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英語がとっさに出てこない|完璧な英文を組み立てるより、まず口を動かすことを優先する

スピーキング

相手の英語は聞き取れている。返す言葉も頭に浮かんでいる。それなのに、いざ返そうとすると「え、今すぐ?」と心の中で戸惑い、口が開かない。

会議で質問されたとき。営業先で質問を受けたとき。同僚と雑談しているとき。そうした「準備できない瞬間」に、英語が出てこない。その数秒の沈黙が怖くなり、いつの間にか発言を避けるようになっていないでしょうか。

「英語 とっさに出てこない」と検索すると、「瞬間英作文をやる」「シャドーイングに取り組む」「スピーキング練習を増やす」といった方法が数多く紹介されています。

けれど、本当に知りたいのは、そこではないはずです。同じ悩みを抱えていた人が、実際に変われたのか。何がきっかけで変わったのか。準備できない場面でも言葉が出る人は、何を知り、どのような練習をしたのか。その肝心な部分が、なかなか見えてきません。

フリーランスのイベント・撮影コーディネーターとして働く清水さんは、頭の中に英文が浮かばない状態から、伝えたいことを英語で表現できるようになったと語っています。

英語講師から商社へ転職したAIさんは、レッスン中に講師の反応や切り返しを観察し、真似する練習を重ねました。その結果、とっさの会話にも自然に対応できるようになったと話しています。2人とも、もともと特別なスキルを持っていたわけではありません。

2人はいずれも、英語コーチングスクール・ミライズの受講者です。公式サイトには、200件以上の体験談が本人の言葉で公開されています。その中には、「とっさに英語が出てこない」という悩みを抱えていた人の体験談も数多くあります。

この記事では、準備できない場面で英語が出てこない理由と、そこから変わるまでの実際のプロセスを、受講者本人の言葉をもとに整理します。

準備時間があるか、ないかで、話す力は全く別のスキルになる

とっさに出ない」という言葉の裏には、実は2つの異なる状況があります。1つは「準備する時間があればできる」場合。もう1つは「時間があってもできない」場合です。この記事で扱うのは前者です。この違いを理解することが、実務ですぐに答える力を身につける第一歩になります。

ビジネスシーンでの「準備できない場面」は日常的

株式会社ECCは2026年3月、「社会人の英語力に関する調査」を発表しました。対象は、20〜39歳の一般社員300名と40〜65歳の管理職300名の計600名。調査期間は2026年2月20日〜3月2日です。この調査では、業務で英語に触れて困った経験がある一般社員は61.0%でした。

特徴的なのは、英語で困る場面です。自由回答では、「すぐに言葉が出なかった」「リスニングはできても英語で返すことができない」といった声が多く見られました。また、「外国人の来客対応」「接客時」など、準備する余裕のない突発的な場面が中心です。契約交渉や事前に準備できる会議ではなく、日常業務の中で「今すぐ返す」ことを求められる場面で困っているのです。

準備する時間がない場面は「例外」ではなく「日常」です。営業先で質問されたとき、会議で突然意見を求められたとき、同僚と雑談するとき。こうした「準備できない瞬間」に英語を話せるかどうかが、実務での信頼を大きく左右します。

準備できるときと、できないときで、言葉の出し方が変わる

準備する時間があればできる」人が、なぜ準備できない場面では言葉に詰まるのでしょうか。単に「考える時間がない」からではありません。準備できる場合とできない場合では、言葉の引き出し方そのものが違うからです。

準備時間がある場合は、3つのステップに分かれます。まず、頭の中で「何を言いたいか」を言葉にします。次に「文法的に正しいか」を確認し、最後に口に出します。このプロセスでは、内容を考えたり、表現を確かめたりする時間を取れます。

準備がない場合は、まったく異なります。相手の言葉を聞いた瞬間、無意識に引き出されるのは「すでに用意されている言葉のストック」です。「この場面ではこう返す」という反応パターンが身についていれば、考え込まずに口が動きます。一方、そうしたパターンがなければ、相手の言葉を聞いてから「何を言おう」と考え始めるため、返答までに間が空いてしまいます。

単語を増やし、文法を正確に使う訓練は、「準備ありの3ステップ」を速くするのに役立ちます。しかし、準備なしで反応する力に、そのまま直結するわけではありません。前者を支えるのは知識の量。後者を支えるのは、「知っている言葉をとっさに引き出す習慣」です。

準備ありと準備なしの実感

この構造の違いを、実際に体験した受講者の言葉から見てみましょう。

清水さんは、会話をしようとしても頭の中に英文が浮かばない状態から、伝えたいことを表現できる状態へ変わったと語っています。

清水さんは、日本の英会話スクールに1年半通った後、セブ島への短期留学を経験しました。そこで身を置いたのは、言葉に詰まっても先生が辛抱強く待ってくれる環境です。清水さんに起きた変化は、知識が増えたことだけではありません。「完璧な英文でなくても、とにかく口に出していい」と実感する経験を重ね、心理的なブロックが外れていったのです。

AIさんは、留学中のレッスンでこう変わりました。

「その時の講師の反応や切り返しを盗んで真似していたら、自然と上手くなっていきました。自然と言っても、部屋で一生懸命練習しましたけどね(笑)」

注目したいのは、AIさんが単語の暗記量を増やすのではなく、会話のパターンを体に染み込ませる練習をしたことです。講師の切り返しを真似して何度も繰り返すうちに、「この場面ではこう返す」という反応パターンが身についていきました。

セブ島留学を終えた段階で語られたプレミアムプロデューサーの方の経験も、同じ構造を示しています。

「受験勉強の英語のおかげで、リーディングやグラマーはある程度理解していましたが、会話となると英語が出てこない!という状態でした。ですが、今は英語で伝えたい事が伝えられるようになりました。」

準備する時間があれば読めます。しかし、とっさには言葉が出ません。その差を生むのは、知識の有無だけではありません。実践を繰り返し、「今この瞬間に出せる言葉」を蓄えているかどうかです。

なぜこの違いが大事か

とっさに出ない」のは、単に反応が遅いからではありません。準備なしですぐに引き出せる言葉が、まだ身についていないからです。逆にいえば、準備できない場面に意図的に身を置き、同じ状況を何度も経験すれば、「この場面ではこう返す」という反応パターンが身についていきます。その積み重ねが、とっさの発話につながります。

準備時間がある場合の英語力と、準備がない場合の英語力。この2つは別のスキルなのです。

では、なぜ多くの人が準備なしで口が動かないのか。その理由は、脳の仕組みではなく、心の準備にあります。

準備できる時は話せるのに、実務では言葉が出ない理由

準備する時間があれば話せるのに、実務では言葉が出ない。このギャップには、心理的なブロックが関係しています。「今すぐ答えなければならない」という不安と、間違えたくない気持ちが、口を止めているのです。

テスト対策が「完璧主義」を作った

日本の英語教育では、長年にわたって「正解を選ぶ」訓練が繰り返されてきました。科目や設問によって選択肢の数が異なる場合もありますが、センター試験(共通テスト)では、4つの選択肢から正解を選びます。英検やTOEICでも、複数の選択肢から最も適切な答えを見つけます。こうしたテスト対策で得た成功体験から、多くの人に「英語では正確さが大切」という固定観念が生まれました。

テストで成果を出してきた人ほど、この完璧主義に陥りやすい傾向があります。「正解を選べる自分」という意識が強いほど、間違った英語を話すことへの抵抗も強くなるからです。準備できない場面でとっさに返そうとしても、「これで合っているかな?」という確認が頭の中で始まります。その結果、完璧でなければ言う価値がないと判断し、言葉が出なくなってしまうのです。

セルフ診断:あなたの完璧主義度は?

以下の6つの項目に、自分がどれくらい当てはまるか考えてみてください。

診断Q1: 英語を話す前に「これで合ってるかな」と一呼吸置く

相手の質問に答える前に、頭の中で英文を作り、正しいかどうかを確認していませんか。その「確認の一呼吸」が、会話のテンポを遅くします。会議で質問された瞬間にも、「今話してよいのか」「この表現で正しいのか」と検証が始まり、終わるまで口を開けなくなってしまいます。

診断Q2: 文法的に正確でない文を話すことが嫌だ

「be going to」と「will」の使い分けに自信がなければ、別の表現を探す。主語と動詞の関係が怪しいと感じたら、話すのをためらう。こうした傾向が強いなら、完璧主義が働いています。実務のやりとりでは、文法の完璧さよりも、意思が伝わることが優先されます。その優先順位を切り替えられていない状態です。

診断Q3: ネイティブみたいに話さないと意味がないと思う

「正確な発音」「自然な表現」「ネイティブレベルの流暢さ」。こうした基準を自分に課すと、そこに届かない英語には「話す価値がない」と判断してしまいます。しかし、実務の現場で相手が求めているのは、必ずしもネイティブレベルの英語ではありません。意思が伝わることです。この認識のずれが、完璧主義を強めます。

診断Q4: 「え、今?」と思われるのが怖い

会議で突然意見を求められると、すぐに返す自信がなく、一呼吸置いてしまいます。その間に「今、完璧に答えるのは無理かもしれない」と判断し、結果として黙ってしまいます。相手から「返答に時間がかかる人」と思われる不安が、先に立つからです。ビジネスの場では、遅れて完璧な答えを返すより、多少ぶつ切りでもすぐに反応することが評価される場合があります。

診断Q5: 昔は少し話せたのに、長く話していないから「今は話せない」と思い込んでいる

テスト対策をしていた頃に比べて、最近は英語を話す機会が減った。そのため、「話せるレベルではなくなった」と思い込んでしまいます。準備なしで話すことを、不完全な自分をさらす行為のように感じ、「今の自分には話す資格がない」という完璧主義が口を止めるのです。

診断Q6: 返答の正確さより返す速度を優先する、という発想が頭に浮かばない

相手が求めているのは、必ずしも完璧な返答ではありません。「今、この場面で何かが伝わること」です。この優先順位を理解していないと、完璧さを追い求め続けてしまいます。学校のテストでは、「最も正確な選択肢を選ぶ」ことが成功でした。一方、ビジネス会話では、「今この瞬間に返答する」ことが成功です。この優先順位を切り替えられないと、とっさの場面で口が動きません。

3つ以上当てはまるなら、あなたのとっさの沈黙は「英語力の問題」ではなく、完璧主義の心理的ブロックです。

リーディングや文法の知識がある人も、この状態に陥ります。実際、プレミアムプロデューサーとして働く方も、リーディングや文法は理解できても、会話になると英語が出てこなかったと話しています。洋画や英語ドラマに興味を持って学び始めたC・Kさんも、職場では相手の英語を理解できても、何と返せばよいか分からず沈黙していました。知識があるのに言葉が出ないのは、「その知識を完璧に使わなければならない」という無意識の制約が、口を止めているからです。

このループから抜け出すには、「完璧さを手放す」という心理的な転換が必要です。

この心理的なブロックは、実践の場に身を置き、「完璧でなくてもよい」と考えられるようになることで、少しずつ解けていきます。清水さんは、先生たちが明るく受け入れてくれる環境のおかげで、英語への抵抗がなくなったと語っています。話すことへの恐怖が薄れて、初めて言葉を出す行動が生まれるのです。

清水さんのケース:「頭の中で英文が出てこない」から伝えられるまで

ここからは、実際にとっさの場面で口が動くようになった方の事例を見ていきます。1人目は、フリーランスのイベント・撮影コーディネーターとして、日々、準備できない現場に立っている清水さんです。

これまでは「出ない」が当たり前だった

フリーランスのコーディネーターという仕事柄、清水さんが英語を使うのは、事前に想定しにくい場面ばかりです。外国人モデルをキャスティングするときや、海外の撮影現場で現地スタッフと調整するとき。ゆっくり準備する時間はありません。

それまでの清水さんは、準備する時間があれば話せても、すぐに返答を求められる現場では頭が真っ白になり、英文が出てきませんでした。黙ったまま数秒が過ぎる。その沈黙が怖くなり、英語での発言を避けるようになっていました。

「辛抱強く待ってくれた」環境との出会い

転機は、とあるオンライン英会話スクールに1年半通う中で訪れました。清水さんを変えたのは、指導のテクニックだけではなく、先生たちの姿勢でした。

「先生はとても優しくて私が言葉に詰まっている時も辛抱強く待っていてくれました。だからと言って甘やかす訳ではなく、時には厳しく。良いバランスがある環境の中で英語学習をすることが出来ました。」

清水さんが言葉に詰まっても、先生たちは正解を急かしません。明るく笑顔で、出てきた言葉を受け止めてくれました。完璧な英文を求めるのではなく、その瞬間に出てくる言葉を受け入れます。そうしたやり取りを数カ月重ねるうちに、清水さんの心理的なブロックは少しずつ外れていきました。

やがてフリーランスの仕事が増え、準備ができない現場に立つ機会も多くなりました。外国人モデルとのやりとりや、海外での撮影。そのたびに、先生が「辛抱強く待ってくれた」経験を思い出しました。完璧でなくても、今出てきた言葉でよい。そう実感するたびに、口を開くことへの抵抗は薄れていきました。

「今は伝えたいことを表現出来る」に変わった

フィリピン・セブ島への2週間の留学を経たとき、清水さんの変化は明確になりました。

「今は伝えたいことを表現出来るようになりました。」

スピーキング力が伸びたともいえます。しかし、清水さん自身が実感していたのは、その土台にある心理的な変化でした。

「全く英語への抵抗がなくなりました。」

準備できない瞬間にも、以前のように頭が真っ白になることはなくなりました。その場で必要な言葉が、口から出るようになったのです。

なぜ「辛抱強く待つ」環境が効くのか

準備できない場面で言葉が出るようになる背景には、言葉を引き出す習慣だけでなく、心理的なブロックが外れることも関係しています。

清水さんの場合、その体験は、先生が辛抱強く待ってくれる環境からはじまりました。言葉に詰まっても待ってくれます。完璧でない返答も笑顔で受け止めてくれます。その繰り返しが、変化の土台になりました。この場面では、完璧さより反射を優先していいのだと実感できたのです。

あなたが実践するなら:「正確さより反射」の優先順位を切り替える

では、準備できない場面が日常的にある人は、心理的なブロックを外すために何をすればよいのでしょうか。ここでは、3つのステップに分けて考えます。

第1ステップ:「今この瞬間に出た言葉でいい」という宣言

会話中に完璧な表現を求めると、その確認に3〜5秒を使います。その間、相手は返答を待っています。この沈黙を短くするため、まず「正確さより反応を優先する」と意識的に決めましょう。完璧な文法を探すのではなく、その瞬間に出てくる言葉を選ぶ姿勢が大切です。

第2ステップ:小さな失敗を何度も経験する

完璧ではない英語を話す経験を、意図的に重ねます。会議で質問されたとき、営業先で話すとき、同僚とやりとりするとき。そのたびに「今出てきた言葉でよい」と考えて、実際に口に出します。相手に伝わったという小さな成功体験が、「完璧でなくても大丈夫」という感覚を育てます。

第3ステップ:環境に身を置き続ける

1度や2度の経験だけで、とっさに言葉が出るようになるわけではありません。準備できない場面が繰り返し起こる環境に身を置くことで、「この場面では、まず反応する」という習慣が身についていきます。清水さんにとって、その環境はフリーランスの仕事で日々立っていた現場でした。

反復で会話の切り返しを身につける

英語の塾講師から商社へ転職し、セブ島留学を経験したAIさんも、実務ですぐに反応することに課題を感じていました。

講師とのレッスンを通じてAIさんが気づいたのは、相づちの打ち方や会話の切り返しといった、単語数では測れないスキルの存在でした。元英語塾講師だったAIさんは、同じ意味を持つ複数の言い回しを覚え、レッスンでも日常会話でも、意識して異なる表現を使いました。さらに、講師の反応や切り返しを真似し、部屋でも繰り返し練習しました。こうした計画的な反復が、会話を続ける力につながったと本人は振り返っています。

準備できない現場で、実は最高の学習が起こる

清水さんが口を開けるようになったのは、特別な訓練法だけが理由ではありません。準備できない現場に身を置き、そのたびに「完璧でなくてもよい」と実感する。その繰り返しが、反応を変えていきました。では、日本にいながら、準備できない環境を意図的につくることはできるのでしょうか。次の章では、日本にいながら段階的に変わっていった方々の記録を見ていきたいと思います。

段階的な成長:短いフレーズから始まり、やがて長く話せるようになる

細かな変化を追うことで、「とっさに返す力」が身につく過程が見えてきます。ここでも、受講者のいくつかの体験を見ていきましょう。

最初の変化:短いフレーズが口から出る

百貨店に勤める小林さんは、20年前にアメリカで1年間暮らした経験があります。しかし、その後数年間英語を使わないうちに、とっさの場面で話すことが難しくなりました。現地スタッフとのやりとりでも、言葉が出ずに沈黙してしまうことがあったのです。

通い始めて数カ月後、小林さんに起きた変化を本人の言葉で見ていきます。

「短いフレーズの返答とかは出来るようになったと思います」

これが最初の変化です。完璧な英文を組み立てなくても、短いフレーズが自然に出てくるようになりました。会議で質問されたときにも、1語、2語、3語程度の返答が、考え込まずに口から出るようになったのです。

これは、多くの人が思い描く「流暢な会話」とは違うかもしれません。返答や文法が、常に完璧なわけでもありません。それでも、沈黙していた頃と比べれば、大きな転換点です。完璧な文を頭の中で組み立てる前に、まず短いフレーズを口にする。これを繰り返すことで、「この場面ではこのフレーズ」という、考え込まずに出せる言葉が増えていきます。

その先:返答の長さが伸びていく

では、短いフレーズの先はどうなるのか。別の方の事例を見ましょう。

次に紹介するのは、システム開発会社でマネジメント職に就く宇野さんです。入学時の課題は、「ぱっと言葉が出てこない」ことでした。この記事で扱っている、まさにその悩みです。

入学直後の学習は大変でした。担当トレーナーの指導を厳しいと感じるほど、毎週学習スケジュールが組まれ、進捗の確認もありました。

宇野さんは、学習に慣れるまで3週間かかったと振り返っています。課題を終えたらチャットで報告する仕組みが、学習を続ける助けになりました。伴走と報告のある環境の中で、少しずつ習慣が定着していったのです。3カ月の英語コーチングを終えた後、宇野さんは次のような変化を実感しています。

「レッスンの際に以前と比べて1つの文章を長く話せる様になったのはとても実感しています」

短いフレーズを返す段階から、少しずつ返答が長くなり、言葉を続けられるようになりました。完璧さを求めず、出てきた言葉をそのまま話す環境の中で、「もう少し続けて話す」感覚が身についていったのです。

なぜ、段階的に変わるのか

2人に共通するのは、完璧さへのこだわりを手放し、返答の速さを優先したことです。最初は、短いフレーズを口にするだけ。その経験を何度も重ねるうちに、「この場面ではこのフレーズ」という反応のパターンが身についていき、短いフレーズを組み合わせて、やがて長く話せるようになっていきます。

土台になるのは、完璧な英文を組み立てるより、まず口を動かすことを優先する意識です。

あなたが実践するなら:3つのステップ

短いフレーズから段階的に話せるようになる過程は、訓練というより「経験の積み重ね」です。準備できない場面で何度も口を開くうちに、反応の仕方が身についていきます。では、何から始めればよいのでしょうか。以下の3つを試してみてください。

ステップ1:最初から文で返そうとせず、短いフレーズで返すことを自分に許可する

会議で「ご意見はありますか」と聞かれたとき、「完璧な文で返さなければ」と考えていませんか。その思い込みが、口を止めます。まずは、短い返答を自分に許すことから始めましょう。1語でも、「Yes」だけでも、「I think so」の3語でも構いません。返答の正確さより、まず返すことを優先する。この考え方への切り替えが、第1段階です。

ステップ2:よく使う場面の頻出フレーズを10個だけ口に馴染ませる

会議での質問、営業先での雑談、同僚との打ち合わせ。繰り返し経験する場面では、よく使う返答もある程度決まっています。そこで使える短いフレーズを10個だけ選び、意識して口になじませましょう。「I think so」「Exactly」「Let me think」「One more time」など、自分の場面に合う表現を選びます。完璧な発音を目指すのは、その後です。まずは、口が動く経験を重ねます。

ステップ3:「短くても返せた」を成功として数える

その日に短いフレーズで返せた回数を、夜に振り返ります。「会議で『I think so』と返せた」「営業先で『Sounds good』と言えた」。こうした小さな成功体験が、次の返答への自信になります。

完璧さだけを基準にすると、失敗ばかりが目につきます。一方、「短くても返せた」ことを数えれば、成功を積み重ねられます。やがて、短いフレーズを2つ、3つと組み合わせて返してみようという気持ちも、自然に生まれてきます。

会議で「今」と言われたときに、反応的に返せるようになるまでには、どのくらいの期間がかかるのか。最後の章で確認します。

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変化はどのくらいの期間で起こるのか

最初に何が変わるのでしょうか。

変化の兆し:最初に起こること

第1の兆し:心理的な恐怖が薄れる

清水さんは、2週間のフィリピン留学を経て、英語への抵抗がなくなったと語っています。

これは、準備できない場面で話すことへの心理的なハードルが下がったことを示しています。「恥ずかしい」「間違えたらどうしよう」という感情が、環境と経験によって薄れていく。これが最初の兆しです。

第2の兆し:返答までの時間が短くなる

システム開発会社でマネジメント職に就く宇野さんは、3カ月のコーチングを受けた後、以前より1つの文章を長く話せるようになったと実感しています。

表面上の変化は「長く話せるようになった」ことです。その背景には、返答までの時間が短くなったことがあります。準備できない場面で質問されても、以前より早く文章を組み立て、話し始められるようになったのです。

第3の兆し:自分で気づく「できた」感

ホテルで働くC・Kさんは、5ヶ月の通学を経てこう話しています。

「間違いに恐れずに、ガンガン英語を話していけるようになりました。」

「以前、職場では海外のお客様を対応する時に、言っていることを理解できてもなんて返せば良いのかわからない状況が多かったのですが、ちゃんとした文章でなくても、とりあえず自分の言葉で伝えようという意識に変化しています」

注目したいのは、C・Kさん自身が変化をはっきり認識していることです。外部から評価されたのではなく、準備できない実務の場面で「返せた」という経験を積み重ねています。

期間の目安:実録から見える共通パターン

では、この兆しが現れるまでに、どのくらいの時間がかかるのか。

清水さんは、東京で1年半レッスンに通い、慣れたうえで、2週間のフィリピン留学に臨みました。日本で1年半学んだ経験があったからこそ、短期留学を生かし、英語への抵抗がなくなるという心理的な転機を迎えられたと考えられます。留学の2週間だけを見ると短く感じますが、その前の学習期間も変化につながっています。

宇野さんの場合、3ヶ月の集中コーチングが記録の対象ですが、その内訳として本人はこう述べています。

「3週間はかかりましたね。課題が終わったらチャットで報告するので、それがあることによってサボらずに出来ました。」

その後も毎日オンラインレッスンを続け、以前より長い文章を話せるようになりました。

C・Kさんは月4〜5回のペースで通学し、5カ月後には、間違いを恐れずに話せるようになりました。

複数の事例に共通するのは、集中的に英語を話す環境に身を置く中で、心理的な転機が訪れていることです。ただし、変化までの期間は、環境や学習量、心理的な準備の度合いによって大きく異なります。

正直に言えば、『何ヶ月で変わる』と断言することはできません。 変化の速度は、年齢・学習経験・職業環境・発話機会の頻度によって、1人ひとり異なります。

一方で、全員に共通する兆しもあります。それが、「完璧さを手放す」ことです。どの人の体験でも、「整った文章でなくてもよい」「間違ってもよい」という意識の変化が見られます。大切なのは、単純な期間の長さではありません。その時間の中で何を経験し、どの段階で完璧さへのこだわりから離れられるかです。

自分の「とっさ反応」を知るには

何ヶ月で変わる」と断言できないからこそ、まず自分の今の反応を確認することが大切です。変化は、短いフレーズで返せた瞬間から始まります。

  1. まず、前の章で紹介したセルフ診断の6問で、自分の完璧主義の傾向を確認してください。3つ以上当てはまれば、それが今のあなたの沈黙の原因です。
  2. 今週1回、「今この瞬間に出てきた言葉でよい」という姿勢を試してください。完璧さより、まず反応することを優先する。その切り替えが、口を開くきっかけになります。
  3. 会議や営業、同僚との会話など、準備なしで英語を使う場を1つ確保してください。その場が、反応を変えるための実践環境になります。

まとめ|「とっさ」は技術ではなく、完璧さを手放す心の準備

この記事で見てきたのは、「とっさに出ない」状態が、単なる反応速度の問題ではないということです。準備できない場面で、どのような心持ちで、どう口を動かすか。その方法を知らないことが、沈黙につながっています。

ビジネスでは、準備できない場面が日常的にあります。そこで話す力は、知識を増やす学習とは別に身につける必要があります。実際にとっさに答えられるようになった人たちに共通するのは、「完璧でなくてもよい」と考えられるようになったことです。変化は、技術を身につけることだけでなく、完璧さへのこだわりを手放すことから始まります。

フリーランスのコーディネーターとして、準備できない現場で何度も英語を使ってきた清水さんは、頭の中に英文が浮かばない状態から、伝えたいことを表現できるようになったと述べています。その変化を支えたのは、新しいメソッドだけではありません。先生たちが笑顔で接し、辛抱強く待ってくれる環境でした。

環境が変わると、反応も変わります。準備できない場面に身を置き、「完璧でなくてもよい」という経験を何度も重ねることで、口は少しずつ動くようになります。

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