英語とキャリア|いま手をつけるべきかは、仕事の変わり目で決まる
英語はいつかやらないといけない。そう思いながら、何年も後回しにしてきた。求人票の「英語力必須」を見て一度は焦り、いまの仕事が忙しいうちにまた元へ戻る。やる理由もやらない理由も同じだけ並ぶので、着手する日が決まらない——そんな経験はないでしょうか。
「英語 キャリア」と検索すると、英語ができると就ける職種や、市場価値がどう上がるかという話が並びます。ただ、本当に知りたいのは、自分がいま英語に手をつけるべきなのか、つけるとしたら何からか、ではないでしょうか。
ホテルで働いていた鈴木さんは、勤務中に外国人のお客様から「あなたとはコミュニケーションが取れない」と言われた悔しさをきっかけに動き出しました。30年勤めた会社を辞めた北野さんは、次に代表になるか起業するかを考えるなかで、英語が必要不可欠だと判断しました。
いずれも、英語コーチングスクール・ミライズの受講者です。この記事では、英語が必要になる3つのタイミングに分けて、それぞれ何から手をつけるかをお伝えします。
英語とキャリアの話は、なぜ何年も後回しになるのか
英語の必要性は感じているのに、着手だけが先延ばしになる。その理由は、必要になる瞬間が予告なく来るからです。
職場に英語が入ってくる速度は、思っているより速く進んでいます。労働政策研究・研修機構(JILPT)の「グローバル人材の採用と育成」調査(対象は海外に営業拠点や資本・人的関係を持つ企業10,000社/回答776社/2021年6〜8月)では、外国人を正社員として雇う企業が41.2%にのぼりました。
海外に拠点を持つ会社の4割超が、すでに外国籍の社員と一緒に働いています。自分の職場が今日そうでなくても、数年後に同じ状況になる可能性は小さくありません。
同じ調査では、外国人を雇用する理由の1位が「新たな視点からのイノベーション」(56.0%)、2位が「人手不足の解消」(42.0%)でした。事業拡大と人手不足という、どちらも当面なくならない事情が背景にあります。
必要になってからでは、準備の時間が残っていない
問題は、その瞬間が来たときに使える時間です。例えば、メーカーで製品開発をしている方は、ここ2〜3年で海外のお客様相手の出張が月に一度まで増えました。異動や昇進の辞令から実際の打ち合わせまでは、数週間しかないこともあります。
英語のスコアを上げる勉強は、何ヶ月もかけて積み上げるものです。一方、必要になってから確保できるのは数日から数週間です。この差が、後回しにした人を追い込みます。
しかも、その数週間は通常業務と並行することになります。引き継ぎや挨拶回りが重なる時期に、まとまった学習時間を作るのは現実的ではありません。その結果として、準備が足りないまま本番を迎えることになりがちです。
「いつかやる」と思っている間は、締め切りがありません。締め切りがないものは、目の前の仕事に押し出されて、何年でも後ろにずれていきます。
もう一つの理由は、必要性の感じ方に波があることです。海外案件が動いているときは切実に感じても、その案件が終われば急ぐ理由はなくなります。波が引いたタイミングで学習も止まり、次に波が来たときにはまた同じ地点から始めることになります。
例えば、四半期に一度だけ海外との会議がある職場では、会議の直前に焦って準備し、終われば忘れる、という周期を繰り返しがちです。この周期を何年か回すと、時間は使っているのに実力は積み上がっていない状態になります。
この2つが重なると、「必要性は感じているのに着手していない」という状態が固定します。意志の問題ではなく、締め切りのなさと波の存在が原因です。
裏を返せば、締め切りと必要性がはっきりした瞬間に着手できれば、この固定は解けます。自分にとっての締め切りがどこにあるのかを、いま確かめておく価値があります。
だからこそ、いま自分がどのタイミングにいるかを先に見極める必要があります。 どれに当てはまるかが分かれば、着手すべきかどうかも、何から始めるかも決まります。
では、自分はいま手をつけるべきなのか。3つのタイミングに分けて考えます。
英語が必要になる3つのタイミング
英語が必要になる場面は、大きく3つに分けられます。タイミングによって、必要な英語も、かけられる時間も違います。
同じ「英語を勉強する」でも、来週の商談に間に合わせるのと、半年後の異動に備えるのとでは、やるべきことが変わります。まず自分がどこにいるかを決めてください。
どれに当てはまるかを決めずに始めると、教材選びから入ることになります。書店やアプリで評判の良いものを選び、最初の数十ページだけ進んで止まる。この進み方だと、自分の仕事で使う場面にたどり着く前に力尽きます。
例えば、来週に海外の取引先と打ち合わせがある人が、文法書の1章から始めても間に合いません。逆に、まだ英語を使う予定がない人が商談フレーズだけ覚えても、使う前に忘れます。同じ教材でも、タイミングが違えば効果はまったく変わります。
3つのタイミングの早見表
| タイミング | あなたの状態 | 使える時間 |
|---|---|---|
| ① いま困っている | 目の前の仕事で英語ができず、すでに機会を逃している | ほとんどない |
| ② 任される範囲が広がった | 自分で完結させる立場になった。駐在や出張の可能性が出てきた | 数ヶ月 |
| ③ 次に備える | いますぐ必須ではないが、転職・異動・独立を考えている | まとまって取れる |
診断:直近半年で、英語ができずに困った場面がありましたか。この1〜2年で、任される範囲や役割が変わりましたか。転職・異動・独立など、次のキャリアを具体的に考えていますか。
- 1つ目に「はい」 → ①いま困っている
- 2つ目に「はい」 → ②任される範囲が広がった
- 3つ目だけ「はい」 → ③次に備える
複数当てはまる場合は、番号が小さい方を優先してください。すでに困っている状態を放置したまま先の準備をしても、効果を実感しにくくなります。
状況が変われば、必要な英語も変わる
3つのタイミングは、急ぎ度合いだけでなく、必要な英語の種類も違います。
- ①いま困っている:いま起きている場面への対応なので、決まった相手・決まった話題に絞れます
- ②任される範囲が広がった:これから任される仕事なので、想定される場面を先回りして準備することになります
- ③次に備える:行き先が確定していないぶん、どの道でも使える土台を広げる時期です
この違いを踏まえずに同じ教材を使うと、いま必要な英語にたどり着きません。どれに当てはまるかを先に決めることが、教材選びよりも先に来ます。
ここから先は3つのタイミングをそれぞれ見ていきますので、自分に当てはまる番号の章から読んでいただいて構いません。どのタイミングにも、実際にその状態から動いた人がいます。自分と近い状況の人がどう判断したかを見ると、次の一歩が決めやすくなります。
なお、この3つは固定されたものではありません。いまは③でも、異動が決まれば②になり、着任すれば①になります。いま自分がどこにいるかを確かめる作業は、一度きりではなく節目ごとに繰り返すものです。
状況が変われば、やるべきことも変わります。半年前に決めた学習計画が、いまの自分の状況にそのまま合っているとは限りません。節目ごとに見直してください。
まず、すでに目の前の仕事で困っている場合から見ていきます。
タイミング1 いま目の前の仕事で困っている
すでに困っているなら、迷う必要はありません。その困った場面が、そのまま最優先の教材になります。このタイミングの強みは、必要な英語が具体的に特定できることです。「英語を話せるようになりたい」という漠然とした目標と違い、どの場面で何が言えなかったかがはっきりしています。
「あなたとはコミュニケーションが取れない」と言われた
不動産業界からホテル業界へ転職した鈴木さんは、平日はテーブルサービスとバーテンダー、土日は結婚式場で中間マネジメントを担当していました。きっかけは、ホテル勤務中の出来事でした。外国人のお客様から「あなたとはコミュニケーションが取れない」と言われたのです。
「あの時ほど悔しかったことは過去にありません」と振り返っています。この一言が、すぐに英語学習を始めたいと感じた理由になりました。
接客の現場では、その場で対応できなければ機会は消えます。後から勉強して次に活かす、という猶予がありません。
経営者でも、同じ壁にぶつかる
建設会社を経営する今西さんも、似た経験をしています。スイスで開かれたファミリービジネスのセミナーに参加したときのことです。すべて英語で行われる環境のなかで、内容を理解しきれない場面がありました。こう話しています。
発音が原因で伝わらないことがあり、とても悔しい思いをしました
立場や役職に関係なく、英語が必要な場に入れば同じ壁にぶつかります。むしろ決裁権を持つ立場ほど、自分の代わりに答えてくれる人がいません。
困った場面を書き出すことから始める
このタイミングでやるべきことは、教材を探すことではありません。自分が困った場面を、具体的に書き出すことです。誰と、どんな話をしていて、何が言えなかったのか。この3つが書き出せれば、必要な英語は絞り込めます。
例えば、接客なら「料理の内容を説明する」「アレルギーの有無を確認する」といった具体的な場面になります。会議なら「相手の質問を確認し直す」「自分の意見を短く述べる」になります。場面が違えば、練習すべき表現も変わります。
書き出すときは、うまく言えなかった日本語をそのまま書いて構いません。英語に直すのは後です。まず、何を伝えたかったのかをはっきりさせます。
この作業をすると、必要な表現が思ったより少ないことに気づく場合もあります。困る場面は繰り返し起きるものが多く、同じ型を何度も使うためです。
書き出した場面が3つ揃えば、そこが最初に練習する場面になります。全部をひととおりやろうとするより、この3つを口に出して言えるようにする方が、次に同じ場面が来たときの結果が変わります。
困っている状態は苦しいものですが、必要な英語が特定できているという点では、3つのタイミングのなかで最も的を絞りやすい状態でもあります。何を勉強すべきか迷わずに済むのは、このタイミングの数少ない利点です。次に、まだ大きく困ってはいないが、任される範囲が変わってきた場合を見ます。
タイミング2 任される範囲が広がった
まだ致命的に困ってはいない。ただ、以前より英語が視界に入るようになった。この段階が、英語に着手する現実的なタイミングです。理由は単純で、まだ数ヶ月の猶予があるからです。困ってから始めるより、条件がはるかに良い状態にあります。
自分で完結させる立場になると、頼れる人がいなくなる
メーカーで製品開発をしている方は、これまで日本で日本人と仕事をすることが多かったといいます。それがここ2〜3年で、海外のお客様相手の出張が増えました。留学を決めた理由を、こう話しています。
年齢的に自分で打ち合わせに行って自分で仕事を完了しないといけない状況だったので、どこかで英語を勉強しないといけないなと思い
出張の頻度は月に一度ほど。先月はインドネシア、翌週にはフィリピンへ行く予定でした。今の部署の仕事次第では、海外駐在になる可能性もあるといいます。
役割が上がると、通訳や同行者に頼る前提が崩れます。若手のうちは上司が補ってくれた場面も、自分が責任者になれば自分で処理することになります。
しかもこの変化は、辞令が出た日に一度に来るわけではありません。出張が増える、会議に呼ばれる、メールの宛先に入る、と少しずつ進みます。気づいたときには、英語が前提の仕事が日常になっています。
海外勤務が決まってから壁にぶつかることもある
シンガポールの日系IT企業でプロダクトマネジメントの佐藤さんは、英語ができない状態で海外就職をしました。採用について、こう話しています。
私の場合英語力は必要最低限あれば問題なかったです。それよりも実務経験やマッチングを重視している印象でした。英語力は後からでも伸びてくるからじゃないですかね?
つまり、英語ができなくても海外のポジションに就くことはあります。ただし、その後に壁が来ます。実務が始まってから、現地メンバーとの調整で英語が必要になるのです。
次の異動先で、言語が変わることもある
電線メーカーで購買を担当する廣井さんは、中国の上海で6年間駐在していました。
上海では日本語で通ることが多かったといいます。ただ、日本の本社に戻ることになり、状況が変わりました。会社はアメリカ、南米、ヨーロッパ、アセアン、中東アフリカなど世界各地に拠点を持っています。こう話しています。
中国の拠点では日本語で通ることが多かったのですが、中国以外の拠点だと英語の使用頻度が多いので、これからは英語を習得しないといけないですね
海外経験があることと、英語が使えることは別です。赴任先が変われば、必要な言語も変わります。
一段先の役割を想定して準備する
このタイミングでやるべきことは、いま任されている範囲ではなく、その一段先を想定することです。半年後・1年後に自分が任されていそうな仕事を思い浮かべてください。そこに英語が関わるなら、いまが準備の時期です。
最後に、いますぐ英語が必須ではないが、次のキャリアを考えている場合です。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約するタイミング3 次のキャリアに備える
いますぐ英語が必要なわけではない。この状態の人ほど、後回しにしがちです。ただ、この時期こそ、まとまった時間を英語に使えます。 転職の合間、異動の前、独立の準備期間。キャリアの区切りには、普段は取れない時間が生まれます。
30年勤めた会社を辞めて、次を決める前に
米国系の眼科医療系の会社に約30年勤務し、営業責任者をしていた北野さんは、退職後に9週間の留学をしました。次のキャリアとして、外資系企業の日本法人の代表になるか、自分で会社を立ち上げるかを考えていたといいます。こう話しています。
日本法人の社長になる場合、また自身で会社を作る場合においても、これからの顧客は日本人だけでなく、海外の人と関わることが必要だと思いました。自分のこれからのキャリアにおいてさらに英語力は必要不可欠なものです
次に何をするかが完全に決まる前から、どちらの道でも英語が要ると判断して動いています。
「次の会社では強く求められない」のに投資した人
銀行で金融商品の営業に携わる方は、海外の大学を卒業後、外資の証券会社に就職し、転職を経て現在に至ります。転職期間を機に留学を決めました。この方は、次の職場では英語がそこまで求められないと分かったうえで留学しています。こう話しています。
次の会社では外資系と言いつつも、英語をそこまで要求されるわけではないですが、著しいグローバル化の中で、かつてパソコンを使えない人が淘汰されたように、英語を話すということが将来当たり前になると感じるんですよね
目の前の必要性ではなく、その先を見て時間を使った例です。
職種を変えるために英語を用意する
自営業で不動産の仕事をしている方は、もともと人材紹介会社のサラリーマンでした。副業と掛け持ちしたのち、会社を辞めて留学に来ています。今後については、こう話しています。
今後は英語を使う、何か全く別のお仕事をやれたらなと思っています
いまの仕事で英語が要るのではなく、英語を持っていることで選べる仕事を増やすという発想です。
社会人になる前から準備する人もいる
働き始める前の段階で動く人もいます。大学5年の吉岡さんは、ケニアでNGOの駐在員として国際協力に携わった経験を持ち、イギリスに本社のある外資コンサルティングファームへの就職が決まっていました。「キャリア上英語は必要だった」と話し、就職前の春休みにビジネス英語を学びに来ています。
台湾の大学を卒業したばかりの別の方も、「就職前に英語力を磨くためにミライズ留学にきました」と話しています。
この2人は学生で、社会人とは事情が違います。ただ、キャリアが始まる前や区切りの時期に時間を使うという考え方は共通しています。
いま時間があるなら、それが理由になる
このタイミングでやるべきことは、必要性を探すことではありません。時間が取れるという事実を、そのまま着手の理由にすることです。転職・異動・独立の予定があるなら、その前後に英語へ使える時間がどれだけあるかを確認してください。必要になってからでは、その時間はもう取れません。
まとめ|英語がキャリアに効くかは、いつ手をつけるかで決まる
英語がキャリアに効くかどうかは、英語力の高さではなく、自分のタイミングに合った英語から手をつけられたかで決まります。
すでに困っているなら、その場面をそのまま教材にする。任される範囲が広がったなら、一段先を想定して準備する。次に備える段階なら、時間があるいまに使う。
3つのうち自分がどこにいるかを決めることが、最初の一歩になります。タイミングが決まれば、やるべきことは1つに絞れます。
どのタイミングでも共通するのは、必要になってから始めると時間が足りないことです。いま自分がどこにいるかを確かめるところから始まります。
英語をキャリアに効かせている人は、特別な学習法を見つけた人ではありません。自分のタイミングに合ったところから始めて、続けた人です。
