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英語の質疑応答が苦手な方へ|完璧な回答を、辞めるところから始める

ビジネス英語

発表そのものは、原稿を作り練習すればそれなりに形になります。ところが本当に怖いのは、そのあとの質疑応答です。どんな質問が飛んでくるか分からない、聞き取れなかったらどうしよう、答えに詰まったら——発表の数日前から、質疑のことだけが頭に引っかかっている。そんな経験はないでしょうか。

「英語 質疑応答」と検索すると、聞き返しのフレーズ集やテクニック記事が並びます。役に立つ情報も多いのです。けれども、フレーズを何十個も覚えても、不安が消えないのはなぜか——本当に知りたいのは、フレーズの数ではなく、聞き取り・意図の確認・その場で答えることの、どこが足りないのか、ではないでしょうか。

では、英語で人前に立つ場面に不安を持つ人は、実際にどれくらいいるのでしょうか。株式会社ECCが、仕事のために英語力を養いたい20〜39歳の一般社員を対象に実施した「社会人の英語力に関する調査」(n=300、2026年2月20日〜3月2日)によると、62.0%が英語で会議や商談などの業務を行う際に不安や緊張を感じると回答しています。同じ調査の40〜65歳の管理職300名でも66.0%でした。英語を使う人全体ではなく、英語力を養いたい会社員を対象とした結果ですが、質疑応答を含む対面の英語業務に身構える人は、役職を問わず6割を超えているということです。

実際に、その不安と向き合った人がいます。ソフトウェアエンジニアの須田さんは、カンファレンス登壇を通じて気づきました。「とあるカンファレンスに出た際に、私以外、海外の方も含めて英語で発表されていて、もちろん質疑応答も英語で行われていました」。そこから学び直しを始め、手に入れたのはフレーズの数ではなく、頭の中で日本語に訳さずに話せる状態でした。同じく、公認会計士として会計監査の仕事をしていた大畠さんは「前職で外国人の方にインタビューする機会があったのですが、英語を聞き取れない、質問ができない自分がいました」と語ります。インタビューで質問する側でも、カンファレンスで答える側でも、飛んでくる英語は原稿どおりには決まりません。

須田さんさんも大畠さんも、ミライズ留学の受講者です。公式サイトには200件以上の体験談が本人の言葉のまま公開されており、発表や質疑の場に立った人の声も残っています。以下では、須田さんさんや大畠さんの言葉を手がかりに、質疑応答の不安を3つに分け、聞き返し・確認・持ち帰りのフレーズと、その場で答えるための練習方法を整理します。

質疑応答が怖い理由は3つに分けられる——英語力ではなく、その場で答える力の問題

質疑応答を前にしたとき、多くの人が感じるのは「英語力が足りない」という漠然とした不安です。けれども、英語力不足という一言では対策が決まらないのは、不安の中身が3つに分かれているからです。質問を聞き取る、質問の意図をつかむ、答えを組み立てる。どこで止まっているかが分かれば、練習する対象も決まります。

不安1. 質問が聞き取れない

質問の英語が聞き取れなかったら、どうしよう——そこから先へ進めなくなってしまう。

冒頭で紹介した大畠さんは、外国人へのインタビューで「英語を聞き取れない、質問ができない自分がいました」と語っています。聞き取れない不安は、質問に答える機会そのものを失わせます。

準備した発表パートは読む時間があるので、聞き間違いを防ぐことができます。ところが質疑応答では、質問は一度だけ。聞き取れなかったら「わかりません」と答えるしかなくなってしまう——一度きりしか聞けないという感覚が、事前の不安を大きくします。

ただし、聞き取りが完璧でなければ進めないというわけではありません。シャベリッシュを受講した井上さんは、英語だけで進む50分のレッスンをやり切った後の感覚を、「半分しか聞き取れなかったけどやりきったぞ」と逆にポジティブに捉えられた、と振り返っています。

多くの人は、聞き取りを「0か100か」で判定してしまいます。半分でもやりとりは始められます。「全部聞き取れなかったら失敗」という思い込みが、最初の不安を膨らませています。主要な単語だけ拾えれば、質問の全体像は見えてきます。

聞き取り完璧を目指さなくても、質疑応答を進める手段はあります。聞き取れない時点で、相手に「もう一度言ってもらえますか」と返す、あるいは、もう少しゆっくり話してほしいと頼む——聞き返せる、という事実だけで、最初の不安はかなり減ります。

冒頭で見た株式会社ECCの調査でも、英語での会議や商談に不安を感じる人は6割を超えていました。漠然と身構えるのではなく、自分の不安が3つのどこにあるのかを特定する価値があります。

不安2. 質問の意図がつかめない

聞き取れたとしても、次の問題が現れます。「何を聞かれているのか、本当の意図がわからない」という不安です。

質問の言葉が単語レベルでは理解できても、「なぜそれを聞かれているのか」「何を答えればいいのか」が、その場では判断できないことがあります。聞き取りとは別に、質問者が何を知りたいのかを推測し、自分の言葉で言い換えて確認する手順が必要です。学術的な内容や、業界用語を含む質問ほど、表面的な言葉だけでは背景にある問いが見えません。

電気メーカー営業の渡辺さんも、最初の段階では同じ壁にぶつかっていました。

最初英語がほぼできない状態で来ていて、先生が何を言っているのか全然分からず、レッスンを受けるのが辛い時も何回かあったんですけど

渡辺さんは、続けてこう語ります。「気持ちを切り替えてレッスンを受けるようにしました。積極的にレッスンを受けるようにしたら英語も面白くなってきて、マインドチェンジが不思議とできていました」。

渡辺さんの話で見ておきたいのは、「完璧に理解した上で返す」のではなく、「わからない状態を受け入れながら、それでも続ける」という心構えに変えたことです。意図がつかめないときは、相手の質問を自分の言葉で言い換えて「〜という意味ですか?」と確認するだけで十分です。確認を挟むと、相手は理解度を知れますし、答える側も時間を稼げます。

不安3. 答えをその場で組み立てられない

聞き取れて、質問の意図も分かった。でも、英語で答えが組み立たない。その数秒の沈黙が、怖い。

3つ目の不安は、フレーズを覚えるだけでは減りません。質疑応答では、質問を聞いたその場で、英語で考えて答えることが求められるからです。

準備した発表パートは、原稿を作り、何度も練習すれば、読めば大丈夫という形にできます。ところが質疑応答は、質問の内容も、聞き方も、事前には決められません。

想定問答を用意することはできます。「売上の根拠は?」と聞かれたら、こう答える——と決めておくことはできます。けれども実際に来た質問が、用意した想定とズレていたら? 答えの一部は使えるけれど、全部は使えない。用意していた文を思い出そうとして、沈黙が生まれます。

質疑応答に必要なのは、用意した答えを完璧に再現することではなく、その場で答えの骨組みを作り、言語化する力です。初めて聞く質問でも、「結論は何か」を先に決めて、理由を1つ添える——この型を、繰り返しの訓練で身につけることでしか越えられない不安です。

実録——カンファレンスの質疑が英語だった須田さんが、日本語に訳さずに話せるようになるまで

発表も質疑も英語という場に立つことになったエンジニアが、何を変えて、どこにたどり着いたのか。須田さんの2か月を、本人の言葉で追います。

出発点. 登壇も質疑も英語で行われるカンファレンス

須田さんは「新卒で今の会社に入社後、5年間ソフトウェアエンジニアとして働いてきました」と語る、開発の現場にいる人です。転機は、日々の開発業務ではなく、社外登壇の増加にありました。「最近、カンファレンスや勉強会などの、社外で発表する機会が多くなってきたんですね」。

冒頭でも触れたとおり、須田さんさんが目にしたカンファレンスでは、発表も質疑応答も英語で進んでいました。登壇の機会が増えるほど、質疑という、その場で答えるやりとりから逃げられなくなる——エンジニアに限らず、専門職が発表の場を持ち始めたときに直面する形です。準備した発表パートは原稿とスライドで固められますが、質疑はその場のやりとりです。登壇回数が増えるほど、その場で答える英語が求められる回数も増えます。須田さんはここで英語の学び直しを決めています。危機感の源が「いまの業務で困っている」ではなく「これから増える発表の場」にある点も、記録の特徴です。

学習の進め方. 実務の素材を持ち込み、言い回しまで直す

須田さんの学び方で特徴的なのは、教材を汎用のものにしなかった点です。「例えば、ITシステムの仕様書を英語で書くといった内容ですね。こういったことをお願いすると、次の日のレッスンではもう反映されていました」。さらに、「あとは、英語でのプレゼンテーション資料の作り方を学びたいと言うと、これも次の日にはそのレッスンがスタートしていました」。

仕様書もプレゼン資料も、須田さんの実務そのものです。発表と質疑で使う英語を、仕様書やスライドの素材で練習する。質問されそうな内容を、自分の言葉で説明する練習が、そのまま想定問答の訓練になっています。仕様書を英語で書けるということは、どの角度から聞かれても英語で説明できる語彙と言い回しを持っている、ということでもあります。質疑応答の準備は、想定問答集を作ることだけではなく、自分の仕事を英語で説明できる状態を作ることでもあります。

もう1つの特徴は、表現の直され方です。「以前通った英会話学校では、会話のテンポを重視されることが多くて、文法が少し間違っていても伝わることを重視されていたのですが、ミライズ留学の先生は必ず直してくれました。伝われば良いだけだと、実際使われない表現や、下手したら失礼にあたる言い回しをしてしまっていることもあるのでとても助かりました」。

質疑応答は、聞き手との双方向のやりとりです。「伝わればいい」で止まらず、失礼にならない言い方・実際に使われている言い回しまで直してもらう——この水準の調整は、質問者との関係がその場で決まる質疑でこそ効いてきます。答えの中身が正確でも、言い方がぶっきらぼうに聞こえれば、その後のやりとりは固くなります

変化. 日本語に訳す作業がなくなった

そして、須田さん自身が「一番の収穫」と呼ぶ変化が起きます。

一番感じているのが、どうしても最初のうちは、日本語から英語への変換を頭の中でしていたのですが、2週目が終わったあたりからそれがパタっとなくなったことです。たぶん強制的に、長い時間英語を聞いて話していたことで、脳が切り替わったのかなと思っています(笑)。これが一番の収穫ですね。

質疑応答で一番苦しいのは、質問を日本語に訳し、日本語で答えを考え、英語に訳し直す——この往復に時間がかかることです。須田さんに起きたのは、往復自体が消えるという変化でした。速く訳せるようになったのではなく、訳さなくなった。その場で答えられる状態は、フレーズの暗記ではなく、日本語に訳す作業がなくなった先にあります。

須田さん自身が、変化の要因を「量」と振り返っています。長い時間、英語で聞いて話し続ける環境にいたことで、日本語に訳さなくなった。特別な才能ではなく、練習の量から生まれた変化です。

あなたが同じ方向を目指すなら、手順は3つです。

  1. 自分の発表資料・仕様書・レポートを英語練習の素材にすること。質疑で聞かれるのは自分の仕事の中身であり、練習の素材もそこから取るのが最短です。
  2. 「伝わればいい」で止めず、失礼にならない言い方まで直してくれる相手を持つこと。
  3. 発表が決まったら、プレゼン本番の練習と同じだけの時間を、質疑のやりとりの練習に割くことです。

プレゼン本番は、原稿があれば話す内容を決められます。質疑は、来る質問を全部は読めないので、練習の量でしか対応できません。特別な時間を新しく作る必要はありません。発表準備で原稿を音読する時間の一部を、各スライドに「どんな質問が来そうか」を自分で挙げて英語で答えてみる時間に置き換えるだけでも、質疑の練習になります。

まとまった時間が取れなくても、その場で話す回数は日常の中で増やせます。

その場で答える力は、やった回数で作る——討論・司会・結論先行の3つ

質疑応答に強くなった人は、台本のない英語で話す場を意図的に増やしていました。

やり方1. 台本なしで話す場を毎週作る

質疑応答の本番は年に数回です。でも、台本なしで答えるやりとり自体は、毎週練習できます。

大学で研究職を務めてきた山口さんは、「サバイバルイングリッシュは、即興性という面で、とても実用的でしたので印象に残っています」と語ります。決まった正解のない場面でその場の英語で切り抜ける練習——台本のないやりとりそのものを、練習の種目として扱っているということです。

同じく台湾出身で監査官(会計検査官)として働く受講者の方も、voice記事の本人の言葉で次のように振り返っています。「レッスンがリスニング、スピーキング、リーディング、ライティング、や他の科目だったとしても、授業中に会話や討論をする機会がたくさんありました。実践的な練習や即興な会話をたくさんのクラスで行う」。科目に関わらず、その場で思考して話す経験が蓄積されたということです。

その場で答える力は、質問を予測して答えを暗記する練習では作れません。暗記した答えは、想定した質問が来たときにしか使えないからです。台本のない会話や討論を何度もやっておくと、想定外の質問が来ても何か言える状態になります。発表の予定がない週でも、この練習は続けられます。

あなたがやるなら、

  1. 週1回、台本なしで英語で話す場を固定する(オンライン英会話のフリートークでも、同僚との英語ランチでも形は問いません)
  2. 自分の業務テーマで「賛成/反対を言い合う」練習を入れる
  3. 想定問答は「答えを暗記する」のではなく「その場で組み立てる練習の素材」として使う

②の題材は大きなテーマである必要はありません。自分の業務で最近決めたこと・迷っていることをテーマに、あえて反対側の立場から話してみる。質疑で反対意見や疑問をぶつけられたときの動きと同じ構造です。

やり方2. 質問を受ける側だけでなく、進行する側もやってみる

質問を受ける不安は、質問を捌く側・振る側を経験すると小さくなります。受ける側にいる間は次に何を聞かれるかだけを気にしますが、進行する側になると、質疑が「質問→確認→応答→次へ」の繰り返しでしかないことが見えてきます。

FP事務所を経営していたT・Hさんはこう述べます。

グループレッスンやプレゼンテーションクラスの司会をフィリピン人の先生と一緒にするなど、人前で英語を話す機会を持てたことで、英語に対してすごく自信がつきました

司会という立場から、質問を促す→発言者につなぐ→次へ進める、の流れを主体的に経験したわけです。

漫画家・ライターの白戸さんも「人生初の英語でのプレゼンをする機会があり、自分の英語に少し自信が持てるようになりました」と話します。発表を自分の手で進めた経験は、規模の大小にかかわらず、その後の場面への自信につながっています。初めての発表がうまくいくかどうかより、場に立った回数が効いてきます。

質問を受ける側の視点だけでは見えないことがあります。質問を促す側・進行を握る側を経験すると、質疑の流れ(質問→意図の確認→応答→次へ)が分かります。流れが分かっていれば、質問が来ても、いま自分がどこにいるのかを見失いません。

あなたがやるなら、

  1. 社内の英語勉強会で司会・進行役を先に引き受ける
  2. 日本語の会議でも「質問を言い換えて確認してから答える」動作を癖にする
  3. 発表の機会があれば、小さい場から回数を積む

②は今日の会議から始められます。日本語であっても、質問を言い換えて確認する癖がついている人は、英語の質疑でも同じ動きが出ます。聞き取り・確認・組み立ての手順は、日本語でも英語でも同じです。

決め方3. 結論から先に言う型で組み立てる

その場で答えられなくなる原因のひとつは、日本語の順序のまま英語の文を組み立てようとすることです。

アパレルの経営企画で働く長倉さんは「日本語の場合は理由が先に来て、結論が後に来るのに対して、英語の場合は結論が先に来て、その理由を後から述べるので、物事を単的に素早く伝えられますよね。この思考方法は日本に戻っても継続しようと思いますし、他の社会人の方にもおすすめです」と語ります。

日本語で報告するとき、私たちは背景から理由、結論へと順に話します。一方、英語のやりとりでは結論を先に置くのが標準です。結論先行の型が定着していないと、質問が来たとき、背景から説明し始めて、言いたい結論にたどり着く前に話が迷子になります。質疑応答は1つの答えに使える時間が短いため、話の順序の差がそのまま「答えられた」「答えられなかった」の差になります。

結論→理由の型に固定すれば、短くても答えとして成立します。しかも、結論を先に言ってしまえば、理由の説明の途中で言葉に詰まっても、答えの核はすでに相手へ届いています。質疑応答では、完全な説明より、核が先に届くことのほうが大切です。足りない部分があれば、相手がまた質問してくれます。やりとりを1往復で終わらせようとしないことも、その場の負担を下げる考え方です。

あなたがやるなら、

  1. 答えは「Yes/No+結論1文」から始める練習をする
  2. 理由は1つでいい(3つ言おうとしない)
  3. 日本語の報告でも結論先行で話す癖をつける

③は、次の社内報告で「結論を最初に1文」置くだけで始められます。日本語でその順序が身につくと、英語の質疑でも Yes/No+結論1文が先に出やすくなります。

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「質疑が怖い」から「やりとりができる」へ——記録と現在の進捗

聞き取る・意図をつかむ・組み立てる。この3つは、どこから始めても、1つずつ練習すれば質疑の場の手応えを変えていきます。最後に、実際に訓練を続けてきた人たちがいまどこにいるのかを、等身大の言葉で並べます。

「できない」の中身が変わった人たち

冒頭でご紹介した公認会計士の受講者は、外国人へのインタビューで「英語を聞き取れない、質問ができない自分がいました」という状態から学び直しを始めた人です。集中して学んだ後の変化を、こう振り返っています。

今回のセブ島留学終えて英語での日常会話はもちろん、ビジネス英語に関しても簡単な事であれば伝えることができるようになりました

「簡単な事であれば」という限定つきの言い方に、この話の信頼性があります。完璧になったのではなく、質問し、答えられる範囲が実際に広がった——その等身大の前進です。

金融機関で働く藤野さんの言葉は、漠然とした不安が具体的な弱点に変わる瞬間を写しています。

英語の苦手なポイントがはっきりしました。中でもボキャブラリー不足がよく分かり、弱点克服クラスで柔軟に対応していただき良かったです

漠然と「英語が苦手」と感じている間は、訓練の方向が決まりません。自分の穴が語彙なのか、聞き取りなのか、組み立てなのか——分かった時点で、質疑応答への対策も具体的になります。上のセルフ診断が目指しているのも、同じ状態です。

Web制作会社を経営する井上さんは、音の聞き分けから変えていった人です。「母音、子音の仕組みを今回ハツオンを受講して知り、発音を聞く上での基盤が自分の中にできました」と語り、「自分がわかる単語やフレーズはクリアに聞こえてくるようになりました」と続けています。第1章で見たとおり、井上さんは「半分しか聞き取れなかったけどやりきったぞ」から始めた人です。同じ人が、聞こえる範囲の広がりを記録している——質疑の最初のステップである「質問を聞き取る」プロセスは、こうして楽になっていきます。聞き取りに使う力が減れば、意図の理解と答えの組み立てに回せます。

いまも進行形

電気メーカー営業の渡辺さんの場合は、切り替えが転機でした。英語がほぼできない状態から始めて、先生の言うことが全然分からずレッスンが辛い時期を経験しながら、周りの受講者に影響を受けて姿勢を変え、「積極的にレッスンを受けるようにしたら英語も面白くなってきて、マインドチェンジが不思議とできていました」と語っています。「全然分からない」場面に耐えられるようになるのは、特別な人の才能ではなく、切り替えの経験から作られていくものだと分かります。質疑応答の訓練は、必ずしも英語の知識から始まるとは限らない、ということでもあります。

そして須田さんは、第3章で見たとおり、頭の中で日本語に訳さずに話せるところまでたどり着きました。カンファレンスの質疑が英語だという危機感から始めた学び直しが、その場で答えられる状態の手前まで進んでいます。4人の出発点はばらばらです。聞き取れなかった人、語彙の穴が見えていなかった人、発音から入った人、ほぼゼロから始めた人。それでも共通しているのは、漠然とした「英語が不安」を、自分が止まっている場所の言葉——聞き取り、語彙、音、切り替え——に置き換えた時点から前進が始まっている点です。

誰も「どんな質問にも完璧に答えられる」とは言っていません。全員が、聞き取り・確認・組み立てのどこかを1つずつ訓練して、質疑の場を「怖い場」から「やりとりの場」に変えつつあります。出発点は、例外なく「自分はどこで止まっているのか」を知ることでした。次の発表を控えている方は、プレゼン本番の練習に入る前に、上のセルフ診断で自分の止まっている場所を1つ選んでみてください。

まとめ|質疑応答は、3つのフレーズで最悪を防ぎ、話した回数で越える

質疑応答への不安は、3段階に分けて考えられます。①質問が聞き取れない ②意図がつかめない ③英語で答えを組み立てられない。

①では Could you say that again?、②では If I understand correctly...、③では Let me get back to you on that.——3つのフレーズで、沈黙・誤答・食い違いは防げます。

ただし、フレーズを増やし続けることが上達ではありません。③を越えるには、週1回の台本なし英語、司会・進行役の経験、Yes/No+結論1文から始める型——3つの練習が必要です。

須田さん、大畠さん、藤野さん、井上さん、渡辺さん——いずれもフレーズの暗記ではなく、何度も話す中で応答の型を身につけていきました。時間はかかりますが、対応できる質問の幅は確実に広がります。

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