大人の英語発音は年齢のせいではない|手元にある英語で始め方が変わる
単語も覚えた、文法も分かる、TOEICのスコアも上がった。それなのに、口から出す音だけは学生のころから変わっていない。聞き返されても、自分の発音のどこが悪いのかは分からないまま会話が流れていく——そんな経験はないでしょうか。
「大人になってからでも発音は変わる」と書かれた記事は、探せば見つかります。ただ、読み終えても明日から何をするのかは決まりません。年齢の話で終わってしまうからです。
独学でTOEIC845点と英検準一級を取った古庄さん、海外クルーと毎日英語で働く佐野さん、15年のブランクがあった寺倉さん。3人とも英語から離れていたわけではないのに、発音だけが手つかずで残っていました。
この記事では、いま手元にある英語を3つに分け、それぞれ最初にやることをお伝えします。書いているのは、英語コーチングスクール・ミライズの発音プログラム「シャベリッシュ」です。3人はいずれもその受講者で、実際に教えている内容をもとにしています。
大人の発音が手つかずで残るのはなぜか
英語学習アプリ「レシピー」を運営するポリグロッツの英語学習者322人を対象にした意識調査(n=322、2024年10〜12月)によると、勉強不足を感じる分野として約76%が「スピーキング」を挙げています。同じ調査では、46%が「英語力が上達しているかわからない」と答えました。
対象はアプリで学習を続けている人たちで、勉強していない人の数字ではありません。この2つの数字は、同じところから出ています。話す力には、伸びたかどうかを教えてくれるものがありません。 だから勉強不足だと感じ続け、同時に、上達しているかも分からないままになります。
読む・書く・単語・文法には点数がつきます。点数がつけば伸びが見えるので、続けられます。発音には、それがありません。
例えば TOEIC Listening & Reading が測るのは、聞く力と読む力です。自分の口から出た音が正しいかは、この試験が答えを返す範囲に入っていません。
英検の面接では話す力が採点されますが、返ってくるのは合否とスコアだけです。どの音がどう間違っていたかは戻ってきません。
合っているかどうかを教えてもらえないものだけが、直されないまま残ります。
積み上げてきた人ほど、この差は目立ちます。冒頭の古庄さんは、独学でTOEIC845点と英検準一級を取り、オンライン英会話も2年間毎日続けていました。
それでも発音だけは、本とYouTubeで半年ほど自習していたそうです。教えてもらう場所だけが、ずっと空いていました。
では、英会話を続けていれば発音も直るのでしょうか。実際には、会話の相手は内容を理解することを優先します。伝わってしまえば、音の細かいずれは指摘されずに流れていきます。
イギリスに赴任し、化学業界で経営管理の仕事をしているTさんは、発音を学ぶ前からオンライン英会話を受講していました。発音のプログラムを終えたあと、同じ講師のレッスンに戻ったときのことを、こう話しています。
2ケ月間のハツオンプログラム修了後、同じ先生のレッスンを受けた際に褒めてもらえたことで改めて成長を感じました
同じ相手と同じ形式で話していても、変化が起きたのは発音を別に扱ったあとでした。会話の量と、音を直してもらうことは別のものです。
つまり、「もう大人だから」ではありません。順番の問題として見れば、まだ誰にも直してもらっていないところを見つけて、そこから始めれば済みます。発音も、合っているかどうかを返してもらえれば、同じように積み上がります。
シャベリッシュが発音に点数をつけている理由
前の章で書いたとおり、発音が後回しになる原因は、合っているかどうかが返ってこないことにあります。だからシャベリッシュでは、まず発音に点数をつけるところから始めます。
独自の発音診断テストを、学習開始時と卒業時の2回受けてもらいます。最初のテストは実力を測るためではなく、どの音が苦手かを見つけるためのものです。そのうえで、71ある確認ポイントの中から、あなたが先に直したほうがいい音を選び、そこだけに絞ったカリキュラムを組みます。
例えば、日頃から英語学習を続けている方の場合、英語の音の基本をおさらいしたうえで、苦手な3つの音だけを直していく形になります。71ある確認ポイントを全部やり直すわけではありません。すでに出せている音に時間を使わないためです。
教材は、延べ1万人のミライズ留学生に提供してきた発音レッスンをもとに開発したものを使います。レッスンの進め方は、講師が見本を示し、それをまねして何度も繰り返す形です(オーディオリンガルメソッドと呼ばれる教え方です)。読んで理解する時間より、口を動かす時間のほうが長くなります。
そして卒業時にもう一度、同じ診断テストを受けます。最初と最後の音が並ぶので、変わったかどうかが自分で分かります。 合っているかどうかが返ってこないから後回しになっていたものを、返してもらえる形にする。ここが、独学との違いです。
では、自分はどこから手をつければよいのか。手元にあるものによって、入口が変わります。
手元にある英語で3つに分かれる
発音の入口は、大きく3つに分かれます。分ける基準は、年齢でも学習歴の長さでもありません。いま手元に何があるかです。持っているものが違えば、最初にやることも違います。
| いま手元にあるもの | まだ直してもらっていないもの | 最初にやること | |
|---|---|---|---|
| ① スコアはあるのに通じない | TOEIC・英検などのスコア | 自分の音が合っているかどうか | 音を人に聞いてもらう |
| ② 仕事の場面で崩れる | 仕事で英語を使う機会 | 崩れる場面と音の特定 | 崩れる場面の語を書き出す |
| ③ 何年も離れている | 学生時代の記憶 | 再開の入口 | 発音そのものを入口にする |
自分がどれかを決める
次の3つに答えると、だいたい決まります。
- 仕事で英語を使う機会が、週に1回以上ある → ②
- 上が「いいえ」で、TOEICや英検のスコアを持っている → ①
- どちらも「いいえ」で、最後に勉強したのが数年前より前 → ③
複数に当てはまることもあります。その場合は、いちばん困っている場面があるほうを先に選んでください。3つとも順番に読む必要はありません。
まず、スコアはあるのに話すと通じない場合から見ていきます。
タイプ1 スコアはあるのに、話すと通じない
英語トレーナーの井上さんは、受講前の状態をこう話しています。
個人的にはTOEICの点数も取れているし、英語でのコミュニケーションはできるのですが、発音だけは自分の中でまだマスターできていない感覚がありました。
英語を教える側の人でも、この状態になります。 スコアがあるのに通じないのは、スコアが発音を測っていないためです。読解も文法も、聞き取りも点数になります。けれども、自分の発した音が相手にどう届いているかは点数に出てきません。だから、スコアが上がっても発音は変わらないまま残ります。
足りないのは知識ではない
足りていないのは、知識ではありません。合っているかどうかを教えてもらうことです。古庄さんは、レッスンで毎回フィードバックをもらえたことについてこう話しています。
自分がどこでつまづいたのかが理解でき、復習の際に迷うことなく自分の苦手に取り組むことができました
どこでつまずいたかが分かれば、そこだけ練習できます。分からなければ、全体をなんとなく繰り返すことになります。古庄さんが受けていた形は、次のようなものでした。
講師とのレッスンでは細かい子音、母音の学習を行い、フォローアップ面談ではトレーナーから短いTEDトークの課題をだされていました
読み上げたスクリプトに対しては、ネイティブの発音に近づくためのコツを指摘してもらったと話しています。自分で読んで、どこをどう直すかを返してもらう。これがあると、次に練習する場所が決まります。
外資系企業のコンサルタントとして働くYさんが受講を決めた理由も、スコアではなく仕事の場面にありました。
外資系企業のコンサルタントとして働いている中で、英語を話す機会がたびたびあるため、英語力を高めたいと思ったからです
Yさんが苦戦したのは、b と v の音でした。単語ひとつなら発音できるのに、文章になると口の形を作るのが間に合わなくなります。そこで、b と v が頻出する教材の復習頻度を増やし、その単語だけゆっくり発音する練習をしたと話しています。
例えば b と v のように、自分がどの音でつまずくかが分かっていれば、練習はここまで具体的にできます。分かっていなければ、どこを練習すればいいかも決まりません。
最初にやること
まず、自分の音を人に聞いてもらうことです。録音して自分で聴くところまでは、独学でもできます。ただし、聴いて違和感があっても、どこがどう違うのかまでは自分では分かりません。
聞いてもらう相手は、発音を専門に見ている人が望ましいです。「なんとなく通じている」では、どの音を直すかまで決まりません。そして口の動きは、音声だけでは伝わりにくい部分です。中津さんは、講師が実際に口を開けて見せてくれたことをこう話しています。
舌の位置やあごの開き具合などは実際にやってもらったほうが分かりやすいですし、記憶にも残りやすいのですごく良かったです
資料に書いてある説明を読むことと、実際にどう動かすかを見ることは、別々に必要になります。
なお、発音を直すと、スコアの側に戻ってくることもあります。Tさんは受講後のTOEICについてこう話しています。
ハツオンを修了後にTOEICの試験を受験したのですが、初めてリーディングの時間が余ったんです。
音を出せるようになると、文字を追う速さも変わることがあります。ただ、これは結果として起きたことで、狙って取りにいくものではありません。
次に、日常会話はできるのに仕事の場面で崩れる場合を見ます。
タイプ2 日常会話はできるのに、仕事の場面で崩れる
このタイプの方は、英語が話せないわけではありません。中津さんは受講を決めた理由をこう話しています。
日ごろから英会話レッスンを受講していたので、自分の言いたいことは言える状態だったのですが、円滑に会議を進めるために次に改善すべきは発音だなと感じ受講を決めました。
足りないのは英語力ではなく、会議が止まらないだけの正確さだという判断です。場面によって崩れるなら、崩れる場面のほうから見つけていきます。日常会話は、文脈が助けてくれます。多少あいまいな音でも、状況から相手が補ってくれます。仕事の場面では、この助けが減ります。専門用語や固有名詞、数字は前後から推測しづらく、音だけで判別されます。
毎日英語を使っていても、伝わらない
さきほどの佐野さんは、20年以上にわたって独学で英語学習を続けてきた方です。読み書きは一通り勉強してきたと話しています。職場では海外クルーと撮影を行うため、ほぼ毎日英語を使っていました。
それでも発音が原因で聞き返されることが多く、本人はこう振り返っています。
そのため今まで海外クルーに要件を伝える際、発音に自信がなくて通訳の方に頼む場面も多々ありました。
撮影テーマによっては専門的な用語や微妙なニュアンスを伝える必要があり、行き違いが起きないよう気を張っていたそうです。毎日使っていても、崩れるときは崩れるということです。受講後、この通訳頼みは変わりました。
以前は通訳の方に頼っていた部分も、長年コンプレックスだった発音を克服できたおかげで
例えば佐野さんが苦手だったのはリンキングでした。前の語の終わりと次の語の始まりが、ひと続きの音になる現象です。単語ごとには正しく読めていても、つなげた瞬間に崩れます。
崩れているかどうかは、機械が教えてくれることもある
外資系企業でイーコマース運営を担当する中津さんは、週に1回の英語会議に出ていました。会議中は自分の発音に意識が引っ張られて集中できなかったといいます。
さらに、発音を間違えたせいで、自分の発した英語が違う単語として文字起こしされてしまうこともあったそうです。
さきほどのTさんも、ミーティングで発した言葉が発音のせいでボイスレコーダーのアプリで意図した単語に文字起こしされなかったと話しています。2人とも、崩れていることを人ではなく機械に教えられています。 会議の相手は聞き流してくれても、音声認識は聞き流しません。
ただし、機械が教えてくれるのは「ずれている」ところまでです。どう直すかまでは返ってきません。そのTさんは、発音記号についてこう振り返っています。
発音記号自体は今まで見たことはあったのですが、実際にどのように発音するかは全く分かっていませんでした
見たことはある。読み方も知っている。それでも、実際にどう口を動かすかは別でした。
Tさんはレッスンで、上手く発音できていない発音記号だけを教えてもらったといいます。全部をやり直す形ではありませんでした。
中津さんが挙げているのは prefecture のアクセント位置です。単語の後ろを強く読んでいたのが、正しくは pre だと知って驚いたと話しています。
仕事で毎日使っている単語ほど、自己流のまま固まりやすい。 使う頻度が高いぶん、直す機会がないまま繰り返されます。
最初にやること
自分の仕事で崩れる語を書き出すことです。業界の専門用語、社内で頻出する固有名詞、よく使う数字の言い方。聞き返された単語をその場でメモしておくと早く集まります。
このリストがあると練習する音の範囲が決まります。英語全体ではなく、自分の職場で使う語から入れます。最後に、何年も英語から離れていた場合を見ます。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約するタイプ3 昔やったきり、何年も離れている
ブランクは、英語が得意だった人だけの話ではありません。定年退職後にまったくの初心者から始めた仮屋さんは、受講後にこう話しています。
そして発音が出来るようになったからこそ、もっと単語や文法の勉強して表現の幅を広げたい意欲が増していますね。
順番が逆になっています。 単語と文法をやり直してから発音、ではなく、発音から入ったことで単語と文法に戻る意欲が出た。ブランクがある場合、単語や文法より発音から入る選択肢があります。理由は2つあります。1つは覚え直す量が少ないこと。もう1つは机に向かう形の勉強ではなく、口を動かす練習であることです。
「学生時代みたいに勉強し直す」が重かった
寺倉さんは、大学卒業以来15年ほど英語に触れていませんでした。仕事でも日常でも使う場面がなく、ボキャブラリーもほとんど忘れていたそうです。
学習しないといけないとは思っていた。それでも動けなかったのは、やる気ではなく入口が重かったからです。
そこで寺倉さんが選んだのは、発音から入る道でした。「でもよく考えてみたら、実際に海外に行って2-3ヶ月英語に触れれば嫌でも基礎は出来上がるよなって考えたら、同じような体験ができるんじゃないかと思って挑戦することにしました」
その後、自分の英語のトークを録音して2週間ごとに比べたところ、想像以上に違っていたと話しています。点数ではなく変化が分かったことが、続いた理由だったそうです。
問題を解かない練習は、続きやすいことがある
パーソナルトレーナーとして働く三井さんは、学校の授業以来、英語から離れていました。
学校での授業以来、英語を勉強してきていませんでしたし、日常的に英語に触れるという機会はほとんどありませんでした
始める前は、ボキャブラリーが少ない状態でレッスンをやり遂げられるか不安だったといいます。実際に始めてみると、この心配はすぐに解消されたそうです。
ハツオンは発音に特化したレッスンなので、聞いたフレーズを言えばいいんですね
例えば、テキスト教材だと正解と不正解が出ます。不正解が続くと、自分は英語ができないという気持ちにつながりやすくなります。発音の練習には、正解と不正解が出る形になっていません。
続けられた理由としては、時間の自由がきくことも挙げています。
まず1つが、オンラインでいつでも好きな時間に受講できるという点です
フリーランスとして働きながら、昼過ぎや夜など仕事の合間に受講していたそうです。ブランクがある状態で再開するとき、決まった時間に通う形はそれ自体が負担になります。
先ほどの寺倉さんは、15年のブランクに対して起きたことをこう表現しています。
ただ、ハツオンがきっかけで、15年のブランクに対してスイッチが入ったというか。
再開できるかどうかは、意志の量ではなく入口の重さで決まります。
最初にやること
戻る入口として、発音を使うことです。単語帳を開くのと、声に出すのと、どちらなら続きそうか。ここで後者を選べるなら、発音から入るほうが再開しやすいと考えられます。ブランクの長さを埋めようとすると量が膨大になりますが、発音なら扱う範囲が音に限られます。
まとめ|大人の発音は、年齢ではなく順番の問題
発音が手つかずで残っているのは、合っているかどうかを教えてもらえないままだったからです。読む・書く・単語・文法は点数がつくので積み上がります。発音にはそれがありませんでした。だから、年齢ではなく順番の話として扱えます。
- スコアはあるのに通じないなら、自分の音を人に聞いてもらうところから
- 仕事の場面で崩れるなら、崩れる場面で使う語を書き出すところから
- 何年も離れているなら、発音そのものを戻る入口にする
最後に、Tさんは日本にいたころ非ネイティブの外国人メンバーとの会議で、母国語のアクセントが強く英語が聞き取りづらかった経験から、こう気づいたと話しています。
簡単な英語しか話せなくても、発音が綺麗であれば相手に伝わる
話せる範囲を広げるより先に、いま話せる範囲を届く音にする。大人の発音は、そこから始められます。
