ネイティブの発音は5つの要素でできている|自分に欠けているのはどれか
同僚が外国の方と楽しそうに話しているのを横で見ていた。自分も言えることはあるのに、口を開くと日本語の音のままで、相手が一瞬止まる。それが分かるから、なおさら開かない。——そんな経験はないでしょうか。
このとき、たいていこう思っています。「発音はセンスだ。いまから真似しても、ネイティブみたいにはならない」と。
半分は合っています。ネイティブそっくりの発音は、大人になってから目指すものではありません。ただ、もう半分は違います。「ネイティブっぽく聞こえる」は1つの才能ではなく、5つの要素の集合です。音そのもの、つづりと音の対応、アクセント、音の変化、イントネーション。この5つのどれが欠けているかで、聞こえ方が決まります。
そして、全部を一度に直す必要はありません。欠けている1つを見つけて、そこだけ直すと、聞こえ方が変わります。
この記事では、日本語と英語で何が違うのかを押さえたうえで、自分に欠けている要素を場面から判定できるようにします。要素ごとの直し方は、それぞれ専用の記事があります。書いているのは、英語コーチングスクール・ミライズです。発音を専門に教えているシャベリッシュで、実際に教えている内容をもとにしています。
日本語と英語は、音の数・抑揚・つながりの3点で違う
「ネイティブっぽくない」と感じる原因を分解すると、日本語と英語の違いに行き着きます。違いは3つあります。
違い1. 音の数が、母音で3倍、子音で2倍近く違う
日本語の母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5つ、子音は14個です。英語には母音が16種類、子音が24個あります。
英語にあって日本語にない音は、日本語の近い音に寄せて出すことになります。寄せた時点で、英語の側では別の音です。音の数の差が、そのまま「日本語の音で英語を話している」状態を作ります。
違い2. 日本語は平坦、英語は抑揚が大きい
日本語は、比較的抑揚の少ない言語です。全体として平らな調子で話されます。
英語は逆で、文法によって語尾の上げ下げが決まっていたり、感情を抑揚で表したりします。日本語の感覚のまま話すと、抑揚の無い英語になり、これも「ネイティブっぽくない」と感じる原因になります。
違い3. 日本語は書かれたとおり、英語はつながって脱落する
日本語は、文字で書かれたとおりに発音されます。音がつながったり、消えたりすることはほとんどありません。
英語では、単語と単語がつながる、弱い音が落ちる、が頻繁に起きます。`I like it` を「アイ・ライク・イット」と区切って言うと通じません。`like` の語尾と `it` の語頭がつながって「アイライキット」に近い音になります。 日本語にはこの現象が無いので、知らないまま話すと区切った英語になります。
ネイティブっぽく聞こえない原因は、5つのどこにあるか
3つの違いを、実際に直せる単位に分けると5つになります。自分がどこで引っかかっているかは、場面で判定できます。
| 要素 | こういう場面があれば、ここ | 起きていること |
|---|---|---|
| 音そのもの | `fan` と `fun` が同じに聞こえる。`L` と `R` を指摘される | 日本語の5音に寄せている |
| つづりと音の対応 | 初めて見る単語を、カタカナのまま読んでいる | 文字から音を作る規則を持っていない |
| アクセント | 単語は合っているのに聞き返される | 強く読む位置がずれている |
| 音の変化 | 単語は全部知っているのに、会話が聞き取れない | つながりと脱落を知らない |
| イントネーション | 質問したのに答えが返ってこない。平らに聞こえると言われる | 語尾の上げ下げが型と違う |
1つの場面に、1つの要素が対応しています。 「発音が悪い」と一括りにしていたものを、この表で1行に絞ると、直す場所が決まります。
多くの方は、複数に当てはまります。それでも最初に手をつけるのは1つです。理由はあとでお伝えします。
ネイティブっぽい状態は、最後に着くものではなく最初に作るもの
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
「ネイティブっぽく話せる」を、学習の到達点だと考えている方が多いと思います。単語と文法を積み、話せるようになって、最後に発音を整える、という順番です。
無料カウンセリングでは、逆の順番が説明されています。日本人が英語を話している状態から、少しネイティブっぽく話せている状態を、最初に作る。 そうすると、自分も英語ができるようになるのだという実感が先に立ち、そこから学習が進みやすくなる、という考え方です。
理由はもうひとつあります。カウンセリングで多くの方が口にするのが、日本人の前で英語を話すのが恥ずかしい、という感覚です。なぜかと聞くと、ネイティブっぽくないから、と答えます。話す場数を踏まないと上達しないのに、音が原因で場数を踏めない。音を先に整えると、この足止めが外れます。
音の学習には終わりがある
もうひとつ、音を先に置く理由があります。音はルールなので、終わりがあります。
語彙や表現は、増やしても増やしても終わりが見えません。音は違います。母音16、子音24、つながりの規則、語尾の型。一度覚えれば、同じことを学び直す必要がありません。 終わりのあるものを先に済ませて、そのあとの時間を話す練習に使う、という順番になります。
シャベリッシュの2ヶ月のプログラムは、この順番で組まれています。最初に発音診断テスト(自分がどの音を出せていないかを講師が聞き取って特定するテスト)で欠けている音を洗い出し、講師が音を出して見せ、受講者が同じ形をなぞる形で音を作ります。そのあとに、頭の中の文をすぐ口に出す練習、会議や商談を想定した場面練習に進みます。
教材は、ミライズの社会人向け留学サービス「ミライズ留学」が延べ1万人に行ってきた発音レッスンから作られています。
「ネイティブのように」から始めた人たち
ネイティブっぽさを入口にした方の言葉が残っています。以下の3人は、ミライズで英語を学んだ方々です。引用は公開されている体験談の本文からそのまま取っています。
獣医師の中村さんは、始めた理由をこう書いています。
「英語をネイティブのようにカッコよく喋りたい」という理想像が自分の中にあって、それを叶えるために必要な要素が発音だったからです。
入口は「カッコよく喋りたい」でした。そして受講後には、別のことが起きています。
自分がネイティブのように発音できるようになると、ネイティブ英語が聞き取れるようになり、英語の発音を正しく理解することによるメリットを実感しました。
出せるようになった音は、聞き取れる音になります。 話すための練習が、聞く側にそのまま返ってきた形です。
パーソナルトレーナーの三井さんは、目標の置き方をこう書いています。
ネイティブレベルまででなくとも、日常会話ができるくらいにまで英語力を伸ばしていきたいなと。
ネイティブレベルは目標ではない、と最初から置いています。それでも入口は発音でした。ネイティブそっくりを目指すのと、ネイティブっぽく聞こえる要素を1つ入れるのは、別のことです。
定年退職後にまったくの初心者から始めた仮屋さんは、目標を会話の側に置いています。
最終目標はネイティブのナチュラルな会話速度で内容を問題なく聞き取れて、そしてしっかりと返答をするといった会話のキャッチボールがスムーズにできるようになることなので
聞き取る・返す。目標はここで、発音はそのための要素です。
音そのものと、つづりと音の対応
5つの要素のうち、前半2つです。どちらも「単語単位」で起きます。
要素1. 音そのもの. 母音と子音が日本語の音になっている
`fan` と `fun` が同じに聞こえる、`L` と `R` の区別を指摘される、という場面がここです。日本語の5つの母音・14の子音に、英語の音を寄せて出しています。
見分け方は、入れ替えると意味が変わる単語のペアを続けて言うことです。口の形が2回とも同じなら、区別できていません。
日本語話者に出やすい癖と、その外し方は日本人の英語発音|通じない原因は日本語の3つの癖にあるで扱っています。ここでは「ネイティブそっくりを目指すのではない」という前提も、はっきり書かれています。
要素2. つづりと音の対応. 文字から音を作る規則を持っていない
初めて見る単語を、カタカナに置き換えて読んでいる場面がここです。`schedule` を「スケジュール」と覚えている状態で、辞書を引かずに新しい単語を音にできません。
対応の規則は2つの道具で入ります。発音記号(辞書に載っている記号で音を確認する)と、フォニックス(つづりから音を組み立てる規則)です。記号については英語の発音記号|読み方の規則と、覚えるだけでは変わらない理由でお伝えしています。フォニックスは、母音と子音の1文字1音の対応から入ります。`cat` の `a`、`pen` の `e`、`sit` の `i`。この5つの短母音だけでも、初めて見る短い単語を辞書なしで音にできるようになります。
アクセント、音の変化、イントネーション
後半3つです。単語を並べて文にしたときに起きます。
要素3. アクセント. 強く読む位置がずれている
単語は合っているのに聞き返される、という場面がここです。`object` は最初を強く読めば「物体」、後ろを強く読めば「反対する」になります。位置がずれると、別の単語として聞こえます。
アクセントは暗記ではなく、音節を数えて位置を決めるものです。決め方は英語のアクセント|音節を数えれば位置は決まるでお伝えしています。
要素4. 音の変化. つながりと脱落を知らない
単語は全部知っているのに、会話になると聞き取れない、という場面がここです。`want to` が `wanna` に、`give her` の `h` が落ちて `give` にくっつく。文字どおりには発音されていないので、知らないと拾えません。
変化が起きる場所は4つに決まっています。英語の音の変化とは|聞き取れなくなる4つの場所と直し方で、場所ごとに扱っています。
要素5. イントネーション. 語尾の上げ下げが型と違う
質問したのに答えが返ってこない、平らに聞こえると言われる、という場面がここです。英語では、疑問文の種類によって語尾を上げるか下げるかが決まっています。日本語の感覚で上げ下げすると、質問が質問に聞こえません。
語尾の型は5つありますが、最初に押さえるのは2つで足ります。`Do you〜?` `Is it〜?` のように yes / no で答える質問は語尾を上げる。`What` `Where` `Why` で始まる質問は語尾を下げる。 この2つを分けるだけで、質問が質問として届きます。
なぜ最初は1つに絞るのか
5つ全部に当てはまる方も、最初は1つです。理由は、要素ごとに練習の単位が違うからです。音そのものは口の形の練習、音の変化は聞き取りの練習、イントネーションは文単位の練習。同時にやると、どれが効いたか分からなくなります。
1つ直して、録音して、変化を確かめる。変わったことが分かって初めて、次の要素に移れます。
順番に迷ったら、練習の設計そのものは英語の発音トレーニングで変わる人・変わらない人|反復練習だけでは足りない理由を参考にしてください。
「知っている英語」を、話せる英語に。シャベリッシュの無料カウンセリングでは、スピーキングの現在地診断と、期日から逆算した学習プランをお持ち帰りいただけます。無料カウンセリングを予約する今日、欠けている要素を1つ決める
5つ全部を確かめる必要はありません。表の中で、いちばん心当たりのある1行を選びます。
- 表の5行のうち、1行を選ぶ … 複数当てはまっても、いちばん頻繁に起きている場面を選ぶ
- その要素の項目だけを読み直す … リンクのある要素は専用記事を1本だけ読む。5本全部を読まない。1本で足ります
- 仕事で毎日使う単語か文を1つ、録音する … 読んだ記事の見分け方で、自分の音を確かめる
どれも15分で終わります。録音して変化が無ければ、選んだ行が違っていたということなので、次の行に移ります。
まとめ|ネイティブっぽさは才能ではなく、欠けている要素の数で決まる
ネイティブのような発音は、1つの才能ではありません。音そのもの、つづりと音の対応、アクセント、音の変化、イントネーション、の5つの要素の集合です。日本語と英語は、音の数・抑揚・つながりの3点で違うので、日本語の感覚のまま話すと、5つのどこかが必ず欠けます。
直すのは、欠けている1つだけで構いません。ネイティブそっくりを目指すのではなく、ネイティブっぽく聞こえる要素を1つ入れる。 それだけで、相手の反応が変わります。
そして、音は最後に整えるものではありません。最初に作ると、話す場数を踏む足止めが外れます。 音には終わりがあるので、先に済ませるほうが、あとの時間を話す練習に使えます。
