英語の発音と喉|喉が担っている3つの仕事と確かめ方
英語は喉から声を出す、と言われたことがある。言われたときは分かった気になったが、いざ声を出そうとすると何を変えればいいのか分からない。喉に力を入れてみても、それが合っているのかも判断できない——そんな経験はないでしょうか。
英語の発音で喉が関わるのは、声を張ることではありません。喉が震えているかどうか、喉のどこから息を出すか、喉で音を止めるかどうかという、細かい切り替えのことです。
日本語でも喉は使いますが、切り替えの数が違います。英語では、口の形がまったく同じなのに喉の状態だけで別の単語になる組み合わせが、いくつもあります。
ただ、この切り替えは鏡を見ても分かりません。口や舌と違って、外から見えないためです。
この記事では、喉が担っている3つの仕事と、それぞれを自分で確かめる方法をお伝えします。英語コーチングスクール・ミライズの発音プログラム「シャベリッシュ」で、実際に受講者へ教えている内容です。
苦手はスピーキングに集中する。しかし、その中身までは分からない
先に、どこに困りごとが集中しているかを見ておきます。
ECCが20〜65歳の会社員600人(一般社員300人・管理職300人)に行った社会人の英語力に関する調査(2026年2〜3月)では、英語4技能でもっとも苦手なものとして一般社員の41.0%、管理職の38.7%がスピーキングを挙げました。 どちらの層でも1位です。
ただ、この調査が答えているのはここまでです。スピーキングの何が苦手なのかまでは、本人にも分かっていません。
語彙なのか、文法なのか、話す速さなのか、音そのものなのか。切り分けられないまま「話すのが苦手」とまとめている状態です。そして音の中でも、いちばん切り分けにくいのが喉です。
舌の位置や唇の形なら、鏡に映ります。真似もできます。喉だけは外から見えません。 「もっと喉を使って」と言われても、何を変えればいいのか判断できないのは、そのためです。
だから、喉の話は「3つの仕事」に分けてから始めます。
シャベリッシュが「発声方法」を柱に置いている理由
私たちのプログラムでは、発音記号や音声変化と並べて、発声方法を柱の1つに据えています。声をどこから、どう出すか。喉の使い方は、この発声方法にあたります。
学習の形も、机に向かうものとは違います。口を動かして練習する、ボイストレーニングに近い形を基本にしています。喉と口の動きは、読んで理解するだけでは変わらないからです。
そして、正しい音でインプットし、レッスンで実際に出し、フィードバックを受ける。このサイクルを回すことが条件になります。出した音を外から判定してもらう工程が、必ず入ります。
見えない部分だからこそ、自分の感覚だけでは詰められません。
喉のアドバイスが役に立たないのは、喉が何をしているかが説明されていないからです。ひとまとめに「喉」と言われるので、どの動作の話なのかが分かりません。
喉は1つの動作をしているわけではない
「喉を使う」とひとまとめにされますが、実際には別々の動作が3つあります。
震わせるかどうか。奥から息を出すか、奥で音を響かせるか。そして、喉で息を止めるか。この3つは目的も動かし方も違います。
分けずに練習すると、どれか1つはできても他が抜けたままになります。
手を当てれば、震えは自分で分かる
見えないだけで、確かめられないわけではありません。例えば、喉に軽く手を当てて声を出すと、震える音と震えない音があるのが分かります。
日本語の「サ」と「ザ」で試すと違いがはっきりします。サでは震えず、ザでは震えます。英語の子音にも、これと同じ対が並んでいます。
自分の指で確認できる状態にしておくと、あとは音を1つずつ当てていくだけになります。
喉が担っている3つの仕事
喉の役割は、次の3つに分かれます。どれの話をされているのかが分かれば、練習する内容も決まります。
| 仕事 | 何をしているか | 関わる音 |
|---|---|---|
| ① 震わせる/震わせない | 声帯を震わせるかどうかで、同じ口の形から2つの音を作り分ける | /p/ /b/、/t/ /d/、/s/ /z/ など8組 |
| ② 奥から出す・奥で響かせる | 喉の奥から息を出す、または音を喉の奥で響かせる | /h/、/l/、/æ/、/ə/ |
| ③ 止める・引く | 喉で息を止める、舌を喉の方向へ引く | Glottal T、/r/、/ər/ |
確かめ方も3つで違う
- ① は喉に手を当てる。震えるかどうかで判定できます
- ② は息の出どころを意識する。口先だけで出していないかを確かめます
- ③ は動きを止めた瞬間があるかを確かめます
ここから1つずつ見ていきます。
① 震わせる、震わせない
英語の子音には、3つの条件があります。音を作る場所、音を作る方法、そして有声か無声かです。
このうち有声・無声を決めているのが喉です。息だけを出す音を無声音、喉を震わせる音を有声音といいます。
残る2つは口が担当します。音を作る場所とは、舌や唇のどこを使うかです。例えば /p/ は両唇を使います。音を作る方法とは、摩擦させるのか破裂させるのかといった出し方で、/p/ は破裂音になります。
出し方は大きく3つに分かれます。
- 破裂音 — いったん息を止めて、瞬間的に開放する。/p/ /b/、/t/ /d/、/k/ /g/
- 摩擦音 — 狭いすき間から息を通して擦る。/f/ /v/、/θ/ /ð/、/s/ /z/、/ʃ/ /ʒ/
- 鼻音 — 口をふさぎ、鼻から息を抜く。/m/ /n/ /ŋ/
この3つのどれなのかが分かると、喉を使うタイミングも決まります。 破裂音なら破裂の瞬間、摩擦音なら擦っているあいだ、鼻音なら息を抜いているあいだ、喉が震えているかどうかを見ます。
つまり、1つの子音は口で2つ、喉で1つの条件がそろって決まります。口の2つだけを直しても、3つ目が抜けていれば音は完成しません。
口の形が同じで、喉だけが違う8組
英語には、口の形も舌の位置もまったく同じで、喉が震えるかどうかだけが違う組み合わせがあります。
| 無声音(息だけ) | 有声音(喉を震わせる) | 作り方 |
|---|---|---|
| /p/ | /b/ | 両唇を閉じて瞬間的に破裂させる |
| /t/ | /d/ | 舌先を歯茎につけて瞬間的に破裂させる |
| /k/ | /g/ | 舌の付け根を上げて瞬間的に破裂させる |
| /f/ | /v/ | 前歯を下唇の内側につけて摩擦させる |
| /θ/ | /ð/ | 舌先を上下の歯から少し出して摩擦させる |
| /s/ | /z/ | 上下の歯をくっつけ、隙間から摩擦させる |
| /ʃ/ | /ʒ/ | 唇を丸めて摩擦させる |
| /tʃ/ | /dʒ/ | 舌を口の天井につけ、唇を丸めて摩擦させる |
同じ行の左と右は、口の中では区別がついていません。 違いは喉だけです。
だから、口を直しても通じないことがある
舌の位置を直しても伝わらないとき、原因が喉側にあることがあります。例えば、/θ/ と /ð/ はどちらも舌先を歯のあいだから出して引きながら摩擦させますが、/θ/ は息だけ、/ð/ は喉を震わせます。舌の位置だけ完璧でも、喉が動いていなければ別の音になります。
/s/ と /z/ も同じです。上下の歯をくっつけ、舌をフラットにして隙間から出すところまでは共通で、/s/ は息だけ、/z/ は声もはじき出します。
日本語にない音でも同じことが起きます。/ʒ/ は「ジュ」と「ジ」の中間のような音で、唇を丸めて日本語の「シュ」の口の形をとりながら、喉を震わせて「ジ」と出します。口の形は /ʃ/ と共通で、変えるのは喉だけです。
日本語にない音だから難しい、とは限りません。 口の形はすでに知っている場合があり、足りないのは喉の切り替えだけ、ということが起こります。
唇を噛むと教わった音も、決め手は喉
学校で「唇を噛んで発音する」と教わった音があります。/f/ と /v/ です。
実際には、噛むのではなく前歯を下唇の少し内側につけて、瞬間的に摩擦させます。ここまでは /f/ も /v/ も同じで、分かれ目は /f/ が息だけ、/v/ が喉を震わせる点だけです。
日本語話者が /v/ を「ブ」に置き換えてしまうのは、唇を閉じてしまうためです。/b/ は両唇を閉じて破裂させる音なので、口の形からして別物になります。喉の話をする前に、まず唇が閉じていないかを確かめる必要があります。
練習の仕方
8組を上から順に、喉に手を当てて出し比べます。左は震えず、右は震えます。これが自分の指で確認できれば、その組は区別できています。
震えの有無があいまいな組があれば、そこが自分の弱点です。8組すべてを一度に直そうとせず、あいまいだった組だけを繰り返します。
単語に入れて確かめる
音だけで出し比べたら、次はその音が入った単語で確かめます。
| 無声(息だけ) | 有声(喉を震わせる) |
|---|---|
| `/k/` scared | `/g/` graduate |
| `/s/` success | `/z/` magazine |
| `/ʃ/` chef | `/ʒ/` genre |
| `/tʃ/` coach | `/dʒ/` general |
`/θ/` なら think、teeth、thick、Thursday、math、health、both、something、thin。単独の音では出せても、単語に入ると元の癖に戻ることがあります。
単語で出せたら、その単語を使う文で確かめます。音・単語・文の順に範囲を広げると、どの段階で崩れるかが分かります。崩れた段階まで戻って、そこを繰り返します。
② 喉の奥から出す、喉の奥で響かせる
震わせるかどうかとは別に、音をどこから出すかという仕事があります。口の手前ではなく、喉の奥を使う音です。
喉の奥から息を出す音
/h/ がこれに当たります。口を軽く開け、喉の奥から勢いよく息を出します。
日本語の「ハ行」より息の量が多く、出どころも奥になります。口先で軽く「ハ」と言うと、相手には音として届きません。
喉の奥で響かせる音
響かせる側に回るのが /l/ と、いくつかの母音です。
- /l/ — 舌先を前歯の裏側の生え際につけ、音を喉の奥で響かせながら、強く舌を弾きます。舌の位置だけ合っていても、響きがなければ日本語のラ行に近い音になります
- /æ/ — 軽く顎を下げて唇を左右に広げて開け、音を喉の奥で響かせます
- /ə/ — 口を少しだけ開けて力を抜き、そのまま喉の奥から空気を出します
例えば /ə/ は、英語でもっとも多く出てくる母音の一つです。力を抜いて喉の奥から出すだけなので、口の形をがんばって作るほど遠ざかります。
鼻に抜ける音は3つある
喉ではなく鼻を使う音もあります。日本語では「ン」ひとつにまとめてしまいがちですが、英語では3つに分かれます。
- /m/ — 両唇を強めに閉じ、鼻から息を抜くようにハミングしながら軽く口を開ける
- /n/ — 舌先を歯茎の裏につけ、鼻から息を抜くようにハミングしながら、歯茎の裏から舌を離す
- /ŋ/ — 軽く口を開いて舌の付け根を上げ、響きを鼻で感じながら、鼻から息を抜くようにハミングする
3つとも喉を震わせる有声音ですが、息の抜ける場所と、口の中で塞ぐ位置が違います。 日本語の「ン」で代用すると、この3つが1つに潰れます。
息の出口が口・喉・鼻のどれなのかを分けておくと、似た音の混同が減ります。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約する③ 喉で止める、喉の方向へ引く
3つ目は、喉を使って動きを止める、あるいは舌を喉の方向へ動かす仕事です。
喉で息を止める
語中の /t/ の後ろに /n/ が続くとき、/t/ の口の形を保ったまま、喉の奥で飲み込むように止めます。button や written がこの形です。
口の中で止めるのではなく、喉元を締めて止めるのが特徴です。音が消えたように聞こえますが、止めているだけで、動作は行われています。
この変化そのものは、音の変化として整理されています。ここでは、喉が止める役割を担っている点だけ押さえてください。
舌を喉の方向へ引く
/r/ は、唇をしっかり丸めた状態で、舌先を口の天井につけないように少し丸め、喉の方向へ引きます。
日本語のラ行は舌先が上顎に触れますが、/r/ は触れません。触れずに奥へ引く、という動きが日本語にないため、練習量が要ります。
/ər/ も同じ方向の動きです。口を少し開いてアヒル口のような形をとり、舌先を少し丸めてスプーン状にして、舌の側面を上顎に沿わせながら喉の奥の方向へスライドさせます。
例えば、/l/ と /r/ の違いは、舌先が触れるかどうかだけではありません。/l/ は触れて響かせ、/r/ は触れずに引く。向かう方向が逆です。
確かめ方
止める側は、音が途切れる瞬間があるかどうかで分かります。引く側は、舌の先が口の天井に当たっていないかを指で確かめられます。
どちらも、喉と舌が連動している動きです。舌だけ、喉だけを意識しても形になりません。
見えない部分は、外から判定してもらう
①は手を当てれば自分で分かります。②と③は、自分では正しくやっているつもりでも、出ている音が違うことがあります。
録音して聞き返す方法はありますが、聞いて違和感があっても、喉のどこがずれているかまでは自分では特定できません。喉は鏡に映らないので、口の形のように見比べる手段がないためです。
この部分は、発音を専門に見ている人に聞いてもらうのが早くなります。どの音が、どの仕事でずれているのかが分かれば、あとは①で見つけた弱点と同じように、その組だけを繰り返せます。
まとめ|喉の仕事は3つに分かれている
英語の発音で喉が担っているのは、声を張ることではありません。
- 震わせる/震わせない — 口の形が同じ8組を、喉だけで作り分ける。喉に手を当てれば判定できる
- 奥から出す/奥で響かせる — /h/ は奥から息を出し、/l/ や /æ/ は奥で響かせる
- 止める/引く — 喉元で息を止める、舌を喉の方向へ引く
3つのうち、自分で判定できるのは①だけです。②と③は外から聞いてもらわないと、ズレている場所まで特定できません。
「喉を使う」と言われて止まっていたなら、まず①から始めてください。8組を出し比べて、震えがあいまいな組を見つける。そこが、いま自分の喉ができていない場所です。
見つかった組を、音・単語・文の順に広げていきます。喉は見えませんが、やることが3つに分かれていると分かれば、どこを練習しているのかは自分で言えるようになります。
