意味が組み立たない経験はないでしょうか。その理由は、「単語を知らない」ことではなく、「知っている単語が音で消えている」ことにあります。

自動車メーカーで開発をしていた方は、ワードコネクション——単語同士がつながって別の音に変わる現象——が自分のリスニングを止めていたことに気づきました。この発見の経緯は前章で見たとおりです。音のつながりのルールを知った瞬間、聞こえ方が変わったのです。

なぜこの訓練が効くのか。実速の会議では、「know about」が「na-bao」に聞こえ、「did you」が「didja」に変わります。これらは「音が消えた」のではなく、音が変化・融合しているのです。知らない単語だから聞こえないのではなく、知っている単語が別の音に変わっているから、聞き取れなくなっています。この違いに気づくことが、訓練の出発点です。

あなたがやるなら、まずは聞き取れなかった箇所を、文字起こしと突き合わせて仕分けてください。「単語を知らなかったから」と「単語は知っているのに音が変わっていたから」の2つに分けるのです。音が変わっていた箇所が見えたら、その部分の音の変化を何度も確認し、自分でも発音してみてください。発音できる音は、聞き取りやすくなります。この理論と具体的な訓練についてさらに詳しく知りたい場合は、発音と音の知識から聞こえ方が変わる原理の記事を参照してください。

訓練2. 実速と訛りに耳を慣らす

教材の英語だけでは、会議の英語の速度に追いつきません。加えて、訛りのある英語に耳が慣れていないと、多様な相手が混在する会議で置き去りになります。段階を踏むことが、このギャップを埋めます。

同じ開発者の方は、「ネイティブスピーカーの話すスピードに近い、普段苦手で敬遠しているものに、いい意味でトライさせられたのが良かったです」と述べています。一気に実速に向き合うのではなく、計画的に、段階を踏んで耳を作ることが有効です。

第1章で見た投資家の田口さんの判断——聞き取りやすい相手から始めて段階的に難度を上げる——も、この訓練の組み方と同じ方向を向いています。実速と訛りのどちらにも、段階の設計が効きます。

さらに、航空業界を目指す海外出身の受講者の方は、こう述べています。「将来仕事で様々な人と関わる時に、ネイティブに人を対応するとは限らないので、フィリピンに来て異なるアクセントに慣れることも重要だと思いました」。会議では、ネイティブスピーカーだけが相手ではありません。各国の非ネイティブが混在する環境で、どの訛りにも対応できる耳を作ることが、実践的です。

なぜこの訓練が効くのか。耳は聞いた音にしか慣れません。教材の綺麗な英語だけ聞いていると、実速と訛りは永遠に「例外」のまま残ります。崩れる相手の音に計画的に触れない限り、本番の会議で急に聞こえるようにはなりません。段階を踏むことで、次のレベルの音が「新しい音」ではなく「聞いたことのある音」に変わるのです。

あなたがやるなら、いま崩れている相手に近い音源を特定してください。その国のスピーカーの動画、実際の会議の録画など、自分の相手に最も近い英語を教材に選ぶのです。次に、毎日の勉強時間を段階設定しましょう。聞き取りやすい英語→実速→訛り、の順番で、1週間の中で耳を鍛えていきます。さらに、1対1で速度調整できる練習相手がいるなら「実速でやってほしい」とリクエストして、自分を本番に近づけてください。

訓練3. 会議形式で仕上げる

音のつながりを知り、実速と訛りに耳を慣らしても、会議で通用するとは限りません。会議は、複数話者・議題の急展開・専門用語が同時に来る総合種目。素材単位の訓練を積んだ耳を、会議形式で実装する段階が必要です。

商社で病院の経営をサポートするコンサルタントの小出さんは、実践形式の重要性を語っています。

プレゼンテーション・ディスカッション・テレカンファレンスなど現場でそのまま使えるような事が学べたことが特によかったです

さらに、「ディスカッションなど本番に近い環境で練習できたことで、実践的な学習が出来ました」と述べています。

外資系製薬関連の綿谷さんも、ミーティングに特化した訓練を受けました。「レッスンでフォーカスしたのはミーティング、ソーシャリゼーション、メール、プレゼンテーションでした。特にミーティングについては、今後世界各地の方と行う可能性が高いので、その際に役立つ授業を受けることができてとても満足しています」。会議という場に特化した訓練を、明確に組んだのです。

なぜこの訓練が効くのか。会議の聞き取りは、単語を聞き取る力だけでは不十分です。複数の話者が話す中で「誰が何を言ったのか」を追い、議論の流れを理解し、自分の発言のタイミングを計る。これらは素材単位の訓練では作られません。本番に最も近い形式で、初めて対応できるようになります。

あなたがやるなら、まずは自分の実際の議題で模擬会議やロールプレイの機会を作ってください。テーマは、これから出る会議と同じものです。次に、直近に参加した会議の録画や録音を教材にして「どこで崩れたか」を特定します。一語ずつ聞き直すのではなく、「この部分で置き去りになった」という箇所を洗い出す。最後に、崩れた箇所を訓練1(音のつながり)や訓練2(実速・訛り)に戻して、その部分だけを潰しに行く。この循環が、会議形式の訓練です。

この設計で動いた人たちが、いまどこにいるのか。最後に並べます。

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「聞き取れない」から「会議で使える」へ——いまどこにいるか

この設計で動いた人たちが、いまどこにいるのかを並べます。

誰も「全部聞き取れるようになった」とは言っていません。全員が、崩れる条件を特定し、自分の会議に向かって耳を作り続けています。

会議が使える場に変わった人たち

製薬会社勤務の下山さんは、「私は45歳の時に本格的に英語学習を始めました」と語る人です。勤務先について「弊社の海外事業が世界中に広がり、現在では、海外での売上が半分を超えていますので、社内での英語の使用頻度は増えています」と説明するとおり、英語から逃げられない環境で学び続け、「現在では、日々のメールや電話会議の中でも英語を使える様になり、『始めることに遅すぎることはない』と強く信じています」と述べています。口元の見えない電話会議は、この記事で見てきた条件の中でも難度の高い場面です。その場面が「使える場」に変わったという記録が、まず事実としてここにあります。

会計システム会社のCTOの方は、「世界の舞台で英語を使って、自分の考えた製品のプレゼンテーションをする」ことを目標に学び直しを決めた人です。セブ島での2週間で英語を話すことへの抵抗感が消え、大勢の前でのプレゼンに自信がついたと記しています。同時に、「先生は皆優秀で頭の回転が非常に早く、中にはディベートしたら一生論破できないのではないか?と思う程の先生もいました。英語の発音も大変綺麗なので聞き取りやすく、物凄く充実したレッスンでした」と述べています。聞き取りが進む土台になっていたのは、相手の英語が「聞き取りやすい」環境だったことです。そこから実速・訛り・複数話者の段階へ進んでいく——第4章で見た段階の設計と同じ順序です。

経営サポートの宇田川さんは、現在国内グループ会社を担当していますが、英語が上達すれば海外企業を担当する道が開ける立場にいます。継続学習について、「まだ全然物足りないですけど、やり始めたタイミングよりかは慣れてきたと思います。コミュニケーションも聞き取りも以前よりできるようになった実感はあります」と語っています。「まだ全然物足りない」という言い方は、完成への焦りではなく、いまの自分に足りない条件を知っているという自己認識です。自分の聞き取りが崩れる場面を知っているから、その場面への準備を意識的に続けられるのです。

前進の実感と物足りなさが同じ言葉の中に同居している——これは、訓練が進んでいる人の自己評価としてよく出てくる形です。できるようになった部分が増えるほど、次にどの場面が聞き取れないかもはっきりしてきます。物足りなさは停滞の印ではなく、現在地が細かく見えるようになった印です。

薬剤師をしていた方は、相手同士が一斉に話し始めた瞬間についていけなくなる、もどかしい経験から学び直しを決めた人です。複数話者という条件で崩れることを、始める前から自覚していました。その後の学習を通じて、複数人が同時に話す場面での耳の作り方を段階的に体験していきます。

イギリス駐在のTさんは、「プライベートでのネイティブのスピーキングは独特で、ローカルの友人たちの話についていけないことがあるので、しっかり聞き取れるようになることと自分の意見をスムーズに言えるようになることが目標」と述べています。駐在先で日常的に英語を使いながら、なお進行形で課題を設定し続けているのです。

5人に共通していること

5人に共通する点は、「完成」の地点を目指していないということです。下山さんは電話会議が使える場に変わり、宇田川さんは聞き取りの前進を実感しながら「まだ全然物足りない」と次の段階を見ています。誰も「ここまでで完成」とは言っていません。その代わり、全員が「この条件なら聞き取れる、この条件はまだ」という自分の現在地を言えるようになっています。下山さんの「始めることに遅すぎることはない」も、宇田川さんの「まだ全然物足りない」も、Tさんの「しっかり聞き取れるようになることが目標」も、完成の宣言ではなく、現在地の言葉です。そしてこの現在地が言えること自体が、「英語が聞き取れない」とだけ感じていた頃からの大きな変化です。条件を特定し、その条件の音に繰り返し触れる——この積み重ねの先にあるのは完璧な聞き取りではなく、聞き取れない場面が来ても、次に何をすればいいかが分かっている状態です。

最後に、今日からの手順を整理します。

まとめ|「聞き取れない」は相手と条件を特定すれば、潰しに行ける

英語の会議で聞き取れないのは、リスニング力という一本の能力の不足ではなく、相手と条件——実速・音のつながり・訛り・音質——で崩れている、ということが当事者の言葉から見えました。

だとすれば、やることは4つです。①崩れた会議を振り返り、どの相手・どの条件で聞き取れなくなったのかを書き出す。②診断で自分のタイプを特定する。③その条件に合わせて、音のつながりの知識や、段階的な音源での耳作りを進める。④作った耳を、会議形式の練習で仕上げる。

この記事に登場した人たちは、誰も「完全に聞き取れるようになった」とは言っていません。全員が、崩れる条件を特定し、自分の会議に登場する相手から順に、耳を作り足し続けています。「全部聞き取る」という完成を目指すのではなく、次の会議の相手から始める。それが、共通していた順序です。

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