英語が聞き取れるけど話せない|「返す言葉が出ない」を抜け出した人がとった2つの練習
相手の言っていることは分かる。会議の議論も、海外のお客様の要望も、映画のセリフも、だいたい追える。なのに自分が話す番になると、返す言葉が出てこない。相づちと単語だけでその場を乗り切って、帰り道に「ああ言えばよかった」と英文が浮かんでくる。
検索すると、答えはどの記事も同じです。「アウトプットが足りない」。それは、ご自身でも分かっているはずです。本当に知りたいのは、その先の何を、どうアウトプットすれば話せるようになるのかではないでしょうか。
この記事に登場するのは、いずれも英語コーチングスクール・ミライズの受講者です。公式サイトには、200件以上の体験談が本人の言葉で公開されています。それらを読み解くと、「理解できるのに返せない」状態から抜け出した人が数多くいることが分かります。
その一人が、ホテルで働くKさんです。仕事で毎日、英語を聞き取っている方でした。
「以前、職場では海外のお客様を対応する時に、言っていることを理解できてもなんて返せば良いのかわからない状況が多かった」
聞き取れることと、返せることは、別々の能力です。そんなKさんでしたが、いまは1人でアメリカに行く予定を立てるまでに成長をしています。
この記事では、話せない原因を2つの段階に分けて整理します。そのうえで、段階ごとの対策を受講者の言葉から紹介します。自分がどちらの段階でつまずいているのかと、今夜から何をやるかが決まる状態を目指します。
聞き取れるのに話せないのは、あなただけではない
「考えているうちに、会話が次に進んでしまう」。聞き取れるのに話せない人なら、覚えのある感覚だと思います。まず、この実感を数字で見てみましょう。
株式会社イーオンが2025年7月に実施した「英会話」に関する意識調査(全国16〜69歳の男女1,000名対象)では、会話中に「言いたいことを考えている間に会話が進む」と答えた人が86.1%にのぼりました。あわせて、「話す」練習をほとんどしていない人が61.6%です。
8割超が「考えている間に会話が進む」と感じていて、6割は声に出す練習を計画に入れていません。 日本の英語学習は読む・聞くのインプットに偏っていて、「考えたことを英語で出す」工程は、ほとんどの人が訓練していない状態です。話せないのは能力の問題ではなく、練習してこなかった工程がある、と考えることができます。
なぜ聞き取りだけが先にできるようになるのかも、この偏りで説明がつきます。学校の授業、TOEICの勉強、洋画や海外ドラマ、ポッドキャスト。日本で英語に触れる機会のほとんどは「受け取る」練習です。10年以上それを積み重ねてきたのですから、聞いて分かる力が育っているのは自然なことで、これまでの努力は確実に形になっています。一方で「自分の考えを英語で出す」練習は、日常のどこにも組み込まれていません。育てた力と、育てていない力があります。それだけのことです。
実際の声も、同じ場所を指しています。外資系の経営コンサルタントとして転職を控え、セブ島留学に参加した外資系コンサルタントの方は、学生時代は英語が得意教科で、TOEICの点数も悪くなかった人です。1回目の留学では「何とか話せるだろう」と思って臨んだのに、現地で「あまりに英語を話せない自分に愕然とした」と振り返っています。本人は後から、その理由をこう分析しました。
「相手の言っていることは理解できても自分の言いたいことが日本語で出てきてしまう」
聞いて分かる力は動いています。ただ、口から出てくる言葉だけが日本語のままでした。
WEBマーケベンチャーで人事を担当する高尾さんは、英語圏でのインターン経験まである人です。
「単語自体は知っていて文章は読めるのにいざ話そうとすると、とっさに言葉が出てこないといった状況がよくありました」
知識も、経験も、聞いて分かる力も揃っています。それでも「とっさ」の一点で止まる。2人が語っているのは同じことで、足りないのは知識でも理解でもなく、別の力だということです。
先に1つ、はっきりさせておきます。ここまで積んできたインプット学習は、無駄ではありません。独学でTOEIC845点を取った古庄さんのように、読める・聞ける・語彙があるという土台は、話す訓練を始めた時点で資産に変わります。聞き取れないところから始める人に比べて、有利な位置にいます。
では、その「別の力」とは何か。話せない中身を分けて見ていきます。
話せない原因は「組み立てる」と「口から出す」の2つに分かれる
「話す」は1つの動作に見えますが、実際には2つの工程でできています。
- 段階1:思考 — 言う内容を組み立てる。何を言うかを決め、言葉にする
- 段階2:音 — 組み立てた言葉を、音にして口から出す
聞き取りは「受け取る」だけの1工程です。話すのはこの2工程です。リスニングが先に伸びて、スピーキングが後になるのは、順序として自然なことといえます。問題は、2つの段階のどちらでつまずいているかによって、やるべき練習がまったく違うことです。
「組み立てる」でつまずく場合
ミライズのCBO(Chief Business Officer)である芦名は、スピーキングの解説動画で、自分の考えが言葉に組み立たないと人は話せないと指摘しています。試しに日本語で、「自分の仕事の面白さ」を1分間話せるか考えてみてください。すっと出ないなら、それは英語力の問題ではありません。先に紹介した外資系コンサルタントの方の「言いたいことが日本語で出てきてしまう」は、英語の手前で、考えを言葉に組み立てる工程が止まっている状態です。
会議の場面で言えば、こうなります。相手の提案は聞き取れた。賛成か反対か、どんな条件なら乗れるか。その判断と理由を言葉にする工程が動かないまま、「What do you think?」が来る。この状態で出てくるのは「...Yes, I think so.」だけです。英文法の知識をいくら足しても、ここは解決しません。先に組み立てる中身が要るからです。
「口から出す」でつまずく場合
もう1つの段階は、口の側です。頭の中に英文はできているのに、口に出す直前で止まる。高尾さんの「とっさに言葉が出てこない」の裏には、この段階の訓練不足があります。声に出す練習をしてこなかった口は、英語の音の動きを覚えていません。
こちらも場面で言えば、こうです。I think we should reschedule the meeting まで頭の中で組み上がっています。なのに最初の音を出す0.5秒で、「rescheduleの発音、合っているか」「通じなかったら気まずい」がよぎって、出てくるのは「Uh...」。結局、隣の同僚が先に話し出す。組み立ては済んでいるのに、出口で止まる。思考の段階とは、詰まる場所が違います。
さらに、発音に自信がないと「通じなかったらどうしよう」という心理のブレーキが重なります。ミライズが発音専門プログラムである『シャベリッシュ(旧ハツオン)』を提供する背景にも、人間の脳には発音できない音は聞こえにくいという特性があり、発音力が上がるとリスニング力も連鎖的に向上していく、という考え方があります。この特性は逆向きにも働きます。出す訓練をしていない音は、本番のとっさの場面では口から出てきません。
セルフ診断|自分はどちらでつまずいているか
自分の詰まりがどちらにあるのか、6つの質問で確かめてください。Yesが多くついた段階が、あなたの練習すべき場所です。
| 段階 | 質問 |
|---|---|
| 思考 | 日本語でも、意見を求められると組み立てるのに時間がかかる |
| 思考 | 英語の前に「何を言うか」自体が浮かんでいないことがある |
| 思考 | 言いたいことが日本語では浮かぶが、英語に直す段階で止まる |
| 音 | 頭の中に英文はできているのに、口に出す直前で止まる |
| 音 | 発音に自信がなく、通じなかった経験を引きずっている |
| 音 | 音読やシャドーイングなど、声を出す練習をほとんどしていない |
両方にYesがつく方も多いはずです。その場合も心配は要りません。2つの段階の対策は連続していて、思考→音の順で進めれば両方鍛えられます。まず思考の段階からです。
「組み立てる」の対策|何を言うかを先に決める
ここからは対策です。まず思考の段階、「何を言うか」が組み上がらない詰まりを、実際に抜け出した受講者の話から見ていきます。
実際に変わった人の話
セブ島留学とコーチングでTOEICを670点から805点に伸ばした佐藤さんが、トレーナーから受けた助言があります。
「逆に知らない単語はどんどん増やさなくていいから、知っている単語での色んな言い回しをできる様にしたほうが良い」
「単語を増やせ」の正反対です。この助言に従った結果、佐藤さんはこう語っています。
「知っている言葉だけで難しい内容も伝えられるようになり、話している自分もとても楽になりました」
冒頭のKさんの変化も同じ方向で、ちゃんとした文章でなくても、とりあえず自分の言葉で伝える、という意識への切り替えでした。完璧な文を目指すのをやめた時点から、言葉が出はじめています。
なぜ効くのか
聞き取れる人の語彙は、既に十分にあります。TOEICで言えば数千語を知っている人が、会話で使うのはそのごく一部です。詰まっているのは語彙不足ではなく、「正確で完全な文を組み立ててから話そう」とする進め方の側です。完全な文の組み立ては、頭に大きな負荷をかける作業です。会話のスピードの中でそれをやろうとすると、組み立てが終わる前に相手の話が次へ進みます。調査で86.1%の人が「言いたいことを考えている間に会話が進む」と答えたのは、この状態を指していると考えられます。「知っている言葉で言い換える」「文が不完全でも出す」に切り替えると、負荷が下がり、言葉が出はじめます。芦名が動画で勧める「母国語を喋る練習」も同じ考え方です。内容の組み立てを日本語で先に済ませておけば、本番の英語では「変換」だけに集中できます。
あなたがやるなら
3つの手順で、今夜から始められます。
- 次の会議・接客・雑談で聞かれそうなことを、日本語で3つ書き出す。まず「何を言うか」の在庫を作ります。書くのは箇条書きで十分で、「先週の進捗どう?」に対して「A案件は完了、B案件は来週ずれ込み」といった粒度です
- その3つを「中学英語で言うなら」に言い換える。辞書は引かないでください。「ずれ込み」が出てこなければ「B will be next week」で構いません。手持ちの言葉で言い換える練習が、思考の段階の訓練そのものです。ここで辞書を引くと、また「知らない単語を増やす」インプット学習に戻ってしまいます
- 1日1回、今日あったことを英語の独り言で30秒。文が壊れていても構いません。「出す」ことに口と頭を慣らします
よくある失敗も1つ書いておきます。この練習を「例文の暗記」に置き換えてしまうことです。他人の作った例文は、あなたの明日の会議には出てきません。素材は必ず「自分が実際に言いそうなこと」から作ってください。佐藤さんの変化もKさんの変化も、自分の言葉を素材にしたところから始まっています。
「知識はあるのに出ない」という状態については、TOEICは高いのに話せない人の記事で3つの壁として詳しく解説しています。ここでは先に進みます。言うことが組み立てられるようになっても、まだ口が止まる人がいます。それが2つ目の段階です。
「口から出す」の対策|声に出す回数を増やす
次はもう1つの段階、音です。組み立てた言葉が口から出てこない詰まりが、発音の訓練でどう変わったのか。時系列が残っている2人の話で確かめます。
実際に変わった人の話
化学業界でイギリスに赴任中のH.Tさんの変化は、順番がはっきり残っています。発音の訓練から始めて、まずオンライン英会話の先生に「発音綺麗になったね!」と言われました。次に「英会話をしている際に英語が口から出やすくなりました」。そして「英文を帰り読みせず、文頭から理解できるようになりました」。発音、発話、読解の順で変化が連鎖しています。
もう1人、ベンチャーキャピタル代表の林さんは、TEDトークのシャドーイングを音声自動入力にかけて、機械が正しく文字起こしできるかで自分の発話を測っていました。それまで「リズム」や「トーン」を意識したことがなかったという林さんが、音を意識した訓練に切り替えて、自分の声が正確に認識された瞬間のことをこう語っています。
「『俺の英語通じる!』と自信が持てた瞬間でしたね」
海外出張で「雰囲気とジェスチャーでなんとか切り抜けることで精一杯」だった人の、これが転換点でした。
なぜ効くのか
「口から出やすくなる」は比喩ではありません。声に出した回数の分だけ、口は英語の音の動きを覚えます。スポーツの素振りと同じで、頭で分かっていることと体が動くことは別です。黙読やリスニングをいくら積んでも、この段階は動きません。日本語と英語では、使う口や舌の動きそのものが違います。動かしたことのない筋肉の動きが、本番のとっさの場面でだけ出てくることはありません。
そしてもう1つ。発音への不安が消えると、「通じなかったらどうしよう」という心理のブレーキが同時に外れます。H.Tさんの変化の連鎖も、林さんの「通じる!」も、技術の変化が自信の変化につながった例です。音の段階の訓練は、口と心理の両方に同時に効きます。 2つの段階のうち、こちらを訓練の起点として勧める理由がここにあります。
すでに聞き取れる、つまりある程度は脳が音を認識できている状態なら、音の出し方のコツを少し整えて口の筋肉の動かし方を覚えるだけで、頭の中の英語が口から出やすくなります。リスニング力が先行している人ほど、発音を磨いたときの変化が早く出ることがあります。
あなたがやるなら
段階1で作った素材を、そのまま使います。
- 自分の想定問答3つを、声に出して10回読む。黙読は思考の練習にしかなりません。口を動かした回数だけが、この力を鍛えます。10回目には、目で追わなくても口が先に動く感覚が来るはずです。それが「口が覚えた」合図です
- 読んでいる自分の声を録音して聞く。最初は自分の声を聞くのがつらいはずですが、それ自体が「自分の音を客観的に聞けていなかった」証拠です。2週間分の録音が溜まると、変化が耳で確認できるようになります
- 週1回、自分の英語が「通じるか」を試す場を持つ。音声入力に向かって話すだけでも、通じる・通じないの判定は得られます。機械は忖度しないぶん、進み具合の判定としてはむしろ正確です
ただし、1つだけ正直に書いておきます。独学でここまでやっても、越えにくい一線があります。古庄さんは自分の声の録音チェックを続けた人ですが、こう語っています。
「自分の発音が本当に合っているのかが分からず、独学の限界を感じた」
自分の発音のズレは、自分の耳では聞こえにくいものです。脳が「知っている音」に補正してしまうからです。録音を何度聞き返しても、ズレている音は「合っている音」に聞こえてしまいます。録音の習慣は変化の確認には効きますが、ズレの特定には使いにくいところがあります。
2つの段階の対策が揃いました。では、実際に変わった人は、どんなふうに変わったのか。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約する「返せない」から「自分の言葉で伝える」へ変わった人たち
冒頭のKさんの話を、最後まで見てみましょう。「言っていることを理解できてもなんて返せば良いのかわからない状況が多かった」というKさんの現在地は、こうです。
「ちゃんとした文章でなくても、とりあえず自分の言葉で伝えようという意識に変化しています」
学習を続けるうちに、1人でアメリカに行く予定まで立てるようになりました。変わったのは「英語力」より先に「話すことへの構え」だった、という点が見どころです。完璧な返答を組み立てようとして固まっていた人が、「自分の言葉で伝える」に切り替えています。段階1の対策そのものです。
Kさんの職場を想像してみてください。ホテルのフロントでは、お客様の要望は待ってくれません。「考えている間に会話が進む」が毎日起きる現場です。その現場で「ちゃんとした文章でなくても伝える」に切り替えたことは、練習法の変更というより、話すことへの構えの変更でした。そしてこの構えは、この記事を読んだ直後から変えられます。
高尾さんも、「とっさに言葉が出てこない」状態から、レッスンを続けるうちに変わりました。本人はこう振り返っています。
レッスンを始めてから変わったこととして、日常生活の中でこれって英語でなんていうんだろうと考える機会が増えました。全然想定していなかったことなので自分でもびっくりしています笑
頭の中の英語が、生活の場面まで染み出し始めた変化です。
参考までに、外資系企業で働くパクさんは、聞き取りもままならない状態から始めた人です。
「単語でしか話せなかったのですが、以前に比べたら、今は文章で先生と会話ができるようになりました!」
聞き取れる土台がまだない人でも、同じ2段階の訓練で文章の会話に届いています。聞き取れる状態から始めるなら、なおさら早く届く可能性があります。
期間の目安も添えておきます。聞き取れる人は理解の土台が既にあるぶん、変化は早く来ることがあります。体験談では、発話の変化は2〜3ヶ月に集中していました。イギリス駐在のH.Tさんが「口から出やすくなった」と実感したのも2ヶ月の訓練のなかでのことです。林さんが「俺の英語通じる!」と自信を持てたのも、音の訓練を続けた末の変化でした。9人分の期間の実例は半年で英語を話せるようになった人の記録にまとめています。
もう1つ、3人に共通する点を挙げておきます。誰も「聞き取りの練習を増やして」変わったのではない、ということです。変わったのは全員、出す側でした。組み立てる練習と、口に出す練習を始めてから変化が起きています。聞き取れるのに話せない状態からの前進は、インプットを積み増しても起きにくいものです。既に持っている理解の土台の上に、2つの段階の訓練を載せたときに起きます。
最後に、2つの段階への初手を整理します。
まとめ|聞き取れる人は、話せるようになるまでの距離が短い
聞き取れるのに話せないのは、能力の問題ではなく、訓練の偏りでした。しかも聞き取れる人には、語彙・理解力・音の認識という土台が既にあります。ゼロから始める人に比べて、話せるようになるまでの距離は短いところにいます。
初手は、セルフ診断の結果ごとに分かれます。
- 思考の段階が弱いなら — 今夜、明日の想定問答を日本語で3つ書いてください。そして辞書を引かずに、中学英語に言い換える。完璧な文はいりません。「知っている言葉で伝える」が、この段階の訓練のすべてです
- 音の段階が弱いなら — その3つを声に出して10回読み、録音して聞いてください。口を動かした回数だけが、とっさの場面で口から出る言葉を作ります
- どちらか分からないなら — まず発音診断で音の現在地を測ってください。自分の音のズレは自分の耳では聞こえにくいので、そこだけは測ってもらうのが近道です
「聞き取れるけど話せない」は、劣等感を持つべき状態ではなく、順序として自然なことです。 聞いて分かる力が先に育っただけで、英語習得のかなり進んだ地点に立っています。8割超の学習者が同じ場所にいて、そこから先に進んだ人と留まる人を分けたのは、才能ではなく「出す練習を始めたかどうか」でした。
理解できても返せなかったKさんは、「とりあえず自分の言葉で伝えよう」に切り替えて、1人でアメリカに行くまでになりました。積み上げてきたインプットは、声に出し始めた日から資産に変わります。聞き取れるところまで来ているなら、残りの距離は、思っているより短いところにあります。
